世界最大級のバイオマス発電が新潟で始動、FIT使わず2026年度運転開始目指す【エネルギー自由化コラム】

世界最大級のバイオマス発電が新潟で始動、FIT使わず2026年度運転開始目指す【エネルギー自由化コラム】
電力自由化ニュース

2026年度の営業運転開始に向けて、新潟県に世界最大級のバイオマス発電所が建設されます。発電した電気はFIT制度を活用しないで売電される予定で、FIT制度終了後の再生可能エネルギーの将来を見越した発電事業の1つとして注目です。

バイオマス発電大手のイーレックスと石油元売り大手のENEOS(エネオス)が新設としては世界最大級となるバイオマス発電所を事業化することで合意しました。2026年度の営業運転開始を目指しています。建設場所は新潟県聖籠町のゴルフ場で、固定価格買い取り制度(FIT)を使いません。バイオマス発電は再生可能エネルギーの柱の1つと期待されながらも、燃料の安定確保などで課題が残っていますが、安価な植物燃料を開発するなど課題克服に向けて意欲的な取り組みです。

世界初の超々臨界圧発電で、出力30万キロワット

イーレックスとENEOSのバイオマス発電所完成イメージ(イーレックス提供)

建設場所は聖籠町東港の新潟東港工業地帯近くにあるENEOS所有のゴルフ場「新潟サンライズゴルフコース」の一部約40万平方メートル。出力は30万キロワット規模とする計画で、石炭火力からの転換を除く新設のバイオマス発電所としては世界最大級となります。

設備は温度600度、圧力26メガパスカル以上という高温高圧の水蒸気を発生させてタービンを回し、高効率の発電を実現する世界初の超々臨界圧バイオマス発電所とします。これにより、燃料消費量の削減が可能になります。二酸化炭素の削減量は年間100万トンを見込んでいます。

年間の発電量は約200万キロワット時。東北電力へ売電する計画ですが、FIT制度を活用しない方針です。FIT制度を活用した再エネの発電所は高値販売の負担が国民の電気料金に転嫁されてきました。しかし、このケースでは国民の追加負担が発生しません。

イーレックスは国内6カ所でバイオマス発電所を運営・計画しており、これまでの知見に創意工夫を加え、国内で初めてFIT制度に頼らないバイオマス発電事業の構築を目指す意欲的な取り組みです。営業運転の開始後は再エネでできた電力を希望する企業向けに販売することも検討します。

燃料に雑穀のソルガムを活用し、費用を軽減

燃料費を安くするため、ロシアから輸入する予定の木質ペレットだけでなく、安価な植物燃料を導入する方針。そのために目をつけたのがイネ科の雑穀のソルガムです。燃料の使用量は年間120万トン。ソルガムを主体にすることで燃料費を軽減します。

これに備えてイーレックスは2021年度からベトナムとフィリピンでソルガムの栽培を計画しています。家畜の飼料に利用される食用のソルガムに比べ、収穫量が2倍以上になるよう品種改良し、大量栽培でコストを引き下げます。

栽培されたソルガムは収穫後、固形燃料に加工されて日本へ運ばれます。その結果、イーレックスは燃料の調達価格をこれまでに比べて3~4割安くすることができるとみています。自社のバイオマス発電所で利用するだけでなく、火力発電事業者向けに石炭の代替燃料として販売することも視野に入れているようです。

着工は2023年中、営業運転の開始は2026年度を目標としています。このため、イーレックスは11月から環境影響評価(アセスメント)に向けた一連の手続きを開始しました。イーレックスは「建設工事も含め、周辺環境に配慮した計画とするとともに、地域経済の発展にも寄与していきたい」と意気込んでいます。

政府は2030年度の電源構成でバイオマス発電を倍増させる方針

バイオマス発電は再エネの1つで、木材など生物資源を直接燃やしたり、ガス化したりして発電します。動植物から生まれた生物資源の総称が「バイオマス」という言葉です。木材から建築廃材、家畜の糞、食品加工廃棄物、稲わら、下水汚泥まで燃やせる生物資源なら何でも燃料に使用します。

なぜ、バイオマス発電が再エネに含まれるかというと、木材なら成長の過程で光合成により、大気中の二酸化炭素を取り込んでいるからです。1997年に採択された地球温暖化防止京都議定書でバイオマス発電は温室効果ガスを排出しないとみなすことになりました。

経済産業省によると、FIT制度で認定されたバイオマス発電所は6月末現在で、2012年の再エネ特措法施行時に発電を開始していた設備を含めて650件余り、約370万キロワットが稼働しています。

2019年度の電源構成でバイオマス発電が占める割合は2.8%しかありませんが、導入量が徐々に増加して存在感を示し始めました。風力や太陽光など異なり、天候に左右されずに安定して発電できる強みも持ちます。政府は2030年度の電源構成でバイオマス発電を2018年度の2.3%から最大4.6%に引き上げる方針です。

バイオマス発電の国内導入状況(固定価格買い取り制度認定分、2020年6月末現在)

認定量導入量(新規認定)導入量(移行認定)買取電力量
買取金額(億円)
826.3万kW236.2万kW131.4万kW622.5万kW1兆5,404億円
701件432件224件
出典:経済産業省資料から筆者作成(注)新規認定は固定価格買い取り制度開始後に新たに認定を受けた設備、移行認定は再エネ特措法施行の日に発電を開始していた設備

日本の電源構成

出典:環境エネルギー政策研究所「国内の2019年度の自然エネルギーの割合と導入状況」

燃料の安定確保が最大の課題に

しかし、バイオマス発電にもいくつかの弱点があります。日本はパーム油などバイオマス発電に使用する燃料の大部分を輸入していますが、タンカー輸送では大量の二酸化炭素を排出してしまいます。東南アジアでは輸出用のパーム油生産のために、先住民やオランウータンなど希少動物が暮らす自然林が切り開かれる環境破壊が続いています。

国産燃料に切り替えれば運搬や加工コストを抑えられ、東南アジアの環境破壊を防げます。しかし、木材を例にとれば木材資源の蓄積量自体は増えていますが、その多くは林道もついていない山奥にあります。そこへ林道を通して資源調達したのではコストがかかりすぎます。しかも、林業の不振と従事者の高齢化進行で、木を切る担い手が不足しています。

その結果、林道が敷設されている場所の間伐材などしか調達できないことになり、地域によっては需要の急増で木質ペレットが不足しています。バイオマス発電にとって最大の課題は燃料の安定確保といえるでしょう。

このほか、発電量の小さい施設になりがちで、地産地消の小規模施設しか整備しにくいことや、未利用木材と製材・合板用丸太との競合、燃料の出所証明書などFIT制度の煩雑な手続きも課題として残っています。

従来にない大規模施設を目指す意欲的な計画

新潟の計画はこれらの課題をすべて解消するものではありませんが、格安燃料のソルガム利用でコスト面の課題を解決し、これまでにない大規模施設を建設しようとしています。FIT制度を活用しないことも含め、FIT後を見据えた意欲的な計画ということができます。

再エネといえば、巨大な風車が目を引く風力や東日本大震災後に急速に普及した太陽光ばかりに注目が集まってきましたが、バイオマス発電にもっと関心が注がれてもいいのではないでしょうか。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
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