2021年5月・6月の電力業界動向 電力需給ひっ迫・スポット価格高騰への対応や電力市場の状況、エネルギー供給強靭化法施行に向けた検討などを解説します
この記事の目次
2021年5月・6月の電力業界の動向を、関係省庁の資料などから振り返りましょう。今回は、電力需給ひっ迫・スポット価格高騰への対応や電力市場の状況、エネルギー供給強靭化法施行に向けた検討、本年度冬季の需給対策などについてお伝えします。
気になる電力業界のニュースのポイントや見ておきたい注目の資料について、エネチェンジを運営するENECHANGE株式会社の顧問である関西電力出身、元大阪府副知事の木村愼作氏に解説してもらいました。
需給ひっ迫・スポット価格高騰への対応
まずは、電力ひっ迫・スポット価格高騰への対応について見ていきましょう。
4月28日、第34回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会が行われました。
出典:2020年度冬期の電力需給ひっ迫・市場価格高騰に係る検証中間取りまとめ(案)
2020年度冬季の電力ひっ迫・市場価格高騰に関する中間取りまとめが公表されました。中間取りまとめのポイントとして、電力ひっ迫と市場価格高騰についてそれぞれ「事象の要因」と「教訓を踏まえた主要対策パッケージ」が表にまとめられています。今まで、さまざまな議論がされてきましたが、これが最後の取りまとめになります。
今回の電力ひっ迫は、寒波による需要の増加とLNG火力の稼働抑制が主な要因として挙げられています。石油火力の休廃止や稼働中原発の減少などの供給力低下があり、火力発電・水力発電に依存した供給構造になっている点が背景として指摘されました。
市場価格の高騰については、電力市場において、売り切れ状態が断続的に発生したことで結果的に買い入札価格が上昇しました。また、売り惜しみをはじめ、問題となる行為はなかったという再確認も行いました。
電力取引の適正化
4月27日の電力・ガス取引監視等委員会 第60回制度設計専門会合では、電力取引の適正化についてまとめられました。
出典:旧一般電気事業者の内外無差別な卸売に関する今後の検討について以下、出典は同じ
旧一般電気事業者(※)の内外無差別な卸売に関するこれまでの対応として、旧一電の発電部門がグループ内外の小売と新電力を取引条件で差別しないことの確保が重要であるとされてきています。
※旧一般電気事業者とは…北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・四国電力・中国電力・九州電力・沖縄電力をいいます。
2020年7月には旧一電各社に対し、社内外の取引条件を合理的に判断し、内外無差別に卸売りを行うことのコミットメントを要請、各社より実施の旨の回答を受領しています。
今冬のスポット市場での価格高騰に関しては、グロス・ビルディング(売買両建て入札)について、旧一電各社同一の担当者が売り札・買い札の双方を入札しているため透明性に欠けるとの指摘がされました。今後のスポット市場への売り入札について、原則発電部門が行う方向で議論を進めることになりました。
4月27日時点では、今後の対応について、「支配的事業者の発電・小売事業の在り方についての検討と各社コミットメントに関する取引状況の確認・課題の整理を進める」とされました。具体的には旧一電の内外無差別的な卸売の実効性を高め、社内・グループ内取引の透明性を確保するための課題について総合的に議論することとされました。
コミットメントに関しては、その実効性を高め、かつ取り組み状況を外部から確認できるための仕組みについての検討が進められます。しかし、一部の機関から提起されている発販分離に関してはさまざまな問題があり、慎重に進めていく必要がありそうです。
今後の電力需給
4月30日には広域機関 第59回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会、5月25日には第35回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会が開催されました。今後の電力需給が主な論点となり、2021年度夏季と冬季の電力需給の見通しや今後の対応に関する論点などが話し合われています。
出典:電力需給検証報告書(案)について|調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局
2020年度冬季の電力需給実績と2021年度夏季の猛暑H1需要発生時の電力需給の見通しが話題となりました。検証スケジュールがまとめられています。
