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中小オフィスビルでのZEB普及に挑む、ダイキン工業株式会社の省エネ大賞受賞策

法人の電力ニュース

中小規模のビルにも適用できる普及型のZEB。ダイキンが手掛けるこの施策の詳細を解説。


パリ協定(2015年12月締結)で定められたCO2排出量の削減に向けて、大きな役割が期待される建築物の省エネ。

中でも注目される技術が、オフィスビルZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化です。

建物で消費するエネルギーの省エネ(へらす)と創エネ(つくる)を組み合わせることで、一次エネルギー(年間)の収支をゼロに抑えるZEB。

これを実現できれば、1つの建物の中でエネルギーを自給自足できることになります。

ZEBを後押しする政府は、2030年までに新築建築物の平均でZEB化を達成する目標を掲げています。

ただダイキン工業株式会社によると、ZEBによる省エネ効果を大きくするためには、新築だけではなく既築のビル、特に中小規模ビルでのZEB化も必須だといいます。

「中小規模ビルは件数ベースで全体の95%、面積ベースで60%に上ります。ここの省エネポテンシャルは大きいです」。

そう語るのはダイキン工業株式会社の鈴木智博さん(東京支社 空調営業本部 テクニカルエンジニアリング部)。

ただ中小ビルのZEB化には課題も多いといいます。

ダイキン工業 鈴木智博氏

大規模ビルと違ってエネルギー管理者や常駐管理者がいないことが大半なため、省エネ施策の継続が難しいことや、バブル期に更新された古い物件、つまりZEB化の難易度がより高い建物が多数あるといった点が課題となります。

すでに新築の大規模ビルで「Nearly ZEB」を達成しているダイキン工業株式会社は、これまでに得た技術を中小ビルに応用してZEBを普及させる考えです。

「私たちが目指すのは、お金をかけずに実現できる“普及型ZEB”。汎用技術を使いながら、シンプルなシステム構成と、管理者不在でエネルギー管理できることを目指しました」(鈴木さん)。

今回実施された普及型ZEB(ZEB ready)の対象になったのは、福岡県で約20年前に建てられた中小規模の事務所ビル(ダイキン工業福岡ビル)です。


ダイキン工業株式会社福岡ビル

空調と照明の更新に加え、BEMS(ビルエネルギー管理システム)の導入によって、一次エネルギー消費量を基準値から55%の削減を目標にしたといいます。

鈴木さんが「省エネ診断・技術事例発表会」(一般財団法人省エネルギーセンター主催)で発表した内容をお伝えします。

2019年の「省エネ大賞」事例部門(資源エネルギー庁長官賞)を受賞した施策です。

ビル更新前後の比較

空調対策を中心とした普及型ZEB

今回の普及型ZEBは、オフィスでのエネルギー消費量の多くを占める空調に照準を絞って実施しました。

手掛けた施策は次の3つです。

  1. 温度と湿度を別々に制御するシステムの導入
  2. 空調と換気、照明の一括制御
  3. 遠隔監視システムによる空調の最適容量の選定

1.温度と湿度を別々に制御するシステムの導入

この施策では、温度と湿度それぞれの制御に特化した高効率設備を設置することで、省エネと快適性の両立を目的としたシステムを導入しました(潜顕分離空調システム)。

同システムは、温度を管理する業務用マルチエアコン「VRV QX」や、湿度を管理する調湿外機処理機「DESICA」などで構成されています。

調湿外機処理機が湿度コントロールに特化する一方で、業務用マルチエアコンが必要能力に応じて蒸発温度を変化させることで、低負荷域でのエネルギー効率を上げました。

2.空気と換気、照明の一括制御

さらに一つのコントローラーで空調と換気に加えて、照明も一括制御できるシステムも採用しました。

「一般的な事務所のエネルギー消費量のうち、7割以上が空調と照明が占める。これらをうまく削減することが重要です」(鈴木さん)。

同システムによって、管理者不在の中小規模ビルでも機器のスケジュール管理や消し忘れ防止、余熱、予冷運転といったきめ細かい管理ができるようになったといいます。

また国際規格のDALI制御によって、照明の照度を一灯ずつ管理することも可能になりました。

3.遠隔監視システムによる空調の最適容量の選定

空調によるエネルギー消費も最適化させました。

「LEDの導入やPCの省エネなどによって、設計当初の15年前と比べて発熱量は削減されています。それにもかかわらず空調システムの容量は変わっていなかったため非効率な運転でした。そこを最適化した」(鈴木さん)。

ビルが建てられた当時の空調は、1平方メートルあたり250Wを念頭に設計されていたといいます。

ただ今回の施策にあたって空調の負荷を確認したところ、外気温度が35~40度ほどまで上がったとしても、1平方メートルあたり100Wほどのエネルギーしか使われていないことが分かったそうです。

そこでビルの更新後は、事務所系統の空調を40%、会議室系統は20%ほど削減して調整しました。

その他の施策と運用改善

また内窓や太陽光発電システム(20.8kW)の設置に加え、「ZEBモニター」と呼ばれるエネルギー見える化システムを導入。さらに「クールスポット」と呼ばれる送風機をエレベーターホールに取り付けました。

「クールスポットをエレベーターホールの入り口につけることで、外回りから帰ってきた従業員がフロアに上がる前に涼むことができます。そのためフロアの設定温度を緩和しやすくなりました」(鈴木さん)。

さらに新たな設備の導入に終わらず、運用時の改善も重視しています。

省エネルギーセンターによる無料診断も活用しながら、運用フェーズでのムダを省いていったといいます。以下の運用改善によって、年間で約10%の省エネにつながったそうです。

目標上回るエネルギー削減を達成

こうした一連の施策から2年後には、一次エネルギー消費量を基準値に比べて67%削減することに成功(太陽光発電含む)。当初の削減目標だった55%を上回りました。

下のグラフは、削減した一次エネルギー消費量の内訳です。基準値のうち、空調と照明が大部分を占めています。

施策後の実績値では、空調と照明ともに半分以下にまで削減できていることが分かります。

さらに同じ2年間の間に電気代も40%削減できました。最大デマンド値が156kWから86kWに低減できたため基本料金を削減できたほか、電気使用量も大幅に減らすことができたといいます。

室内環境にも配慮し、快適性との両立も図ったといいます。鈴木さんによると、更新後の室内環境は、夏が設定温度26度、湿度50%ほど、冬が設定温度23度、湿度40%ほどでの運用になったそうです。

「さほど無理はせず快適に仕事ができる環境なのではないか」(鈴木さん)。

こうした事例で得たノウハウを踏まえ、子会社のダイキンエアテクノ株式会社では既存の建築物を対象にしたZEB化(Zeb Ready)ソリューションを提供しています。

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この記事を書いた人

エネチェンジ編集部

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エネチェンジ内のメディア「でんきと暮らしの知恵袋」の記事を執筆しています。電気・ガスに関する記事のほか、節約術など生活に役立つ情報も配信しています。