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注目集めるソーラーシェアリング、農水省が導入を推奨するワケ【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

農業を続けながら太陽光発電設備による発電事業が同時に行える、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が注目されています。耕作中の農地に支柱を立て太陽光発電設備を設置するため、農業を廃止せずに済み、発電による売電収入で所得の安定が見込めます。農林水産省も推奨する、ソーラーシェアリングについて紹介します。

耕作中の農地に支柱を立て、上空に太陽光発電設備を設置するソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が、農家の注目を集めています。国の固定価格買い取り制度による売電収入で農家の所得アップが図れるためで、農林水産省は増え続ける耕作放棄地対策として導入を推奨しています。

徳島県阿南市では水田に続々と太陽光パネル

四国を代表する早場米産地の徳島県阿南市では、3月末から田植えに入ります。栽培品種は早生のブランド米「阿波美人」や極早生の「ハナエチゼン」。稲刈りは8月の旧盆時期に始まり、全国に先駆けて新米が出荷されます。

阿南市中心部に近い東部の七見町や西路見町でも、今年の米作りがスタートしていますが、あちこちの水田に支柱が組まれ、その上で太陽光パネルが春の日差しを浴びて輝いています。農水省が営農型太陽光発電と呼ぶソーラーシェアリングです。

阿南市では県内の他地域より早くほ場整備が進み、早場米の生産に力を入れていますが、農業従事者の高齢化と後継者不足が深刻化してきました。米農家の低収入も原因の1つに挙げられています。それを解決する方策としてソーラーシェアリングが取り入れられたのです。

コンバインなど農業機械が入る構造

西野建設が設置した徳島県阿南市七見町の第1営農型太陽光発電所。稲作への影響について実証実験も進めている(筆者撮影)

阿南市でソーラーシェアリングを推進している企業が、向原町の西野建設です。
西野建設は2018年、阿南高専などとともに七見町でソーラーシェアリングの実証実験を始めました。地域貢献のために米農家の所得向上を目指した結果です。

七見町にある第1営農型太陽光発電所は約3,000平方メートルの水田にアルミ合金製の支柱を立て、その上に320枚の太陽光パネルを設置しました。予測発電量は年間約10万キロワット時。縦横の支柱間隔4.9メートル、最も低い場所で2.7メートルの高さを確保し、コンバインなど農業機械が入るように設計しています。

実証実験では、パネルの設置がどれだけ稲の生育に影響を及ぼすかを調べました。その結果、当初はパネルの陰になる部分で1週間ほどの生育の遅れが見られましたが、収穫時に大きな影響は出ませんでした。遮光率は約30%で、2割未満の減収に抑えられることも分かっています。

建設会社がもうかる農業へ農家を支援

発電した電気は固定価格買い取り制度で20年間、四国電力が買い取ってくれます。第1営農型太陽光発電所の2019年売電額は130万円以上。何も存在しなかった水田の上空が、安定した収入を農家にもたらすことが明らかになりました。

西野建設は農家から依頼を受けたソーラーシェアリングの事業支援も進めています。現在は阿南市内約10カ所で農地上の太陽光パネルが稼働中です。米以外ではサカキを生産している農地にも太陽光パネルを設置しました。

西野建設の西野賢太郎社長は「米農家の経営は非常に厳しく、このままでは耕作放棄地が増えてしまいかねない。若者に農業への関心を高めてもらうには、もうかる農業の仕組みを作らないといけない」と力を込めました。

全国の耕作放棄地は2015年で42.3万ヘクタール

耕作放棄地とは過去1年間に耕作されたことがなく、所有者が今後数年の間に耕作する意思を持たない農地を指します。農水省が5年に1度実施している農林業センサスによると、2015年に確認された耕作放棄地は全国で42.3万ヘクタール。1990年の21.7万ヘクタールからほぼ倍増しています。

農業従事者の高齢化や後継者不足、地方の人口減少、農産物価格の低迷などが耕作放棄地を拡大させてきました。今後、地方の人口減少と高齢化はかつてないペースで進むと予測されています。このままだとさらに耕作放棄地が増えることになりそうです。

一方、全国の耕地面積は2015年で449.6万ヘクタールです。ピークだった1961年の608.6万ヘクタールから159万ヘクタールも減少しました。食料自給率の向上、農業従事者の所得アップなど農水省が目指す目標には、マイナス要素ばかりが並んでいるのです。

全国の耕作放棄地の推移

出典:農林水産省「荒廃農地の現状と対策について」

先進地は関東地方と徳島県

事業用太陽光発電は20年間、一定の売電収入を得ることができます。農水省はソーラーシェアリング導入による所得の安定が農家に耕作放棄を思いとどまらせる理由の1つになると期待しています。

ソーラーシェアリングは支柱の基礎部分に限り、農地の一時転用をしなければなりません。2014~2018年度の5年間は毎年300~500件の一時転用が許可されました。農水省がソーラーシェアリングを認めた2013年度以降、全国で560ヘクタールの農地に許可が下りています。

営農を廃止し、農地全体を転用して太陽光発電を設置した面積の約1万ヘクタールに比べると、微々たる量ですが、少しずつ増えてきているのも事実です。地域別では関東地方の千葉、埼玉、群馬3県と徳島県が先進地になっています。

営農を続けながら太陽光パネルを設置するための全国農地転用許可実績

年度件数転用面積
(支柱部分)
下部農地面積
2013年度96件0.2ha19.4ha
2014年度304件0.4ha60.5ha
2015年度373件0.6ha71.9ha
2016年度411件1.4ha179.2ha
2017年度327件0.5ha82.1ha
2018年度481件0.8ha146.9ha
出典:農林水産省農林計画課資料から筆者作成

農水省は規制緩和など導入促進へ本腰

農水省は2013年、それまで原則として転用が認められなかった甲種農地、第1種農地など優良農地でも、営農を継続すればソーラーシェアリングを利用して太陽光発電を設置できるようにしました。

さらに、2018年にソーラーシェアリングのための農地一時転用期間を従来の3年から条件付きで10年に規制緩和しました。
条件は

  • 認定農業者などが所有、利用権設定している農地で自ら営農する
  • 耕作放棄で荒れ果て、通常の農作業で作物栽培が困難な荒廃農地を活用する

などです。

全国の地方農政局にソーラーシェアリングの相談窓口を設けたほか、事例集やガイドブックを発行して農家に導入を呼びかけています。農水省再生可能エネルギー室は「優良農地を守るうえで効果的な手法。農水省としてもさらに導入を呼び掛けていく」としています。

営農につながらない案件規制を求める声も

千葉大法政経学部の倉阪研究室とNPO法人地域持続研究所が2018年に実施した全国の市町村農業委員会1,174カ所を対象としたアンケート調査では、ソーラーシェアリングのための農地一時転用の許可件数が、2018年8月段階で2014年に比較して6.2倍に増えたことが分かりました。

しかし、さらなる普及に向けた課題もこのアンケートから浮かび上がっています。1つは十分な遮光率がある環境にもかかわらず、日陰でも生育可能なシイタケなどの作物を選んでいるところがかなり明らかになったのです。

農水省は営農につながらないソーラーシェアリング案件の抑制を進め、健全なソーラーシェアリングを育成する必要がありそうです。

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
高田泰(政治ジャーナリスト)
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