出典:電力需給検証報告書|調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 事務局以下、出典は同じ
今年の夏(7月・8月)の予備率は、全国的に見ても3.7%を超えています。3%を超えていれば対応は可能ですが、例年にはない厳しい夏が予想されます。特に猛暑H1需要に対して、連系線活用等を考慮しない場合には東京・中部・関西エリアで予備率3%を下回り、関西エリアでは供給力が最大需要電力に満たないと確認結果概要でも報告されています。
出典:2021~2030年度を対象とした電源入札等の検討開始の要否について以下、出典は同じ
懸念されているのは、2021年度の冬季です。東京電力管轄内のみですが、予備率がマイナスになると予想され、厳冬の想定される1月~2月に向けて入札での追加供給力の確保を検討しています。
2022年の1月~2月は、火力発電所の休廃止などの影響で、東京電力管轄内で電力不足が生じる見込みです。それにより、来冬の予備率は最低限必要となる3%を大きく下回ると予想されています。非常に危機的な状況であることがわかるでしょう。
今夏においては、無理のない範囲での節電・省エネが呼びかけられましたが、冬はそれだけではカバーしきれないと予想されています。日照時間や天候の関係から太陽光発電の発電量に大きな差があるため、冬場の発電量は夏場と比較して約10%ほど減少してしまいます。
4月末の時点では、今後の対応に関する論点について、電源入札などの検討開始要否として「調整力公募または電源入札などに向けた検討、および実施に向けた準備を開始するべきではないか」、想定される状況変化への対応として「H1需要に対する予備率が更に改善する可能性もある」「実施可否および実施する場合の募集量については、今後の状況変化も注視して判断すべき」という声があがりました。
今後の進め方や実施スケジュールは、以下のとおりです。
5月14日の閣議後記者会見にて、梶山経済産業大臣は今夏の電力需給が全国的にここ数年でもっとも厳しくなる見通しであることを述べ、発電・小売事業者には供給力確保を働きかけ、需要家への協力要請、需給状況に関するタイムリーな情報提供などの事項について、早急に対策をまとめるよう指示を行ったという発言をしました。
2022年1月~2月の電力供給は、今秋に改めて検証されます。どのような方針になるのか、要請が出るのか、今後も注目しておきましょう。
2021年度冬の需要対策
6月15日の第36回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会では、今冬に向けた供給力確保策についての議論が行われました。
出典:2021年度冬季に向けた供給力確保策について|資源エネルギー庁以下、この章の出典はすべて同じ
前回5月25日に行われた第35回小委員会での主な議論内容は、2021年度冬季の電力需給見通しを踏まえた不足している供給力の確保策の基本的方向性についてでした。
追加的な供給力確保策の実施について、「①発電所の補修点検時期の更なる調整」「②現時点で供給力にカウントされていない自家発等の精査及び供給要請」「③休止中の発電所の稼働要請」の3つの追加的な供給力確保策を掲げます。
これらの策のなかには、費用・効果ともに大きい一方、時間を要するものもあります。次回の本小委員会にて議論をさらに深め、実施するか否かが決められます。
東京電力管内における2021年度1月~2月の50万kWの供給力不足分については、送配電事業者が調整力公募という形での調整が決定しています。
経済産業省は、4月から長期計画停止している姉崎火力発電所や供給力としてカウントされていない自家発電設備などの活用を、調整力公募による調達候補の案としてあげています。また、デマンドレスポンス(DR)に応じる企業の受け入れも決まりました。
調整力公募の具体的要件は意見募集手続きを経て決定しますが、今回は半年後の需給ひっ迫の可能性に備えた緊急の措置です。そのため、通常より1カ月短い期間で行うことが決まっています。
一般送配電事業者が確保した電源等は、スポット市場等に入札し、小売事業者が公平にアクセスできるようにしておくべきという方針になりました。
また、顕在化している供給力不足の主な要因は、電気事業法上、自らの需要に応じた供給力を確保する義務を負う小売事業者において、現時点において必ずしも十分な供給力を確保できないことであり、一送が回収できない費用は託送料金の改定により小売事業者から回収する方向で検討することとされました。
電力市場の状況
電力市場の状況を見ていきましょう。
電力自由化の状況
