グリーンボンド発行額が国内で急増、脱炭素の資金確保へ投資の争奪戦も【エネルギー自由化コラム】

グリーンボンド発行額が国内で急増、脱炭素の資金確保へ投資の争奪戦も【エネルギー自由化コラム】
電力自由化ニュース

2050年のカーボンニュートラルへの取り組みのひとつとして、近年、グリーンボンド(環境債)の発行額の増加傾向が見られます。グリーンボンドは環境対策を目的とする資金調達のために発行される債権です。初めて市区町村レベルで発行した川崎市を紹介しつつ、グリーンボンドについて解説します。

環境対策に使う資金を調達するグリーンボンド(環境債)の発行額が、国内で急激に増加しています。政府が2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指しているのを受け、企業や地方自治体が環境対策を急いでいるためで、2021年の国内発行実績は過去最高を更新する見通し。投資の争奪戦の様相も一部に見えてきました。

川崎市がグリーンボンド発行で投資家と座談会

「平均気温が2度上昇すると、川崎港周辺はほとんど水没するという衝撃的なデータが米国の研究団体から出ている。(今回のグリーンボンドを)環境対策を加速するきっかけにしたい」。川崎市が9月末、オンラインで開いたグリーンボンド投資家座談会。福田紀彦川崎市長は冒頭からグリーンボンドに対する強い意気込みを示しました。

川崎市は8月、政令指定都市で初となるグリーンボンドを発行しました。それを受け、趣旨に賛同した投資家と福田市長が意見交換するのが座談会の狙いです。投資家だけでなく、広く市民に地球環境問題の深刻さとグリーンボンド発行に対する理解を得ることも視野に入れています。

座談会には投資家として川崎信用金庫の堤和也理事長、環境再生保全機構の小辻󠄀智之理事長、自動車リサイクル促進センターの大久保英明業務執行理事、横浜銀行の荒井智希市場営業部長が参加しました。

投資家が気候変動対策の充実を川崎市に要望

投資家側からは「川崎市でも台風被害の増加など気候変動の影響が出てきた。投資を川崎市の環境保護、災害対策に生かしてほしい」、「政令指定都市の先陣を切って発行に踏み切ったことに共感するとともに、環境改善に効果が出ると期待している」などの声が出ました。

川崎市は2020年2月、国に先駆けて脱炭素宣言をし、11月には2050年のカーボンニュートラルを目指す脱炭素戦略の「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」を策定しました。しかし、川崎市で排出している二酸化炭素の77~78%は京浜工業地帯の企業を中心とした産業由来です。削減を達成するには官民の協力が欠かせません。

福田市長は「投資家の皆さんの期待をひしひしと感じた。官民で問題意識を共有し、排出削減を着実に進めていきたい」と力を込めました。

川崎市のグリーンボンド発行額は50億円

川崎市高津区で建て替え工事中の橘処理センター完成イメージ(川崎市「グリーンボンド発行について)より)

川崎市のグリーンボンドは発行額50億円。5年の公募公債で、利率が0.005%。三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行、日本コープ共済生協連合会など多くの機関投資家が名乗りを上げ、発行額に対して14倍近い需要が集まりました。

川崎市は集まった資金を高津区の廃棄物処理施設・橘処理センター整備、環境に配慮した本庁舎の建て替え、水害が繰り返されてきた五反田川の放水路整備などに充てる計画です。

グリーンボンドはこれまで、東京都、神奈川県など都道府県レベルでの発行がありましたが、市区町村レベルでの発行は初めて。川崎市資金課は「環境対策には今後、多大な予算が必要になる。民間の力を借り、推進していきたい」と意気込んでいます。

グリーンボンドは企業、自治体、金融機関などが発行

グリーンボンドとは民間企業や政府、自治体などが再生可能エネルギーの導入や省エネなど環境対策に使う資金を調達するための債券です。資金の使途が環境対策に限定され、追跡管理されているのが特徴です。

