ガス自由化に向けて、関西電力の都市ガス戦略を振り返る
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2017年4月に始まるガス全面自由化に向け、いち早く動き出したのが関西電力です。2016年8月1日、他社に先駆け、経済産業大臣にガス小売り事業の登録を申請。2016年9月27日、第1号事業者として登録されました。電気とガスのセット販売で、事業拡大を目指す関西電力。大阪ガスの都市ガス供給エリアである6府県を対象に、2017年度に20万件の顧客獲得を目指す考えです。積極的な姿勢を示す関西電力のガス戦略をみていきましょう。
関西電力管内では約5%が新電力に切り替え
ガス、電力ともに段階的に進められてきた自由化。すでに自由化されている大口分野に加え、2016年4月からは家庭向けの電力小売り自由化もスタートし、関西電力 vs.大阪ガスの戦いも激しさを増しています。電気事業に関して言えば、関西電力エリアでの切り替え申請件数は51万7千件(2017年1月13日時点)に達しました。約5%が新電力に切り替えたことになります。切り替え先の筆頭はやはり大阪ガス。大阪ガスが2017年1月4日時点で25万件以上の電力供給をしていることを考えると、切り替え申請を行った需要家のほぼ半数が大阪ガスに流れていることがわかります。省エネルギーや節電の浸透により、家庭部門の電力需要が減少傾向にある中で、さらに顧客を奪われているという厳しい状況に置かれた関西電力。2017年4月に控えるガス自由化は「電気とガスのセット販売により、事業を拡大するチャンス」。電力会社の中でも、大口分野でのガス事業に積極的に取り組んできた関西電力だけに、ガス自由化に対する意気込みの高さもうかがえます。
「関電ガス」初年度20万件目標
関西電力が2017年4月から販売を開始するのは「関電ガス」です。大阪ガスの都市ガス供給エリアである、大阪府、京都府、奈良県、滋賀県、兵庫県、和歌山県の6府県79市33町(一部提供できないエリアあり)を対象に、家庭向けの託送販売を始める計画です。大阪ガスの業務用、家庭用の契約件数は約730万件。関西電力では初年度に20万件を獲得することを目標として掲げました。両社のガス料金プランも発表され、すでに火花が散っていますよね。
電気+ガス+αの総合営業でガス販売量を拡大
では、どのようにガス事業を展開するのでしょうか。関西電力の戦略をみていきましょう。関西電力では、2016年4月に関西電力グループ中期経営計画を発表しました。10年後の将来ビジョンに向け、今後3カ年で取り組む行動計画を示したものです。ガス事業に関しては、総合エネルギー事業の競争力強化に向けた重点施策の1つに位置づけられ、積極展開する考えが明記されました。具体的には、電気とガス、グループサービスを組み合わせた総合営業の展開、ガス器具取扱店との連携、ガス託送インフラ整備、ガス販売業務に関する要員の育成など営業、販売、事業基盤の整備を加速。ガス販売量を現状の72万トンから10年後には2倍以上となる170万トンに拡大する考えを示しています。
ガス大口供給、販売件数は新規事業者トップ
すでにガス販売量が72万トンあることからもわかるように、関西電力も他電力と同様、先行して自由化された大口分野を対象にガス販売を展開してきたという実績があります。2000年にタンクローリーによる液化天然ガス(LNG)の販売を開始。2002年には託送供給、2005年度には自営導管によるガス販売と、ガス事業を拡大してきました。2015年度の実績でみると、ガス販売量(LNG換算)は東京ガス(1,219万トン)、大阪ガス(636万トン)、東邦ガス(309万トン)に次ぐ規模です。新規事業者によるLNGの大口供給の販売件数を見た場合では、関西電力は65件と東京電力(24件)、中部電力(20件)を引き離しトップに位置しています。燃料となるLNGの調達量(2014年度)は944万トンと国内4位の規模ではありますが、日本全体のLNG調達量の約1割に相当しているのです。
LNG調達では東京ガスと連携
ガス自由化というエネルギー事業における転換点に備え、関西電力は他企業とのアライアンスを拡大してきています。2016年4月には、LNG調達などに関し、東京ガスとの戦略的提携を発表しました。東京電力と中部電力の提携のように、火力発電・燃料事業を本体から切り出した形での統合ではありませんが、LNG調達とLNG火力発電の運転・保守にかかる技術連携の両面で連携していくとしています。これまでも両社はLNG調達に関して協力関係にありましたが、今回の戦略的提携では、需給に合わせ相互に融通できる体制をつくることが盛り込まれているんです。
ガス会社の需要は冬に高くなる傾向にありますが、電力需要でピークが出るのは基本的に夏。ガス会社と電力会社は、実は相互補完がうまくできる関係にあります。相互融通することにより、調達コストの低減にもつながると考えられます。またLNG火力発電の運転・保守に関しては、首都圏での電力販売拡大に向けた施策といえるでしょう。
ガス販売・保安へ5社と業務提携
一方、KDDI、中央電力、ケイ・オプティコムとは販売面で提携しました。通信とのセット販売が想定されるのは、KDDIとケイ・オプティコムです。KDDIからは、2017年1月26日に「関電ガス なっトクプラン for au」の発表がされました。2017年2月1日から、関電ガスの販売代理店として関西エリアで都市ガスの販売を開始するということです。auでんきとのセット割もあるので、関西エリアでauでんきに切り替えたご家庭にとっては、嬉しいニュースなのではないでしょうか?
ケイ・オプティコムは関西電力のグループ会社で、FTTH(家庭向け光ファイバー通信)サービスを展開していますが、こちらからも「関電ガス(eo割)」が発表されました。もちろん、eo電気とのセット割もあります。中央電力はマンション一括受電サービスを展開している中央電力も、自社で電気を供給しているマンションに対して関電ガスの販売促進活動をおこなっていくと発表されています。
競争力、原子力再稼働が左右
大阪ガスと対抗するにあたり、関西電力が注力するのは電気、ガス、通信などを含めたセット販売です。ガス料金で大きな差を出せなくても、電気料金で優位性を保てれば、全体としては安く売ることができます。ただ、肝心の電気料金は引き下げが難しい状況になっています。東日本大震災後、関西電力は2度の値上げを行いました。経済産業省・資源エネルギー庁がまとめた「電気料金の水準」によると、標準家庭における電気料金(2015年12月)は、関西電力が8,058円と10電力でトップです。離島をかかえ、燃料費がかさむことから、電気料金が高いとされていた沖縄電力(8,033円)をも上回っています。原子力発電所の再稼働が順調に進んでいれば、関西電力は値下げをする意向を示していました。しかし、原子力規制委員会の審査が終わった高浜原子力発電所3、4号機は、大津地裁が運転停止の仮処分決定を出したことから、再稼働の行方はみえなくなっています。同社の原子力発電所では、高浜発電所1,2号機、美浜発電所3号機が40年を超える運転延長を認められていますが、こちらも安全対策のための追加工事が必要なことから、再稼働までには時間を要します。電気料金の値下げのタイミングは見えにくく、セット販売の優位性を打ち出しにくい状況にあるといえます。
関西電力のガス戦略を振り返って
事業計画などを改めて振り返ってみると、関西電力のガス事業に対する意気込みや、状況を俯瞰してみることができますね。ガス自由化開始まであと2カ月、事前申し込みでどのくらいの顧客を獲得できるのか気になります。私たちにとって電気とガスは、欠かすことのできないインフラです。自由化によってどんな影響がでるのか、関西在住者でなくても、動向をみていきたいものです。
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