電力需給ひっ迫の緊急事態、節電に協力を

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寒波の影響で12月下旬より厳しい寒さが続き、暖房の利用などで例年に比べ電力需要が大幅に増加、電力需給がひっ迫しています。「最大需要が10年に1度程度と想定される規模を上回る」として、電気事業連合会や東京電力などの旧一般電気事業者(※)各社が節電への協力を呼びかけています。
旧一般電気事業者とは…北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・四国電力・中国電力・九州電力・沖縄電力をいいます。
なぜ、電力需給のひっ迫は起きてしまったのでしょうか?今起こっていることを解説し、今後起こりうること、電力会社各社の発表・対応、ご家庭で今すぐできる節電方法を解説します。
- 更新日
- 2021年1月15日
電力不足、今なにが起こっているのか
2020年12月下旬以降から、例年に比べ、電力需要が大幅に増加しています。
電力不足が起きた主な理由として、寒波などによる予想を上回る全国的な冷え込みと、新型コロナウイルス感染症予防対策によるテレワークが増加し、暖房器具使用などの家庭用電力使用量の急増の2つが考えられています。
また、天候不順による太陽光発電の発電量減少だけではなく、火力発電燃料のLNG(液化天然ガス)の不足も懸念されています。寒波が長引いたことが影響し、火力発電の発電量も増加しています。現在、LNGの在庫が少なくなるリスクが高まっています。
今後も寒波や天候不順など、例年以上に厳しい寒さが続くことも予想され、電力需給ひっ迫はしばらく続くと見込まれています。旧一般電気事業者は、高経年化火力を含む発電所の稼働、効率的な電力融通の協力などさまざまな対応を行っていますが、このままでは計画停電の実施も考えられます。そのため、日常生活に支障がない範囲での節電を呼び掛けているのです。
電力需給状況はでんき予報で確認できる
電力需給状況は、でんき予報で確認できます。旧一般電気事業者各社のでんき予報(電力需給状況)は、以下のとおりです。
- 北海道エリアのでんき予報(北海道電力ネットワーク)
- 東北6県・新潟エリアでんき予報(東北電力ネットワーク)
- でんき予報(東京電力パワーグリッド)
- 北陸エリアでんき予報(北陸電力送配電)
- 中部エリアの電力需給(送電端)のお知らせ(中部電力パワーグリッド)
- 電力需給のお知らせ(関西電力送配電)
- でんき予報(中国電力ネットワーク)
- でんき予報(四国エリアの電力使用状況)(四国電力送配電)
- でんき予報(電力のご使用状況)(九州電力送配電)
- でんき予報(沖縄電力)
でんき予報は、毎日更新されています。お住まいの地域の電力使用状況、電力供給状況を確認するとよいでしょう。
電力の需給バランスが崩れるとどうなるの?
電力はためておくことができません。発電したら、そのときに使わなければならないエネルギーです。電力会社は、時間によって変化し続ける電力の需要に対し、供給を合わせるようにして発電しています。電気の需要と供給の量は、常に一致していなければならないのです。
昨年12月下旬から1月上旬にかけてたびたび起きた寒波によって、最低気温が氷点下の予報が現在も続いています。今回の電力需給ひっ迫は、「最大需要が10年に1度程度と想定される規模を上回る」とし、2019年と比較すると、1月の電力需要は約1割増加しています。
出典:電力需給の状況について|資源エネルギー庁
電力の需給バランスが崩れた場合、つまり需要が供給より高くなってバランスが維持できなくなると、大規模停電(ブラックアウト)が発生する事態も考えられます。2018年9月6日に起きた北海道胆振地方東部地震でも、この電力需要のバランスが崩れたため、ブラックアウトが起きたと言われています。
電力会社各社の発表・対応内容は?