発行主体は自らが推進する環境対策の費用を調達する企業、政府、地方自治体のほか、環境対策に投融資する金融機関など。投資家は年金基金や保険会社、銀行などの機関投資家が中心です。

グリーンボンドの発行はこれまで付き合いのなかった新たな投資家と関係を築いて資金調達基盤を強化できるだけでなく、環境対策を重視していることを世間に示し、社会的な評価を高められます。

2021年の国内発行額は過去最高を更新する見通し

グリーンボンドは国連が機関投資家の意思決定プロセスにESG(環境・社会・企業統治)課題を反映させるべきと提唱したのを受けて2007年に欧州投資銀行、2008年に世界銀行が発行し、徐々に世界各国に拡大していきました。

日本国内では当初、欧米に比べて動きが鈍かったのですが、2014年に日本政策投資銀行、2015年に三井住友銀行、太陽光発電の栗本ホールディングスが発行しました。2016年には三菱UFJファイナンシャルグループなど、2017年には東京都などが続き、発行が本格化していきます。

環境省によると、国内のグリーンボンド発行総額は2014年に337.5億円でしたが、2017年2,223億円、2018年5,363.7億円、2019年8,238.3億円と急激に増加しました。2020年は1兆円の大台を突破して1兆170.2億円に達しています。2021年はさらに前年を上回り、過去最多を更新する見通しです。

発行件数は2014年1件、2015年2件、2016年4件と低調でしたが、2017年に11件に増えたあと、2018年34件、2019年58件、2020年77件と大幅な伸びを示しています。2021年は10月8日現在で66件。こちらも過去最高を更新しそうな勢いです。

国内企業などのグリーンボンド発行額の推移

NTTファイナンスは3,000億円を発行

民間企業からは過去最大となるグリーンボンドが10月、発行されました。NTTファイナンスの3年債、5年債、10年債です。発行額はそれぞれ1,000億円ずつの合計3,000億円。国内で過去最大であると同時に、事業会社による一度の発行額としては世界最大規模となりました。

利率は3年債0.001%、5年債0.1%、10年債0.27%。NTTグループは9月末、新たな環境エネルギービジョンを策定し、2040年度までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。それを実行するための資金調達が発行の目的です。2020年にも400億円のグリーンボンドを発行していますが、脱炭素推進で発行額を大幅に積み増しました。

NTTファイナンスは使途として、大幅な省エネが期待できる光技術による通信基盤「IOWN(アイオン)」の研究開発や、高速大容量規格「5G」関連の投資、風力・太陽光発電事業、自社グループによる再生可能エネルギー発電供給網の整備などを挙げています。

グリーンボンドは海外投資家を含む235社が購入しました。NTTファイナンスは「持続可能な社会の実現に向けたグループでの取り組みを推進するため、今後も継続的にグリーンボンドによる起債を検討したい」としています。

このほか、国内企業では2021年、オリックス、ホンダファイナンス、東京電力リニューアブルパワー、三菱重工業、Zホールディングス、安川電機など大手企業が競うようにグリーンボンドを発行しています。

環境省は企業の発行推進へ支援策

世界のグリーンボンド発行額は9月16日時点で3,237億米ドルに達し、前年を超えました。英国やスペイン政府などこれまでグリーンボンドを発行しなかった国が参入したのをはじめ、EU(欧州連合)は120億ユーロ(約1兆5,700億円)という過去最大規模のグリーンボンドを発行しました。

脱炭素実現には、巨額の投資が必要なため、世界的に環境関連投資の争奪戦が始まっているわけです。このため、環境省は資金調達手続きに必要な外部コストを補助するなど発行事業者の支援に動いています。環境省環境経済課は「事業を通じ、グリーンボンド発行と投融資の機運をさらに盛り上げたい」と話しました。

政府は再エネを最優先すると明記したエネルギー基本計画を閣議決定しました。これを機に、脱炭素の流れはさらに加速しそうです。その中でグリーンボンドの果たす役割はこれまで以上に大きくなるとみられています。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
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