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大津市がガス事業を民営化、全国初のコンセッション方式で大阪ガスなどへ【エネルギー自由化コラム】

ガス自由化ニュース

ガス自由化で都市ガスの小売競争が激化する中、安いガス料金で都市ガスを供給し続けるため、滋賀県大津市はガス事業をコンセッション方式で民営化することにしました。自治体の公営ガス経営維持の課題と取り組みについて、大津市を例に解説しています。

地方自治体が運営する公営ガスで全国2位の大手となる滋賀県大津市のガス事業がコンセッション方式で4月に民営化されることになり、大阪ガスなど3社の企業グループが運営会社となる「びわ湖ブルーエナジー」の株式の75%を取得しました。

大津市は株式の残り25%を持ち、引き続きガス導管を保有します。大津市と企業グループは現行料金の上限維持などを盛り込んだ運営権契約を交わしており、従来通り安い都市ガスが市民に供給される見通しです。

一般的な家庭向け料金、1%引き下げの方針

大津市企業局が入居する大津市役所新館。大津市のガス事業は4月から大阪ガスなどが資本参加する民間の「びわ湖ブルーエナジー」に引き継がれる(2016年12月、筆者撮影)
大津市企業局によると、びわ湖ブルーエナジーは大津市の全額出資で2018年11月に設立されました。資本金は1億円。
2039年度末までの20年間、大津市で都市ガス小売りや保安点検を担う公共施設等運営権(コンセッション)が設定されています。

事業民営化の優先交渉権者になっていた大阪ガス、JFEエンジニアリング、水道機工の3社でつくるコンソーシアムが2018年末に株式の75%を90億円で取得し、大津市と運営権契約を交わしました。

びわ湖ブルーエナジーは従業員約40人でスタートし、大阪ガス出身の深野裕一氏が社長に就任しました。民営化後も安くガスを提供するため、一般的な家庭向け料金を現状より約1%引き下げるとともに、使用量の多い家庭向けに約2%安くなるプラス割新料金を設定します。大阪ガスの電気とセットで契約すれば、さらに料金を3%引き下げる予定です。

ガス導管などの施設は従来通り大津市が保有

コンセッション方式は料金徴収を伴う公共施設などで、施設の所有権を国や自治体などの公的機関に残したまま、運営を民間事業者に任せる制度です。空港で相次いで導入されており、宮城県の仙台空港、香川県の高松空港、兵庫県の神戸空港などが該当しますが、公営ガスで実施例はありませんでした。

大津市はびわ湖ブルーエナジーの株式25%を保有するだけでなく、ガス導管など施設をこれまで通り所有します。導管の拡張、更新を担うほか、利用する市民の料金支払い方法や問い合わせ先にも変更はありません。

コンソーシアムと結んだ運営権契約には、現行料金の上限維持が盛り込まれました。民間の都合による値上げを防ぐ意図が込められています。越直美大津市長は記者会見で「導管保有者と株主の立場からガバナンスを効かす」と述べ、大阪ガスの本荘武宏社長も「市の重要インフラを担う責任がある。充実したサービスを提供したい」との考えを示しました。

仙台市に次ぐ全国の公営ガス第2位の大手

大津市の公営ガスは2016年度で大津市内約9万6,000戸に都市ガスを供給しています。公営ガスとしての事業規模は仙台市に続き、国内で2番目の大手。年間の売上高は110億円を超えています。

戦前にあった民間の近江瓦斯を引き継ぎ、1937年から都市ガス供給を始めました。京都市や大阪市のベッドタウンとして市域が広がるのに伴い、供給区域を拡大しています。基本料金は1カ月使用量0~20立方メートルで689円。大津市企業局は「西日本で最も安い」と胸を張っています。

2016年度の純利益は5億円余り。2014年度まで10億円以上の純利益を上げてきたのに比べ少なくなっていますが、全国公営ガスの2015年度平均純利益がざっと2億円ですから、経営も順調に進んでいるといえます。

大津市ガス事業の概要(2016年度)

行政区域内人口(人)342,154
供給戸数(戸)
96,429
普及率(%)70.3
年間販売量(立方メートル)169,184,959
導管総延長(メートル)1,279,015
ガス売上高(千円)11,016,104
総収益(千円)11,462,015
総費用(千円)10,960,455
純利益(千円)501,560
職員数(人)100

出典:大津市「水道・下水道・ガス事業年報」から筆者作成

ガス自由化を受け、公営で対応困難と判断

しかし、大津市内は京阪神とガス導管がつながっています。都市ガス小売りの全面自由化により、地域独占体制が廃止され、大阪ガスや関西電力などガス、電力大手がいつでも参入できるようになりました。京都市から10キロほどしか離れておらず、京都市で都市ガスを販売する新電力の参入も十分に予想できます。

大津市はガス自由化の1年前に当たる2015年から企業局内にガス自由化対策準備室を設け、自由化の影響をシミュレーションしてきました。その結果はあまり好ましいものではありませんでした。

民間事業者が電気とのセット販売や低価格で攻勢をかけてきても、市営事業ならガス以外の事業が制限され、料金変更にもいちいち市議会の承認が必要になります。対応が後手に回り、経営が悪化すれば、安いガス料金を維持できなくなりかねません。

大阪ガスと関西電力が水面下で激しい獲得競争?

民間に事業譲渡すれば、公営ガスならではの課題は解消できますが、民間事業者の都合で値上げされる可能性を否定できません。これではこれまで他の地域より安い料金で都市ガスを提供してきた努力が水泡に帰すことになります。

そこで、浮上してきたのが、大津市が施設を保有しながら、運営権を民間に委ねるコンセッション方式です。大津市企業局は「導管の整備など市の関与を残しつつ、民間の力を活用していきたい」と狙いを語りました。

料金の現状維持などを条件に事業者を募集したところ、大阪ガスと関西電力が提案書を提出してきました。学識経験者らで構成する審査委員会で大阪ガスを代表とするグループが選ばれましたが、大阪ガスと関西電力は電力、都市ガスの販売で激しく競い合っている間柄。水面下では激しい獲得競争があったとも伝えられています。

公営ガス民営化に民間事業者が熱い視線

経済産業省によると、全国に都市ガス事業者は200弱ありますが、うち公営ガスが24を占めます。ガス自由化後は群馬県富岡市が埼玉県草加市のLPガス(液化石油ガス)業者堀川産業、新潟県柏崎市が新潟市の北陸ガスへ公営ガス事業を譲渡しました。

公営ガス事業を関西電力など3社に譲渡する福井市役所。ガス自由化で公営維持は困難と判断した(筆者撮影)
福井県福井市は関西電力、北陸電力、敦賀ガスが設立した福井都市ガスと事業譲渡の仮契約を結びました。3月の市議会で可決されれば本契約に移行し、2020年4月に公営ガス事業を譲渡します。オール電化など他のエネルギーとの競合で2017年度末の契約件数が2万2,909件と1998年度末の3万2,765件から約1万件も減少したためです。
福井市企業局は「自由化で競争が激化する中、福井では都市ガス普及率の低下傾向が続く。公営での事業維持は限界に来た」としています。

事業譲渡した3市とも、自由化後の競争激化の中で経営の健全化に頭を痛めていました。他の公営ガスを抱える自治体も同様の悩みを抱えるところが大半で、今後民営化の検討を加速させるとみられています。民間ガス事業者による公営ガス争奪戦はさらに激しさを増しそうです。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
高田泰(政治ジャーナリスト)
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