ガス自由化の託送料金を減額して認可、それでも新規参入に高い壁?【ガス自由化コラム】

ガス自由化の託送料金を減額して認可、それでも新規参入に高い壁?【ガス自由化コラム】
ガス自由化

2016年12月、ガス自由化にむけて大手都市ガス会社の託送料金の認可がおりました。この託送料金、ガス会社だけに関係あるものではありません。最終的に私たちのガス代にも影響するものでもあるんです。ガス自由化まであと少し、都市ガスの託送料金について考えてみましょう。

2017年4月にスタートするガス自由化を前に、経済産業省は新規参入の事業者が大手都市ガス会社に払うガス導管の使用料(託送料金)を認可しました。東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社は申請時点より1立方メートル当たりの平均単価を0.35~1.80円圧縮しています。経産省ガス市場整備室は「厳密に中身を審査し、現時点で適正な額に是正した」としていますが、電力会社などからは「電力以上に託送料金が高く、参入障壁になっている」と指摘する声が出ています。

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東京地区の託送料金平均単価は20.64円

経産省によると、2016年7月に大手3社が認可申請した1立方メートル当たりの託送料金平均単価は、下記のようになっていました。

2016年7月に申請した託送料金
東京ガス(東京地区など)
21円89銭
大阪ガス
22円17銭
東邦ガス
19円79銭

経産省は電力・ガス取引監視等委員会の審議を経て、最大限の経営効率化を前提に原価を算定、修正を指示しました。大手3社の申請料金は高すぎるというわけで、各社が指示に従って再申請してきた託送料金を認可しています。その結果、各社の託送料金はこちらです。

2016年12月に認可がおりた託送料金
東京ガス(東京地区など)
20円64銭
大阪ガス
21円81銭
東邦ガス
19円15銭

東部ガスの秋田地区、福島・茨城地区については、申請時点で不明だった卸売業者などからガスを購入した際の託送料金が新たに判明したため、これを加えて申請料金より0.70~3.10円増やすよう指示しています。

認可された一一般家庭向けのガス託送料金

事業者地区1立方メートルあたりの単位申請時からの増減率
東京ガス東京地区20円64銭▲1.25%
群馬地区34円37銭▲1.53%
四街道A12地区74円82銭▲1.80%
東邦ガス19円15銭▲0.64%
大阪ガス21円81銭▲0.35%
東部ガス秋田地区50円23銭3.10%
福島・茨城地区25円81銭0.70%
西部ガス30円33銭▲0.61%

出典:経済産業省資料「託送供給約款認可申請に係る審査について」から筆者作成
▲はマイナスを示しています。

託送料金、私たち消費者への影響は?

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託送料金はガス小売事業者が大手ガス会社の導管を使ってガス供給する際に支払う料金で、ガス料金に上乗せされて消費者が負担します。

認可された料金の実施は4月1日からですが、消費者は毎月、どれだけを託送料金に出費するようになるのでしょうか。愛知、岐阜、三重の東海3県を拠点とする東邦ガス広報部は「月間使用量が31立方メートルの標準家庭だと、1カ月のガス料金はおおむね5,400円。これに含まれる託送料金は約2,000円になる」と説明しています。

経産省は原価圧縮と11%の経営効率化を要求

託送料金は経産省令に基づき、各社が需要想定をもとに営業費用や減価償却費、法人税などを積み上げて原価を計算、はじき出しました。これが妥当かどうか、経産省が査定したわけです。

経産省の査定は需要想定や経営効率化、需給調整費などを踏まえ、進められました。その結果、東京ガスと東邦ガスに対しては、二重導管規制の緩和による需要量の減少や、ガスメーター修繕に関する取り換え数量、需給調査費の見積額を過大として減額を求めました。
大阪ガスに対しては他燃料への転換や転居による需要減が大きすぎるとしています。さらに、各社へ経産省が実現可能と推計した11%の経営効率化も要求しました。
東京ガスからは申請段階でコージェネレーションシステムなどガス導管を効率的に利用する顧客向けに割引料金を設定する計画が申請されましたが、これは認めませんでした。