4月28日、第34回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会が行われました。
出典:電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について以下、この章の出典は記載がない場合すべて同じ
2020年12月の時点では全販売電力量に占める新電力のシェアは約20.0%、家庭等を含む低圧分野のシェアは約20.9%であり、推移を見ると全体的に数字が伸びているのがよくわかります。
旧一般電気事業者およびその100%子会社の域外進出も2020年12月時点で合計約4.2%となっており、特に高圧分野のシェアが大きく伸びています。
小売電気事業者の登録数も年々増加し続けていて、2021年3月末時点では713者にのぼります。
電源構成の推移と発電における大手10社(旧一般電気事業者の発電部門とJERA)のシェアの推移について公表されました。
表からもわかるように、全発電電力量に占める大手10社のシェアは、2019年度時点で約59%と6割を切る結果となりました。2010年の72%から見ると、発電割合も徐々に変化していることが見て取れます。
設備容量の推移も公表されました。表の黄色の部分が新エネルギーであり、2019年は21.1%まで増加しています。
一方で、薄オレンジの石油ほか、薄紫の原子力は数字を徐々に減らしています。これは、石油火力の廃止や一部原子力の廃炉が進んでいる結果と言えるでしょう。設備の担い手は、ほとんどが大手電気事業者です。各設備がどのように変化しているのか、注視する必要がありそうです。
再生可能エネルギー導入状況の国際比較も見てみましょう。
日本の再エネ導入容量は世界第6位、うち太陽光発電容量は世界第3位となっています。水力発電を除く発電電力量の国際比較は、2012年の309億kWhから2018年の963億kWhと、3.1倍に増やしています。世界的に見てもトップクラスの増加スピードと言えるでしょう。
スポット市場価格の推移については、2016年4月から現在までの取引価格の推移となります。2020年度の卸電力取引所における取引価格は平均11.2円/kWhとなっています。なお、2021年度(4・5・6月)の平均価格は6.6円/kWhです。
取引価格の推移を見てみても、2020年12月下旬から2021年1月上旬には取引価格の高騰が起きましたが、このときの数字がいかに異常なものであったかが見て取れます。
電力需要の状況
令和3年2・3月分の電力取引の状況が公表されました。
出典:電力取引の状況(令和3年3月分:電力取引報)よりENECHANGE作成
令和3年2月分の新電力販売電力量シェアは、前年度と比較すると、電灯は+4.1、高圧は+2.7、特高は+3.4、合計は+3.6という結果になりました。販売電力量全体に占めるシェアは合計では約19.8%となり、季節や時期を考慮すればもう少しシェアが伸びることも予想できましたが、実際のところは以前とほとんど変わりがありません。
令和3年3月分は、電灯は+3.5、高圧は+3.5、特高は+3.3、合計は+3.4という結果になりました。低圧・特高はやや数字が落ち気味ですが、高圧はやや戻しつつあります。
大手電力の決算状況
事業者名 | 販売電力量 小売 | 卸等込み | 売上高 | 経常利益 | 売上 | 利益 |
---|---|---|---|---|---|---|
北海道電力 | △4.3(電灯△2.9 高特△5.7) | △0.1 | △1.0 | + 26.1 | 減収 | 増益 |
東北電力 | △1.4(電灯+1.3 電力△2.7) | △2.4 | +1.8 | △32.5 | 増収 | 減益 |
東京電力 | △8.0(電灯△2.3 電力△10.5) | △5.7 | △6.0 | △28.1 | 減収 | 減益 |
中部電力 | △5.6(低圧△2.2 高特△7.0) | ? | △4.3 | +0.2 | 減収 | 増益 |
北陸電力 | +3.5 (電灯+4.4 電力+3.2) | +6.2 | +1.8 | △ 46.8 | 増収 | 減益 |
関西電力 | △9.4(電灯△2.3 電力△12.6) | △7.6 | △2.9 | △27.3 | 減収 | 減益 |
中国電力 | △7.1(電灯+0.4 電力△10.9) | △4.9 | △3.0 | △24.5 | 減収 | 減益 |
四国電力 | △1.8(電灯+0.5 電力△3.2) | △6.8 | △1.9 | △81.4 | 減収 | 減益 |
九州電力 | +2.7(電灯+0.9 電力+3.6) | +6.3 | +5.9 | +39.0 | 増収 | 増益 |
