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人口減少が続く中山間地や離島で電気自動車に注目が集まるワケ【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

人口減少が続く中山間地や離島で電気自動車に注目が集まり、導入を進める自治体が増えてきています。

中山間地や離島など過疎地域で電気自動車(EV)に注目する地方自治体が増えてきました。岡山県や愛知県では、役所や小水力発電所前に急速充電器を設置し、利用促進をPRしているほか、鹿児島県では離島に住民の足としてEVを大量導入しています。公共交通の弱い過疎地域では大人1人に1台の車が欠かせませんが、ガソリンスタンドが急減し、車社会の維持が難しくなっています。このため、自宅でも充電できるEVに大きな期待をかけているのです。

西粟倉村は小水力発電所や役場に急速充電器設置

西粟倉村の影石水力発電所前に設けられたEV用の急速充電器。災害時の使用とEV普及を狙って設置されている(筆者撮影)
岡山県北東部に位置し、鳥取県との境に位置する西粟倉村。約60平方キロの面積のうち、95%が森林に覆われた山村です。吉井川支流の吉野川沿いを中心に約600世帯、1,500人が暮らしています。
影石地区では、農業用水から取水する影石水力発電所が稼働しています。出力5キロワットの小規模な小水力発電所です。その発電所前に置かれているのがEV用の急速充電器。災害時に住民に利用してもらうとともに、EVの普及を図る狙いが込められています。
西粟倉村高齢者生活福祉センター前にあるEV用の急速充電器。村は将来、村内のEVの電力を自前の再生可能エネルギーで賄おうと考えている(筆者撮影)
EV用の急速充電器はここ以外にも、村役場、高齢者生活福祉センター前、道の駅などに設置されました。

将来は再生可能エネルギーをEVに活用

村内には兵庫県と鳥取県を結ぶ第三セクター鉄道の智頭急行が通っているものの、便数はそう多くありません。住民の移動はどうしても自家用車になります。

ガソリンスタンドは村役場近くに1カ所ありますが、村の人口減少で将来の見通しを立てにくいのが実情。万一廃業となったら、住民は隣接する岡山県美作市や県境を越えて鳥取県智頭町まで給油に向かわなければなりません。

そこで、村が目をつけたのがEVです。EVは自宅で充電できるうえ、村内には影石水力発電所をはじめ、計5基の小水力発電所が運転し、EV用電源として利用できます。村産業観光課は「ガソリン車はEVにシフトしていくはず。将来は住民に自家用車をEVに切り替えてもらい、車の電気も村の再生可能エネルギーで賄いたい」と夢を膨らませています。

背景に潜むガソリンスタンドの急激な減少

民間のガソリンスタンドがゼロとなり、奈良県川上村が開設した公設スタンド。運営は村民支援団体に任せている(筆者撮影)
過疎地域の自治体や住民がEVに注目するのは、温室効果ガスの排出削減などさまざまな理由がありますが、ガソリンスタンドの減少もその1つです。経済産業省のまとめでは、全国で営業しているガソリンスタンドは2017年3月末現在で3万1,467カ所。1995年に比べてほぼ半減しています。

経産省は自治体内にガソリンスタンドが3カ所以下のところを「給油所過疎地」と呼んでいますが、全国に302市町村も存在しているのです。うち、1カ所もガソリンスタンドがない自治体が和歌山県北山村など12町村、1カ所が西粟倉村など75町村、2カ所が北海道陸別町など101町村、3カ所が岩手県平泉町など114市町村に上ります。

過疎地域では人口減少でガソリンスタンド経営が成り立たない場所が多く、民間ガソリンスタンドの誘致は至難の業。このため、2017年には北海道占冠村、伊達市、奈良県川上村、和歌山県すさみ町で公設のガソリンスタンドがオープンしました。

しかし、ガソリンタンクの漏えい防止対策に2,000万円近い費用がかかるうえ、施設の維持管理費用も軽くありません。財政難の過疎自治体が半永久的な費用負担に耐えられそうもないのが実情です。

