ガス自由化直前!電力10社のガス戦略をまとめました
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都市ガス小売り全面自由化まで1カ月を切りました。大手電力会社10社のうち6社が小売り事業者として登録。家庭向けの都市ガス販売については、関西電力、東京電力エナジーパートナー、中部電力、九州電力の4社が4月以降の参入を予定しています。昨年4月の電力小売り全面自由化に続く形で、家庭向けを含めた小売り市場が開放されるガス事業。電力会社にとっては、この1年で奪われた顧客を奪還する場でもあります。あらためて各社の戦略をみていきたいと思います。
東京、中部、関西、九州が参入 / 対都市ガスの局地戦
会社名 | 参入有無 | ブランド (プラン)名 | 提供エリア | 提供エリアの 顧客数※ | 提供時期 | 目標値 | 提携先 (販売) | 提携先 (保安) |
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登録済み | 関西電力 | ○ | 関電ガス | 大阪ガス提供エリア(播磨サテライトエリア除く) | 約730万件 | 4月 | 初年度20万件超 | KDDI/東洋テック/中央電力/ケイ・オプティコムなど | 岩谷産業/関電サービス |
東京電力EP | ○ | ―― | 東京ガス提供エリア中心 | 約1045万件 | 7月 | 初年度15万件相当(うちニチガス11万件) | ニチガス | ニチガス | |
中部電力 | ○ | カテエネガス | 東邦ガス供給エリア(愛知・岐阜・三重) | 約230万件 | 4月 | 2021年度末までに20万口 | トーエネック/中部テレコミュニケーションなど17社 | 岩谷産業/ガステックサービス/大垣ガス/中部精機 | |
九州電力 | ○ | きゅうでんガス | 西部ガス供給エリア(福岡・北九州) | 約84万件 | 4月 | 未公表 | 検討中 | ||
四国電力 | × | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | |
東北電力 | × | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | |
未申請 | 北海道電力 | 参入意向? | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― |
北陸電力 | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | |
中国電力 | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | |
沖縄電力 | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― | ―― |
※メーター取付件数。九州以外は、各都市ガス会社のエリア全体の家庭用メーター取付件数)
これまでにガス小売り事業者として経済産業省に登録されたのは、申請順に関西電力、東京電力エナジーパートナー(東京電力EP)、中部電力、九州電力、四国電力、東北電力の6社です。四国電力、東北電力に関しては現時点で小売り事業に参入する予定はないとしています。
ガス事業、強みと課題は?
ガス事業を展開する上で、大手電力会社がもつ強みは、原料となる液化天然ガス(LNG)の調達力です。
一方で課題も多く存在します。家庭向けに都市ガスを送る際には、既存の都市ガス事業者の導管を借りる形になります。都市ガスの導管の敷設率は全国でわずか6%、全世帯に占める比率で見ると3分の2相当(※)です。このため、比較的導管の整備された都市ガス大手4社のエリアに限定される形になったといえます。
各社の獲得目標と、参入エリア
東京電力EPはニチガスとの連携により、東京ガスのエリアに参入。初年度で15万件の獲得を目標として掲げました。関西電力、中部電力についても、それぞれ大阪ガス、東邦ガスの供給エリア全域での事業展開を計画しています。関西電力の初年度目標は20万件。大阪ガスが昨年の電力小売り全面自由化で掲げた顧客獲得目標と同じ目標値を掲げるなど、対抗姿勢を強めています。中部電力は、2021年度末までの5年間で20万件としました。
