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新型コロナで電力料金値下げ、新電力から格安プランが続々と【エネルギー自由化コラム】

新型コロナで電力料金値下げ、新電力から格安プランが続々と【エネルギー自由化コラム】
電力自由化ニュース

新型コロナウイルス感染拡大を受け、電力料金の値下げに踏み切る新電力が全国で増えてきました。困っている人や地域を助けたい、太陽光発電のさらなる普及につなげたいなど思惑はさまざまですが、電力卸売価格の低下を利用して安い料金を実現しています。自宅で過ごす人の増加を好機ととらえ、値下げ競争の様相も見えてきました。

シン・エナジーは昼間の料金を格安に

神戸市に本社を置くシン・エナジーは平日の昼間に使った電力料金を安くする新プランを1日から始めました。料金を安く設定したのは午前9時から午後6時までの間で、北海道を除く個人契約が対象。平日昼間の料金引き下げを期間限定でなく、恒常的に行うのは業界初だとしています。

販売エリアで価格が最も安くなるのは九州で、1キロワット時当たり15.5円。同社従来プランの平日午前9時から午後6時の価格に比べ、全国平均の割引率は33%となります。

月に600キロワット時を使用するケースで、電力大手の一般的な料金プランに比べ、年間の料金が2万5,000円から4万5,000円安く済みます。関西エリアだと電力大手の年間料金19万872円が14万5,812円に下がります。年間の料金引き下げ額は23.6%に当たる4万5,060円です。

シン・エナジーの年間電気料金比較

出典:シン・エナジー報道発表資料から

太陽光発電のさらなる普及も狙いの1つ

このプランは電力卸売価格の低下や在宅勤務の拡大による家庭での昼間の電力需要拡大などを総合的に判断して打ち出されたもので、自宅で昼間に在宅勤務したり、子育てしたりする家庭のほか、ペットのために常時エアコンを使用している人たちの利用を想定しています。

新プラン導入の目的として挙げられているのが、利用者への還元とともに、太陽光発電の普及です。シン・エナジーは太陽光など再生可能エネルギーによる発電事業に取り組んでいますが、太陽光発電は日中しか発電できないことから、需給バランスを崩すとして、電力大手が発電事業者に一時的な稼働停止を求める出力制御が問題になっています。

シン・エナジーは「平日の昼間に電力をより多く使うようにシフトさせることで、太陽光発電の普及をさらに推し進めたい」と話しています。

テラエナジーは5月から9月検針分を引き下げ

仏教の僧侶らが設立し、京都市に本社を置くTERA Energy(テラエナジー)は、高圧電力を除く全顧客を対象に5月の検針分から電力料金を引き下げるキャンペーンを始めました。9月の検針分まで続ける予定です。

テラエナジーの料金は卸売市場に連動していますが、新型コロナの影響で3月の電力卸売スポット価格は前年より23%安くなりました。その後も政府の緊急事態宣言で工場の稼働率低下や在宅勤務の広がりが続き、電力スポット価格が休日昼間にほぼゼロ円という事態が発生しています。

卸売市場で電力を調達する新電力にとって価格低下はありがたいことですが、新型コロナで休業を余儀なくされ、収入を絶たれた人にとっては極めて深刻な状況です。そこで、電力料金を限界まで下げ、困っている人を支援しようとキャンペーンを始めたのです。

テラエナジーの料金割引

出典:テラエナジー報道発表資料から

「困ったときはお互いさま」の気持ちで生活支援

料金は電力大手の標準価格より16~70%安く設定しました。調達価格は昨年3月、1キロワット時当たり7.7円でしたが、今年の3月は5.9円に下がっています。そのうえ、通常4.4円の手数料を3.3円まで引き下げました。電力販売価格も昨年の12.1円が9.2円になっています。

さらに、低圧契約の基本料金を契約容量ではなく、当月の使用量に変えました。関西で契約容量20キロワット、使用電力6キロワットなら、通常の8,422円が2,527円で済みます。もし、休業で電気を使用しなければ、最低料金の1,100円だけでよく、最大70%安くなるのです。

竹本了悟社長は「飲食、宿泊などコロナショックで苦しむ業界がある中、電力業界は影響が少なく、心苦しい思いがあった。新型コロナで苦しむ人の生活費や業務固定費を『困ったときはお互いさま』の精神で支援していきたい」と述べました。

宮崎電力は飲食店対象に料金を半額に

宮崎県宮崎市の宮崎電力は宮崎県内の飲食店の料金を引き下げる独自のサービスを5月から始めました。4月末までに宮崎電力と低圧契約し、行政からの休業要請や自主休業で売り上げに影響が出た飲食店が対象で、5~7月分の料金を半額にします。

宮崎県では感染者自体はそれほど多くなかったものの、外出自粛や休業要請の影響で飲食店の売り上げが大幅に落ち込んでいます。廃業や倒産に追い込まれかねない厳しさのところが少なくなく、地元の新電力として飲食店を後押ししたいという思いから、サービスを開始しました。

宮崎電力は「地元の飲食店に寄り添い、本当に困っている人たちを少しでも助けたい」と狙いを説明しました。

商品券で契約者に還元するキャンペーンも

このほか、大阪市に本社を置く四つ葉電力は、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力の管内で昼間の料金が他の時間帯より最大50%引きとなる新メニューの「ステイホームプラン」を始めました。

東京都のLooop(ループ)は太陽光など再生可能エネルギーの発電量が伸びる昼間に「在宅応援タイム」を設定、基準値より多くの電力を消費した契約者に商品券で還元するキャンペーンを進めています。当初8,000世帯の予定でスタートしましたが、申し込み枠がすぐに埋まり、3万世帯に枠を広げてキャンペーンを延長しました。

電力大手は7月にそろって料金値下げへ

新型コロナの感染拡大は火力発電の燃料となる原油価格を押し下げています。これを受け、電力大手10社は、そろって7月の料金を値下げします。全社値下げは6月に続いて2カ月連続です。

7月の値下げ額は使用量が標準的な家庭で沖縄電力156円、北海道電力154円、東京電力と四国電力86円、中国電力と北陸電力75円、東北電力52円、中部電力16円、九州電力15円、関西電力13円となりました。

生活支援と同時に、顧客獲得を目論む一面も

政府の緊急事態宣言は全国で解除されましたが、外出自粛の継続や在宅勤務の広がりなど新型コロナの影響は社会に残ったままです。民間信用調査機関・東京商工リサーチによると、新型コロナの影響による企業の倒産は1日現在で200件を突破しました。業種別では宿泊や飲食業が多くなっています。

4月の雇用統計によると、一時的に仕事を休む休業者は全国で約600万人に膨れ上がりました。働く人の1割近い数で、今後かなりの数が失業者に転じる可能性があるとみられています。これから来るのはリーマン・ショックを上回る大不況という見方も出ています。

格安プランを打ち出す新電力の多くは、苦境に立たされた人や企業を助けるために動きだしたわけです。それと同時に、劇的な社会の変化を新たなビジネスチャンスと受け止めるしたたかな一面もうかがわせています。

この記事を書いた人

高田泰

政治ジャーナリスト

高田泰

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。

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