北海道電力の再値上げと原発再稼働の関係は?なぜ電気料金の値上げが続くの?
北海道電力は2014年10月からの電気料金単価の再値上げを予定しています。
北海道電力は2013年9月に電気料金単価を値上げしたばかりで、それから1年もたたないうちに再値上げ申請がされました。
消費者にとっては電気代の負担増となる、電気料金単価の値上げはなぜ続くのでしょうか?
2014年11月1日からの値上げが発表されました。本文中の内容は記事公開時のものとなります。
なぜ北海道電力は電気料金単価を再値上げするのか?
北海道電力は31日、電気料金の再値上げを経済産業省に申請した。値上げ幅は家庭向けを17.03%、企業向けを22.61%とし、11月実施の見通しだ。泊原子力発電所の再稼働が遅れたため、昨年9月に続く値上げに踏み切った。東日本大震災後に電力7社が値上げを実施したが、再値上げは初めてとなる。道内を中心に消費や生産に大きな影響を与えそうだ
出典:北海道電が再値上げ申請 家庭向け17%、11月実施 :日本経済新聞
北海道電力は2013年9月に値上げを実施しています。今回、それから1年もたたずして再値上げ申請がされたのは、泊発電所の再稼働が2013年9月の値上げ時に想定されていた時期よりも大幅に遅れたことが関係しています。
値上げの理由は原発が再稼働しなかったため
2013年9月の値上げ時、北海道電力は2013年12月以降に泊発電所(原子力発電所)が順次稼動していくことを想定して電気料金単価の値上げ額を決定しました。しかし、泊発電所は想定されていた2013年12月を過ぎても再稼働しませんでした。そのため、2013年9月に設定された電気料金単価のままでは、北海道電力の経営が追いつかず、今回の再値上げ申請となりました。
原発が再稼働しないとなぜ電気料金単価が上がるの?
原子力発電所が再稼働できないことが、なぜ電気料金単価の値上がりにつながるのでしょうか?それには、こんな理由があります。
原子力発電所のかわりに火力発電所を稼働することで、燃料の消費量が増えた
東日本大震災の後、北海道電力の原子力発電所である泊発電所が安全審査のため再稼働しない状態が続いています。泊発電所は北海道電力の総発電量のうち40%近い割合を占めていたため、北海道電力は火力発電でつくる電気の割合を大幅に増やすことになりました。そのため、火力発電で電気を作るための燃料が、原発の稼働中よりもたくさん必要となりました。
今の電気料金は、1年以内の原発再稼働を織り込んだものだった
北海道電力は、原発が稼働する時期を2013年12月と設定し、不足する発電量を補うための火力燃料分、および電気を他社から購入する分の費用を織り込んだ新たな料金単価を設定しました。これが2013年9月の値上げです。
電気料金には「燃料費調整額」制度があるのに
なぜ料金単価自体を値上げしなければならないの?
私たちがいつも支払っている電気料金には、「燃料費調整額」というものが含まれています。これは、火力発電で使う燃料の輸入価格は常に変動しているため、その変動分を調整するために毎月「今月の燃料費調整額はいくらです」と自動的に電気料金に含まれて請求されてくるものです。飛行機の燃油サーチャージと似た仕組みです。
しかし、「燃料費調整額があるなら、火力発電に使う燃料の量が増えても燃料費調整額を増やせばいいんじゃないの?電気料金の単価自体を値上げするのは二重取りでは?」という疑問が出てきます。
それは、火力発電に使うための燃料の「調達費用」分(単価の変動)は燃料費調整額に反映できるのですが、燃料を使って作った電気の「割合の変化」(燃料購入量の変動)は燃料費調整額に反映できない、という問題があるからです。
火力発電の「割合」の増加は燃料調整額では反映できない
燃料費調整額というのは以下のようにして決定されています。
電力会社は電気料金改定の申請時に、電気料金の単価を設定するとともに、基準燃料価格という、燃料費調整額を算定する際の基準となる単価を設定します。これは電力会社が考える「このぐらいの価格で燃料を買い付けられる」という前提価格です。
