売電から蓄電へ 卒FIT時代で注目される「家庭用蓄電池」最新事情
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FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)による電力買い取り期間終了、いわゆる「卒FIT」が始まる2019年11月をにらんだ動きが加速しています。
卒FIT後の余剰電力の受け皿として有力視されているのが家庭用蓄電池。電力会社による買取価格が大幅に下がり、自家発電・自家消費のメリットが高くなる構図のなか、需要増が期待される家庭用蓄電池に注目が集まっています。
いよいよ始まる「卒FIT」時代
FIT制度は2009年に太陽光発電を対象に始まり、2012年からは現行の「再生可能エネルギー全般を全国一律の固定価格で買い取る」という制度がスタートしました。
電力自由化・再エネ時代を大きく後押ししたFIT制度ですが、一方で固定価格買取で発生した費用は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」として電気代に上乗せされています。賦課金の国民負担額は2018年度で2.4兆円と莫大な金額になったことから、2019年6月には経済産業省が制度終了に向けた検討を開始しました。
FIT制度による固定価格での買い取り期間は10年間で、2019年度末には約53万件、2023年末には累計165万件もの電力供給者が「卒FIT」を迎えるとみられています。
FIT制度終了後の各電力会社による買取価格は7~9円程度(買取価格はkWhあたり)。新電力などの事業者で10円ほどと、2018年のFIT制度による買取価格28円に比べると大幅に下がります。
卒FIT後は家庭用蓄電池で「自産自消」がトレンドに
「卒FIT」後は売電によるメリットがなくなることから、家庭用太陽光発電の電気をどう使うかは大きな課題となっています。そこで注目されているのが、家庭用蓄電池です。
日中の太陽光で発電した電気を家庭用蓄電池に貯めておき、夜間に使うことで電力会社から買う電気を減らし、電気代を節約しようという発想です。また、災害時など停電が起きた場合の非常用電源としても活用できます。
日本能率協会総合研究所のリサーチによれば、家庭用蓄電池の需要は卒FITが注目されはじめた2017年以降右肩上がり。2017年に800億円だった家庭用蓄電池市場は、2023年には1200億円規模への成長が見込まれています。
2019年度は、(一社)環境共創イニシアチブによる「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」が最大60万円受給できます。補助金の予算には限りがありますので、導入を検討している方は急いだ方がいいかもしれませんね。
需要増でバリエも豊富に!家庭用蓄電池最新事情
では、家庭用蓄電池の最新事情を見ていきましょう。
最大の特徴は価格面です。以前は数百万円の予算を見なければいけなかった家庭用蓄電池ですが、200万円を切る手頃な価格帯の商品が増えてきました。
また、エコキュートなどスマートホームシステムとしての連携サービスも登場。選択肢は広がっています。
シャープ クラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY」
出典:クラウド連携エネルギーコントローラ(HEMS)|SHARP(シャープ)
シャープは、AIを搭載したクラウドHEMSサービス「COCORO ENERGY」を2019年7月末からスタートしました。
家族の生活パターンに基づいた消費電力量・天気予報に基づいた発電量をもとに、クラウドサーバ上のAIが翌日の余剰電力量を予測。翌日の天気予報が雨の場合は前日の夜に安価な夜間電力を蓄電しておき、昼間に放電するなど蓄電池やエコキュートを効率よく制御し、電気代を削減します。
また同社のスマートホームサービス「COCORO HOME」のスマホアプリと連携し、発電量・消費電力量・自動蓄電開始のアラートなどの情報をリアルタイムで確認できます。
パナソニック 【住宅用】創蓄連携システムS+(プラス)
出典:【住宅用】創蓄連携システムS+|Panasonic(パナソニック)
パナソニックの【住宅用】創蓄連携システムS+は、太陽光発電と複数の蓄電池を連携させたシステム。2019年10月21日から受注開始です。
蓄電容量3.5kWh・5.6kWhの2種類の蓄電池を組み合わせ、合計蓄電容量3.5kWh・5.6kWh・7.0kWh・9.1kWh・11.2kWhまで5パターンをニーズに合わせて提供。後から蓄電池の増設も可能なので、家族の人数が増えた場合などにも対応できます。200Vトランスユニットを導入することで、停電時でもエコキュートやIHクッキングヒーターを使用できる高出力(最大4kVA)を実現しています。
また、パナソニックはHEMSを含む家庭内IoTコントローラAiSEG2の機能を拡充し、電気自動車の充電制御も可能にしました。翌日の太陽光発電量を予測し、EVの夜間充電量を増減します。
ニチコン 大容量単機能蓄電システム ESS-U2X1
家庭用蓄電池トップシェアを誇るニチコンは、蓄電容量16.6kWhの単機能蓄電システム「ESS-U2X1」をリリース。
いつ停電が発生しても標準的な家電製品を9時間使用し続けられる圧倒的な大容量がセールスポイントです。
今後も需要急増に応える家庭用蓄電池の新商品は続々登場か
2019年11月の卒FIT開始に向け、今後もさまざまな新商品が市場に投入されることが予測できます。また、車載用蓄電池の世界最大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が2020年に日本の家庭用蓄電池を発売するなど、海外からの市場参入が加速する可能性も。
これから家庭用太陽光発電の導入を考えるなら、家庭用蓄電池とのセット導入は必須です。家庭内での需要と供給のバランスを見極めながら、スマートなエネルギーシステムを構築しましょう!