ガス導管の50%以上を大手3社が所有

都市ガス小売全面自由化では、一般家庭への販売がこれまでの地域独占から自由競争に変わります。料金も各事業者がそれぞれの判断で決めます。
経産省のまとめによると、新たにガス小売事業者に登録したのは、2017年2月7日自時点で10社。このうち、関西電力、東京電力エナジーパートナー、中部電力、九州電力の大手電力4社だけが、一般家庭へのガス供給参入を予定しています。

登録ガス小売事業者一覧(2017年2月7日時点)

企業名所在地供給予定地区一般家庭への販売
関西電力大阪市近畿予定あり
東京電力エナジーパートナー東京都関東
中部電力名古屋市中部
九州電力福岡市九州
国際石油開発帝石東京都関東・北陸予定なし
東北天然ガス仙台市東北
日本ファシリティ・ソリューションズ東京都関東
熊本みらいエル・エヌ・ジー熊本県八代市九州
筑後ガス圧送福岡県久留米市九州
三愛石油東京都関東・関西・中国・九州

出典:経済産業省「ガス小売事業者の登録状況」

一般家庭を中心とした小口の都市ガス利用者は全国で2,900万件以上あるとされます。市場規模は2兆4,000億円。家庭向け電力市場7兆5,000億円のざっと3分の1に当たります。これまで各地域で都市ガスを販売してきた一般ガス事業者は、宮城県仙台市や滋賀県大津市など地方自治体を含め、全国で200社を上回ります。しかし、全体の販売量の約65%を大手3社が占め、ガス導管も50%以上が大手3社の所有です。いわば大手3社の寡占状態といっていい状況で、3社の託送料金次第で新規参入事業者のガス料金が左右されるわけです。

ガス料金全体の4~5割を占める託送料金

電力業界などからは大手3社の託送料金を高すぎると批判する声が上がっています。経産省の査定で減額されましたが、それでも大阪ガスの託送料金は標準家庭の小売料金のうち50.3%を占めています。東京ガス(東京地区など)は44.5%、東邦ガスも40.2%に達しました。
電力の場合も家庭向け託送料金の比率が40%を超えた地域があり、都市ガスだけが突出しているといえませんが、これでは新規参入事業者が料金を安く設定する余地が小さくなってしまいます。

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申請段階で東京ガスは現行より高い託送料金を出してきました。電力・ガス取引監視等委員会の料金審査専門会合(座長・安念潤司中央大法科大学院教授)では、辰巳菊子専門委員(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問)が「最大限効率化という表現が何度も出てきているのに、どうして下がらないのか」と疑問の声を上げました。

この会合にオブザーバーとして出席した東京電力エナジーパートナーの佐藤美智夫常務も「このままでは新規参入が難しい」との意見を述べています。託送料金まで障壁になれば、ますます新規参入が困難になってしまうのです。

新規参入を呼び込める規制緩和が必要

ガス自由化最大のメリットは電力自由化と同様に、異業種からさまざまな新規参入事業者が生まれ、競争することにあります。その結果、価格が安くなったり、良いサービスを受けられたりするメリットを消費者が受けられます。しかし、全国津々浦々に電線網が整備済みで、卸売市場も都市ガスに比べ充実している電力に比べ、ガスは大都市圏と一部の地方都市にしか整備されていません。幹線導管の総延長はざっと5,000キロしかないのです。

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しかも、都市ガス事業への新規参入には、設備の保安要員確保などにコストがかかるうえ、大量の天然ガスを安定確保しなければなりません。一般家庭への販売は大口の工場などと異なり、それほどうまみがないといわれます。このため、電力に比べると参入障壁が高く、当面は電力会社だけが参入するガス自由化となりそうなのです。

経産省ガス市場整備室は「異業種から本格参入が相次ぐのはガス導管などが整備されてから」とみており、「その時点までに市場整備を進めておきたい」としています。しかし、これまでの市場整備では、新規参入事業者のメリットになると見える点はそれほど多くありません。
当面は現状のままでガス自由化をスタートせざるを得ないとしても、経産省は今後どこかの時点で、新規参入を呼び込むような規制緩和を真剣に考える必要がありそうです。

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高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
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