その上で、原油・石炭の貿易統計価格をもとに、平均燃料価格という、直近3か月間の平均値を毎月算出します。この、平均燃料価格と基準燃料価格を元にして燃料費調整額が決定されます。その月に決定された燃料費調整額は、2か月後の電気料金に反映され、私たちの支払っている電気料金額に含まれて請求されます。この計算方法は法律の施行規則に定められています。
こうした仕組みになっているため、「火力発電に使った燃料の費用(単価×量)」が増加していると言っても、その原因のうち「火力発電に使う燃料の単価」しか燃料調整費には反映されません。
「量」の変動を燃料調整費で吸収できないのは、燃料の使用量は消費電力量と一緒に変わることだけを想定していて、発電方法の急激に変動することを法律が想定していないためであると言えます。
なぜ細かく値上げを繰り返すのか
電気料金の算定には、政府の認可が関わります。大震災のあと、全ての原発が一旦止まるという状況が起こりました。この状況で、政府は料金算定方式について、それまでの「1年間の予測」を元にしたものから「3年間の予測の平均」へと基準を変更しました。
北海道電力は第1回目の値上げ時、「2013年12月以降泊発電所は順次稼働していく想定だから、稼働するまでの間に火力発電に必要な燃料の割増量はこれくらいだろう。」と予想して新しい電気料金単価を決定しました。つまり、その時点で次の電気料金単価の改定までの総発電量のうち、何%を火力で、何%を原子力で作るのかを決めた価格を設定していたのです。
具体的には、2013年度中に1基が稼働して14%、2014,15年度は81%(点検で年の20%は稼働できないため、ほぼフル稼働)の設備利用率になることを前提にしていました。
ですが、原子力規制委員会の審査そのものや安全対策の長引きにより、泊発電所の再稼働が想定の期間に実施されなかったため、最終的な発電比率の割合が火力に偏ってしまい、火力発電に使う燃料は北海道電力の予想量を大きく超えました。
単価の変動(燃料代の値上がりや為替の影響)は燃料調整費で補っていても、火力発電所を多く動かし、その間原発はなんの利益も産まないので、赤字になってしまうということです。
このため再度、泊発電所の想定再稼働時期を先送りし、それまでの期間に火力発電で使うであろう燃料の想定量や、不足する電力を外部から購入するためのを費用等を再計算し、電気料金単価を見直さなければならなくなりました。これが今回、北海道電力が2014年10月に向けて申請している再値上げの内容なのです。
今後も電気料金は値上げされ続けるの?
今後も、北海道電力を含め他の電力会社の電気料金は、再値上げ、再々値上げとどんどん上がり続けていくのでしょうか?今後電気料金単価が値上げされる可能性があるのは次の場合です。
原発の比率が高く、再稼働を近く見積もっている電力会社は値上げの可能性あり
今回北海道電力は、2015年11月以降に泊発電所が順次稼働していくことを想定した電気料金値上げ申請を行いました。そのため、2015年11月以降に予定通り泊発電所が再稼働した場合は、電気料金単価は値下げされる可能性があり、再稼働がさらに先延ばしされた場合は、電気料金単価はまた値上げされる可能性があります。
その他の電力会社でも、北海道電力のように保有する総発電量における原子力発電所の割合が高く、直近の値上げ時に原子力発電所の稼働時期予想を近く見積って申請した電力会社や、一度に多くの原子力発電所が再稼働できる前提を立てている電力会社は、今後の原子力発電所の稼働時期が先延ばしになった場合、想定が崩れることで大幅な再値上げ申請をする可能性があると言えるでしょう。
逆に沖縄電力のように、原子力発電所をもともと保有していない電力会社は、こうした見直しをする可能性はほぼありません。
今後さらに家庭の電気は無駄なく使っていきたい
今後私たち家庭の電気料金は今よりさらに高くなるかもしれません。電気を無駄なく使うことは節約につながるだけでなく、例えば時間帯別で電気料金が安くなるプランを契約することで、電力会社はピーク時の負荷を減らすことができ、設備投資などの費用が抑えられるので、単価の値上げ幅の抑制にもつながっていきます。ご家庭の生活スタイルをもとに、お得で適切なプランを選ぶことを検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人