今回の電力需給のひっ迫を受け、電力会社各社は、以下のような発表・対応内容を公開しています。
電気事業連合会
電気事業連合会は、日本の電気事業の円滑な運営を目標に、全国10の旧一般電気事業者によって組織された団体です。
今回の電力需給ひっ迫を受け、1月10日に「電力の需給状況と節電へのご協力のお願いについて」、1月12日に「電力の需給状況と節電へのご協力のお願いについて(続報)」を公開しています。
電力需給の更なる悪化への懸念を示し、電力各社が実施している供給力追加対策に加え、日常生活に支障のない範囲での節電を呼び掛けています(一部抜粋)。
お客さまをはじめ、広く社会の皆さまには大変ご迷惑とご心配をお掛けし、誠に申し訳ありませんが、寒波の中での暖房等のご利用はこれまで通り継続していただきながら、日常生活に支障のない範囲で、照明やその他電気機器のご使用を控えるなど、電気の効率的な使用(※2)にご協力いただきますよう、重ねてお願いいたします。
出典:電力の需給状況と節電へのご協力のお願いについて(続報)|電気事業連合会
今後も、続報の公開が予想されます。引き続き、注目しておきましょう。
旧一般電気事業者
旧一般電気事業者各社の発表・対応は以下の通りです。
各社、電気事業連合会と同様に「寒波の中での暖房等のご利用はこれまで通り継続していただきながら、日常生活に支障のない範囲で、照明やその他電気機器のご使用を控えるなど、電気の効率的な使用にご協力いただきますようお願いいたします。」としながら、経済産業省資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」を紹介している電力会社もあり、より効率的な電気機器の使用を促しています。
北海道電力
東北電力
東京電力
北陸電力
中部電力
関西電力
中国電力
四国電力
九州電力
電力広域的運営推進機関
電力広域的運営推進機関は、電気事業法に基づく認可法人として中立で公平な業務運営を行うことを目的に設立された団体です。日本のすべての電気事業者が会員となることが義務付けられ、電気の需給状況と系統の運用状況の監視や送配電設備の公平・公正かつ効率益利用の推進などの取り組みを行っています。
「今冬の電力需給ひっ迫時の広域機関の対応」として、広域機関の対応の概要、対応の経緯、需給状況改善のための指示の実施についてなどを発表しています。
広域機関の対応に概要については、以下のとおりです(一部抜粋)。
当機関は、電気の安定供給確保に万全を期すため、業務規程に基づき、以下の対応を行っております。
- 一般送配電事業者に対する融通指示
- 発電事業者及び小売電気事業者に対する発電に関する指示
- 地域間連系線の運用容量拡大
出典:今冬の電力需給ひっ迫時の広域機関の対応|電力広域的運営推進機関
需給状況悪化時の対応として、「万一の際の備えとしての計画停電の考え方について」も紹介されています。計画停電が行われることも可能性として考えられます。今一度、目を通しておくことをおすすめします。
ご家庭ですぐにできる節電方法
各電力会社は、無理のない範囲での節電協力を呼び掛けています。家庭では、どのようなことができるのでしょうか。今からすぐにできる節電方法を紹介します。
暖かく過ごしながらできる5つの節電方法

早朝や夕方以降は気温が下がるので、暖房はかかせません。暖房機器の使い分けや設定方法などを工夫すれば、暖かく過ごしながら節電できます。
ただし、寒いのを我慢して体調を崩してしまっては大変なので、無理のない範囲で行うようにしましょう。
(1)エアコンの暖房だけでなく、電気ストーブ(ハロゲンヒーター)なども使い分ける
台所や脱衣所・洗面所などで足元を暖めたい場合は、電気ストーブ(ハロゲンヒーター)がおすすめです。エアコンは広い空間を暖めるのに効率的ですが、室内全体を暖めるまで時間もかかって消費電力が大きくなります。
用途や使用時間に合った暖房機器を使い分けて節電しましょう。
(2)エアコンの暖房時の室温の目安は20℃にする
エアコンの暖房は冷房よりも電気代がかかるといわれています。環境省が推奨するエアコン暖房時の室温の目安は20℃です。20℃だと寒いと感じる場合は、以下のような工夫をしてみましょう。
- 窓に厚手のカーテンにする、雨戸・シャッターを閉めるなど、窓などの開口部から室内の暖かい空気が逃げないように断熱する。
- 暖かい空気は上のほうにたまるので、エアコンの風向を下向きに設定する。
- 洗濯物の部屋干しなどをして室内の湿度を上げ、体感温度を上げる。
- 就寝時など足元を暖めるのに湯たんぽを使う。
エアコン暖房を節約しながら使う方法について、さらに詳しくは以下の記事で紹介しています。【電気代も節約】エアコン冬の暖房時の適正温度は?電気代を節約しながら快適に過ごせる5つの方法!