沖縄電力 | △2.5(電灯+1.3 電力△5.0) | ---- | △6.7 | +21.7 | 減収 | 増益 |
出典:各社プレスリリースに基づきENECHANGEが作成
2020年度の連結決算を見てみると、新型コロナウイルス感染症拡大や冬季の電力需給ひっ迫など、さまざまな事象が起こりましたが、北海道・中部・九州・沖縄電力の計4社が経常損益での増益を確保しています。
21年度も引き続き新型コロナウイルス感染症拡大や夏季・冬季の電力需給ひっ迫が予想されています。そのため、どの電力会社も経営的に厳しい状況が続き、その多くが減益を見込んでいます。
エネルギー供給強靭化法施行に向けた検討
エネルギー供給強靭化法施行関に向けた検討についても見ていきましょう。
平時の電力データ活用
5月25日には、総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会が行われました。
出典:次世代スマートメーターと差分計量等の検討について以下、この章の出典は記載がない場合すべて同じ
2024年には、順次次世代スマートメーターへの交換が開始される予定です。それに向け、昨年度には次世代スマートメーター制度検討会が開催され、今年2月には低圧スマートメーターの標準機能についての取りまとめが行われました。
次世代スマートメーターの貢献が期待される主な機能として、停電を検知した際に即座に警報を送る「Last Gasp機能」や、遠隔で計量器(低圧)の電流値上限を変更することで設定値以上の利用を制限する「遠隔アンペア制御機能」の搭載など、6つの標準機能があげられています。
今年度の「メーターシステムの標準機能」に関する検討事項については、粒度の高いものから順にさまざまな議論が行われました。これを受け、来年度における計量データの取り扱いについての議論も進み、2022年度から2024年度の検討スケジュールも公表されています。
「メーターシステムのセキュリティ」の検討事項については、次世代スマートメーターセキュリティ検討ワーキンググループを設置し、2021年5月より議論が開始されました。今後どのような議論になるのか、注目しておきましょう。
電気計量制度に関するQ&Aは随時アップデートすることとされ、随時追加が行われてきましたが、今回差分計量の検討結果や、次世代スマートメーター制度検討会における計量法関連の整理等を踏まえ、Q&Aを改定されることとなりました。
カーボン・ニュートラル
4月28日の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第42回会合)は、前回に引き続き2回目となりますが、次期エネルギー基本計画への検討に着手しました。
出典:2050年カーボンニュートラルを見据えた2030年に向けたエネルギー政策の在り方以下、出典は同じ
菅義偉内閣総理大臣の発言によって、2050年カーボンニュートラルや2030年の新たな野心的な排出削減目標が示されましたが、これを目指し、達成していくためには更なるエネルギー政策を考える必要があります。
新たな削減目標に向けた検討状況は以下のとおりです。
46%の目標値を達成するためには、従来の積み上げ方ではなく、一定程度以上のイノベーションの観点が必要になるとの有識者からの主張もありました。
具体的には、非化石電源や省エネ量の積み増しが必要不可欠です。安全最優先での原子力再稼働のほか、更なる省エネや再生可能エネルギーの導入、水素・アンモニアの活用による火力の脱炭素化などがこれまで検討されてきました。どのような積み上げ方をすべきなのかが特に問題視されていますが、思い切った取り組みが必要であると読み取れるでしょう。
5月13日には、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第43回会合)が行われ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたシナリオ分析の結果が共有されました。
出典:2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討(事務局提出資料)以下、出典は同じ
シナリオ分析の目的としては、2050年カーボンニュートラル実現に向けたさまざまな課題、制約を明確にしつつ、政策課題や対応の検討をし、目指すべき方向性を明らかにするとしています。
資料内では、分析結果の数字だけではなく、数字には表れない想定、前提条件と合わせた評価・検討が必要だとも述べています。