給油所過疎地の自治体

0カ所青森県西目屋村、新潟県粟島浦村、富山県舟橋村、大阪府豊能町、奈良県三宅町、上牧町、黒滝村、川上村、和歌山県北山村、山口県和木町、鹿児島県三島村、十島村の12町村
1カ所
北海道赤井川村、福島県湯川村、長野県天龍村、京都府南山城村、岡山県西粟倉村、徳島県上勝町、熊本県水上村など75町村
2カ所
北海道泊村、山形県西川町、群馬県南牧村、長野県下條村、和歌山県九度山町、高知県東洋町、沖縄県久米島町など101町村
3カ所
北海道仁木町、青森県大間町、岩手県住田町、鳥取県海士町、高知県本山町、熊本県球磨村、宮崎県木城町など114市町村

出典:経済産業省「市町村別にみるSS過疎の状況」(2017年3月末現在)から筆者作成

豊田市の住民団体が市の支援を受けて小水力発電を整備

愛知県豊田市では、中山間地の旭地区にある築羽自治区で官民が小水力発電で生まれた電力をEVに利用することを考えています。住民団体の「水車の里つくば」が市の支援を受けて発電所を整備し、EV用の急速充電器も備えました。

発電所は18メートルの高低差を持つ農業用水から取水しています。最大出力は200ワット。現在は中部電力に売電していますが、地域内にEVが普及すれば、充電場所として利用することも視野に入れています。

整備費用などは、地域資源を生かして活性化に取り組む団体を支援するわくわく事業で、市が負担しました。市旭支所は「EV利用を念頭に置いた住民の活動を今後も支援していきたい」と意欲を見せています。

ガソリンスタンド廃業後も考え、EVに活路

市は人口42万5,000人の中核市で、トヨタ自動車が本社を置くことで知られていますが、市の北東部に広大な中山間地が広がります。

中でも、人口2,750人の旭地区は、既に65歳以上の高齢者が4割以上を占めています。路線バスの運行本数が少なく、移動手段は自家用車。しかし、ガソリンスタンドは地区内に1カ所しかありません。水車の里つくば会員の鈴木禎一さん(70)=製材業=は「スタンドへ行くのに20、30分かかる住民も少なくない」といいます。

市内では中山間地域の交通事情を改善するため、1人乗りの超小型EVや自動運転の実証実験が名古屋大などの手で進んでいます。住民が地域の将来を考えた結果が、小水力発電のEV活用なのです。

薩摩川内市は甑島に40台のEVを導入

EVの弱点は航続距離です。1回の充電で走れる距離はおおむね約100キロ。これに対し、ガソリン車は1回の給油で300キロ以上の走行が可能です。しかし、この弱点が苦にならない地域もあります。面積が狭い離島です。

鹿児島県薩摩川内市は、住友商事や日産自動車と共同で離島部の甑島に40台のEVを導入し、再生可能エネルギーで作った電力を利用するモデル事業を2017年から始めました。

当面はEVの蓄電池が再生可能エネルギーの出力変動を調整する役割を果たします。EVでの利用が終わったあとはリユース蓄電池としてさらに活用する計画です。太陽光発電は日中しか発電できませんから、EVや蓄電池に貯め、いつでも安定して利用できるようにしようとしているのです。

9台を市の公用車、31台を民間が利用

甑島は薩摩川内市西の東シナ海に浮かぶ列島で、上甑島、中甑島、下甑島の有人3島と多数の無人島で構成されます。人口は約5,000人。ブリやキビナゴ漁を中心とする水産業が盛んです。

40台のEVは9台が市の公用車として利用されています。残り31台は民間が個人や事業用に活用しています。各家庭や事業所で充電しているほか、上甑島と下甑島に1カ所ずつ高速充電器が設置されました。

市次世代エネルギー課は「EVは再生可能エネルギー推進のために導入したが、ガソリンスタンドがなくても住民の移動手段を確保できる。離島にぴったりの車でないか」と語りました。

EVが過疎地にとって有用な選択肢に

給油所過疎地問題について、東洋大経営学部の小嶌正稔教授(経営学)は「短期的な代替手段でなければ、自治体がガソリンスタンドを維持しようとするのは正しい選択肢ではない。ガソリンは危険で取り扱いが難しい」と指摘しています。

EVを走らせるために、火力発電を増設したのでは、温室効果ガスの排出抑制に逆行します。しかし、人口の少ない過疎地域では、太陽光、小水力など地域内の再生可能エネルギーで賄うことができそうです。「過疎地域ではEV導入が有用な選択肢になる」。小嶌教授はこう提言しています。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
高田泰(政治ジャーナリスト)
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