(3)扇風機・サーキュレーターを使って暖かい空気を循環させる
暖かい空気は室内の上部にたまります。エアコンは上部に設置され、温度センサーがエアコン周辺の温度を測っているため、上部だけが適温になっている場合があります。
扇風機・サーキュレーターを天井に向けて使うと暖かい空気を循環され室内の温度が均一になるので、エアコンの設定温度を変えなくても暖かく感じられるようになります。
暖房時の扇風機・サーキュレーターの使い方について、さらに詳しくは以下の記事で説明しています。エアコン暖房・ヒーターは扇風機・サーキュレーターで部屋の空気を循環させて電気代を節約!
(4)電気カーペット(ホットカーペット)は人がいる部分だけで使って設定温度を低めにする
電気カーペットにはさまざまなサイズがあり、暖める面積が大きくなるほど消費電力が大きくなります。パナソニックの電気カーペット(DC-2HAC1/DC-3HAC1)を参考にすると、消費電力は2畳用が480W、3畳用が700Wとなっています。
人がいない部分で使っている電気が無駄になってしまうので、全面・1/2面・1/3面など、暖める面積を切り替えられる機能を活用して節電しましょう。
電気カーペットの消費電力や電気代について、さらに詳しくは以下の記事で説明しています。ホットカーペット(電気カーペット)の電気代は安いの?節電しながら快適に使うコツは?
(5)こたつ布団に加えて上掛けと敷布団を併用する
こたつ布団だけでなく上掛けと敷布団を併用するだけで、年間電気32.48kWh省エネ、電気代約880円の節約になります。また敷布団の下に断熱シートを敷けば、断熱効果がさらに高くなります。1日5時間使用した場合です。
こたつは消費電力が小さく、節電効果の高い暖房機器のひとつです。スイッチを入れてから暖まるまでの数分間は消費電力が大きくなりますが、こたつの中が暖まったあとは弱運転時で約81W、強運転時で約170Wです。他の暖房機器と組み合わせてこたつを使えば、暖かく過ごしながら節電できます。
消費電力はニトリ「リビングこたつ(ウォルタG 80L)」を参考にしています。
出典:空調 | 無理のない省エネ節約 | 家庭向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト
リビング・台所・トイレなどですぐにできる節電方法

リビング、台所、トイレなどですぐにできる節電方法をまとめました。
家電製品の電源をこまめに切る、設定を省エネ・節電モードに変更するなど、すぐにできることばかりなので是非実践してみましょう。
- リビングですぐにできる節電方法
- 照明をこまめに消す。
- 使わない家電製品の電源を切るときは、本体の主電源を切るか、コンセントからプラグを抜いておく。
- テレビの液晶画面の輝度を下げて、必要な時以外は消す。
- パソコンを長時間使わないときは、スリープではなく電源を切る(シャットダウン)。
- 台所ですぐにできる節電方法
- 冷蔵庫の設定を「中/弱」に変える。
- 冷蔵庫の扉を開ける回数や時間を減らす。
- 冷蔵庫に食品をつめこみすぎないようにする。
- 電気ポットはなるべく使わないでお湯はコンロでまとめて沸かし、保温性の高い水筒などにためておく。
- 電気ポット使用時は保温時の設定温度を低めにして、必要な時に都度再沸騰させる。
- トイレですぐにできる節電方法
- 温水洗浄便座の便座・洗浄水の設定温度を下げて、使わないときは便座の蓋を閉めておく。