関係団体からのヒアリングやこれまでの政府方針などを総合的に踏まえて設定した参考値の水準の導入に向けた、乗り越えるべきさまざまな課題・制約があります。それぞれの現状、参考値を実現するための課題・取り組みを再確認しながら、シナリオ分析が進められています。
地球環境産業技術研究機構(RITE)モデルについては、以下の通りです。
地球環境産業技術研究機構(RITE)は、2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析(中間報告)を公開しました。
出典:2050年カーボンニュートラルのシナリオ分析(中間報告)|(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
2050年カーボンニュートラル社会に達成に向けた電源構成の参考値として再エネ54%、原子力10%、水素アンモニア13%、CCUS23%があげられていますがこの水準を達成することは容易ではありません。
電力コストも現状の2倍程度になる可能性があると指摘されています。そのため、大幅なコストの低減のほか、さまざまな技術の実装が必要となりそうです。
電力中央研究所は、「2030年温室効果ガス46%削減目標の達成は可能か?」という資料を公開しました。
出典:2030年温室効果ガス46%削減目標の達成は可能か?|電力中央研究所
電力中央研究所は、「46%削減」の目標について、実現は困難であるという研究結果を発表しています。
政府審議会で議論した、鉄鋼等、省エネ、太陽光発電(PV)の3項目を見直しを考慮しましたが、実現のためには更に0.81億t-CO2削減が必要となります。省エネとPVについて議論されましたが、それでも困難であるという結論に至っています。
また、脱炭素化を進めなければならないのは日本だけではありません。世界各国がそれぞれの目標を掲げていますが、2030年の目標では、アメリカの「2005年比で50%~52%減」、中国の「石炭消費量を徐々に減少させていく」の2カ国の目標に特に注目をしておくべきでしょう。
11月には、イギリスでCOP26が開催され、パリ協定の達成についての議論が行われる予定です。達成に向け、議論がどのように進んでいくのか、また具体的な対策がされるのでしょうか。見ておきたいところです。
非FIT非化石市場の制度設計
6月3日には、第33回総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会にて、非FIT非化石市場の制度設計が話し合われました。
出典:FIT非化石証書のトラッキング化について|資源エネルギー庁以下、出典は同じ
2050年のカーボン・ニュートラル社会の実現に向けた取り組みにおいて、FIT非化石証書にトラッキング情報を付与することは、環境価値の取引量の拡大につながると期待されています。
FIT非化石証書へのトラッキング情報の付与については、「FIT発電事業者の同意をあらかじめ得ることが条件となっており、トラッキング情報が付与された証書の割合は、全体の1~2%に留まっている。このため、FIT電気の持つ環境価値については、原則、発電事業者の同意を経ずにトラッキング情報を証書に付与する方向で検討を進めていくこととしたい。」としています。
発電設備の出力が20kW未満の太陽光発電設備にかかるFIT非化石証書へのトラッキング情報の付与にあたり、発電設備名、設置者、設備の所在地などの情報は個人の特定に繋がります。個人情報保護の観点からも、これらの情報を属性情報から削除する方針で議論が進められました。
6月14日、第52回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会が行われました。本年度は2021年8月から高度化法義務達成市場の取引が開始されます。そのため、前回の議論であげられた意見を参考にしつつ、高度化法義務達成市場の詳細が決定しました。
高度化法義務達成市場における最低・最高価格の具体的な水準、2021年度の中間目標値、市場監視を含めた透明性の確保など、個別の論点についての議論がありました。
非FIT非化石証書の外部調達比率は5%設定、最低・最高価格については1kWh時あたり0.6円・1.3円に決定しました。
なお、取引内容の透明性や、価格形成の妥当定確保のため、売り手の取引行動について市場および相対取引において監視が必要ではないかとし、電力・ガス取引監視等委員会による市場監視を年一回のペースで進めることも決定しています。
おわりに
2021年5月・6月の電力業界の動向を、まとめて木村氏に聞きました。さらに詳しく知りたい方は、紹介した資料を確認してみてください。
この記事を書いた人