一方で九州電力に関しては西部ガスの供給エリアのうち、福岡市、北九州市にエリアを限定しました。九州の都市ガス普及率をみると、もっとも高い福岡県でも4割に満たないなど、他社のエリアに比べ普及率が低いことから、この狭いエリアで熾烈な競争がなされることになります。
電力自由化との違い
昨年の電力小売り全面自由化との違いとしては、自社エリアを越えた形での販売は計画されていないという点が挙げられます。将来的に他社エリアで展開する意向は示している会社もありますが、現状では、自社エリア内での対都市ガス事業者との戦いが主流になるといえます。
関西エリアは値下げ競争、九州エリアは電気+ガスセットで優位性
「価格」、「保安」、「営業・販売」という3点について各社の動きをみていきましょう。
価格:3社がガス料金プランを発表
7月に参入予定の東京電力EPを除く、3社は4月からの販売を予定しており、すでにガス料金プランも公表されました。
はやくも価格競争の様相を呈しているのは、関西エリアです。先行して料金プランを発表した関西電力は、その後公表された大阪ガスの新料金プランが、自社のプランよりも安かったことを踏まえ、もう一段階の値下げを行いました。電気料金とのセット割の割引率を1ポイント高め、3%とするなどの対抗措置を講じ、安さをアピールしています。
中部電力では、東邦ガスと同様、使用するガス機器に合わせ3つのプランを設定し、いずれも東邦ガスより安い料金としました。関西電力、中部電力の料金プランを、それぞれのライバルである大阪ガス、東邦ガスの一般料金(現状の料金体系)と比較すると、ガス単体で見た場合、値下げ幅は以下のようになります。
- 関西電力の「なっトクプラン」は▲466.93円(月33平方メートル使用、原料費調整後で比較)
- 中部電力の「カテエネガスプラン1」は▲360.81円(月31平方メートル使用、原料費調整前で比較)
電気とガスのセット割引で見た場合でも、関西電力のほうが値下げ幅は大きく設定されており、関西地域の競争環境の厳しさがわかります。九州電力は、ガス単体での販売には乗り出さず、電気とガスのセットプランに特化する形で、西部ガスよりも安い料金としました。
全般的に見れば、各社とも大手都市ガス会社の新料金、一般料金よりも安く設定しています。ただ、ガスを多く使う家庭に関しては、都市ガスの料金プランの方が安くなる場合もあり、価格競争で劣勢のようにも見える都市ガス会社も、守るべきところは守っているといえそうです。
保安:LPガス事業者とタッグ、対都市ガス大手で足並みそろえる
より戦略的な関係を構築したのは、東京電力EPとニチガスです。保安だけでなく、ニチガスグループ、ニチガスが既存の顧客、4月以降に獲得する顧客に供給する都市ガスの全量を東京電力EPが卸供給することを決めました。これまでニチガスは東京ガスから卸供給を受けていたことから、東京電力EPがニチガスという大きな卸供給先を東京ガスから奪った形になります。また両社が有するガス販売に必要な機能やノウハウを活用するほか、ガス小売り事業に新規に参入する事業者に対し、ガス販売に必要となるこれらのプラットフォームを提供する事業の展開も計画されており、直接的、間接的に需要を取り込み、ガスの販売量の拡大していく戦略をとるものとみられます。
営業・販売:電気+ガス+αで囲い込み
原子力再稼働で競争環境変化も
各社の今後の競争環境を左右する要因として、注視されるのは原子力再稼働の行方です。関西電力では、原子力の再稼働が進んだ際には、電気料金の値下げを行うことを明言しています。現在は様子見の姿勢を貫いている大阪ガスがどのような対抗措置にでるかが、注視されます。
北海道電力、2018年以降に参入か
現時点でガス事業の登録申請をしていない4電力の中でも北海道電力の動きには注目が集まりそうです。というのも、電力小売り全面自由化により、北海道電力は2016年末時点で、全体の顧客数の4.68%相当が奪われており、東京、関西に次いで、厳しい状況にあるためです。同社は2016年度の経営計画の中で、ガス供給事業に関し、石狩湾新港発電所に建設中のLNGタンクなどが完成した後、早期に事業を開始できるよう検討を進めているとしています。1基目のタンクの完成予定が2018年8月であることから、ここがガス供給事業を開始する目安になるとみられます。
電力10社のガス戦略まとめ
2017年からスタートした、「ガス自由化」。
各社の新料金プランやサービスや事業戦略、ますます目が離せませんね。
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