家電製品は使っていない間も、主電源を切らない限り待機時消費電力がかかります。平成20年度のデータによると、家庭で消費する電力のうち年間約6%が待機時消費電力といわれています。
使わない家電製品の電源をまめに切る習慣をつけておきましょう。一定時間使用しないと自動的に電源が切れる「オートOFF」など、省エネ・節電機能を活用するのもおすすめです。
出典:待機時消費電力を減らしましょう。|省エネルギーについて|資源エネルギー庁
電気を使う時間を朝・夜にずらす「ピークオフ」も意識しよう

電力需要のピーク(最大電力)になる日中の時間帯をさけて、なるべく朝・夜に電気を使うように心がけましょう(「ピークオフ」)。
電気は最大電力に合わせて発電されていますが、電気はためておけないため、使われない分が無駄になってしまいます。「ピークオフ」は電気の使用量は変わらないため節電にはなりませんが、日本全体で電気を使う時間が一定になると電力の需給バランスが安定するため、電気の無駄がなくなり省エネ・節電につながります。一度に使う電化製品を減らすなど、家事の段取りを工夫してみましょう。
ただし、家族構成やライフスタイルによって「ピークオフ」が難しい方も多いですよね。とくに朝や夕方は、食事・洗濯・掃除・入浴などで電気を使う時間が集中します。無理なくできることからやってみましょう。
- 炊飯器は早朝に炊き上がるよう、タイマー機能を使ってまとめて炊く
- 保温機能を使用しないで、炊いた後はよく冷ましてから冷蔵庫・冷凍庫で保存しましょう。
- 洗濯は夜にする
- 夜の洗濯は、「ピークオフ」だけではなく効率的にできるのでおすすめです。入浴後のお風呂の残り湯を洗濯に使うと、皮脂汚れなどが落ちやすく部屋干しでも洗濯物が乾きやすくなります。
- 日中に掃除をするときは、掃除機を使わずにモップやほうきなどを使う
- 朝・夜は掃除機を使って、日中はモップやほうきなどの電気を使わない掃除方法を選択してみませんか?普段掃除機だけで取り除けないゴミやほこりもすっきりきれいにできますよ。
「ピークオフ」で電気代が節約できるプランをエネチェンジで探してみよう!
朝・夜の電気料金がお得な電気料金プランに切り替えれば、「ピークオフ」で電気代を節約できます。
日中不在にしていることが多い、夜に電気を使うことが多い、「ピークオフ」に取り組んでみたいという方は、電力会社・電気料金プランの切り替えを検討してみませんか?
- 東京電力エナジーパートナー「夜トク8」
- 東京電力エナジーパートナー「夜トク12」
- スマ電「東京エリア 夜得ホームプラン」
- スマ電「ぎっしり!夜得ホームプラン」
- スマ電「北陸 夜得ホームプラン」
- スマ電「がっちり!夜得ホームプラン」
- スマ電「ごっそり!夜得ホームプラン」
- スマ電「四国 夜得ホームプラン」
- スマ電「九州エリア 夜得ホームプラン」
- シン・エナジー(旧洸陽電機)「【夜】生活フィットプラン(旧:生活フィットプラン)」
効率的に電気を使用し、節電に協力を
2021年1月現在、電力需給がひっ迫するという緊急事態が起き、旧一般電気事業者各社は節電への協力を呼び掛けています。このままの悪天候や冷え込み、電力需要の増加などが続くと、計画停電の実施も考えられます。
計画停電を回避するためには、ひとりひとりが効率的に電気を使用し、節電に協力することが大切です。この記事では、現在起きていること、需給バランスが崩れると起きること、各電力会社の発表・対応だけではなく、すぐにできる節電対策などを紹介しました。まずは、すぐにできる節電対策からはじめてみましょう。