発電と小売をつないで電力業界を活性化、卸売プラットフォーム「エネチェンジTrade」を始めます
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「多くの発電事業者が、発電した電力の売り先に困っている。発電事業者や小売電気事業者は市場の上下の中で見込んでいた収益を出せず苦しんでいます」。ーーこう指摘するのはエネチェンジを運営するENECHANGE株式会社の執行役員兼法人ビジネス事業部部長・千島亨太。
国内の人口減少や製造業の海外移転といった環境要因によって電力需要が減少傾向にあることに加え、電力自由化による競争激化などが収益に影響しているといいます。
「国内では作った電気が余りがちな状況で、すでに更新を諦めて閉鎖してしまった工場付属の発電所などもあります。解決に向けて発電・送配電・小売の各事業者による柔軟な連携を進める必要があります。しかし、互いの業務に関する理解不足や意識の違いなどがあり、強烈な縦割り構造で分断されてしまっているのが現状の課題です」(千島)。
中立的なプラットフォーマーであるENECHANGEが電力業界の知見を活かして課題を解決する新事業が「エネチェンジTrade」。電力の売り手(発電事業者)と買い手(小売事業者)の間を仲介・卸売買という形でつなぐことで、電力需給状況の安定化を図る電力トレーディング事業です。
日本卸電力取引所(JEPX)をはじめ、電力の流動性や調達の柔軟性を担保しようとする仕組みはあります。しかし、価格変動が激しいため大きく依存はできません。バランシンググループについても、資本関係がある企業間などの限定された範囲にとどまりがちです。「エネチェンジTrade」ではより安定的に電力を販売・調達できるオープンな仕組みを提供します。
大手の新電力での経験を活かして「エネチェンジTrade」の事業開発に取り組む千島にサービスの詳しい内容を紹介してもらいました。
発電・小売の“縦割り”による課題を解決して電力を柔軟に融通 電力トレーディングの重要性
発電・小売事業者が、電力を売り切れず余らせている現状が前提としてあります。これは人口減少や製造業の海外移転などによる電力需要の減少が影響していると思っています。
たとえば発電所側の話をすると、電力需要が減ったからといって発電量もその分だけ減らすというわけにはいきません。発電量を減らした場合、発電効率も落ちてしまい収支に悪影響を与えます。また、ガスや石炭といった発電の燃料についても「最低限これくらい買います」というラインが契約で決まっているので、なおさら一定量の発電を維持しなければならないのです。
これまでは旧一般電気事業者(旧一電)が電力を買い取ってくれていましたが、自由化してからは売り先の新電力や需要家を自分たちで探して営業しなくてはいけなくなりました。昨日まで技術色の強い仕事をしていた人たちが、急に小売事業者を相手に営業をしてもなかなかうまくいかないものです。
小売事業者からみて、発電事業者の印象とは
小売側の人たちからしても、発電側の人たちの仕事や仕組みをイメージできないのが実情でしょう。発電所を訪問したことがない電力会社の方も少なくありません。電力を作る人と送る人、売る人はそれぞれまったく違うといってもいい文化にいます。これでは同じ目線で話を合わせることは難しいでしょう。
発電側と小売側が直接やり取りして電力を売り買いするには、情報の非対称性が大きすぎます。そのうえ、電力の仕入れや販売といった情報は会社の根幹なので、おいそれと外部には出せません。会社間の関係性のしがらみもあるでしょう。そこをENECHANGEが中立的なプラットフォーマーとしてつなぐ余地があるはずだと考えています。
JEPXと「エネチェンジTrade」の違い 「安定的に経営したい電力会社の支援」実現へ
JEPXは小売事業者にとっての最後の調整弁として活用する分には素晴らしい仕組みだと思います。しかし気温の変化などによる価格の変動幅が大きく、「価格が1日で10倍になりました」といったときに発電側も小売側も収支が読めず事業計画を立てにくくなってしまいます。
電力トレーディングの契約では、調達期間が1カ月、3カ月、半年、1年といった比較的長期のスパンになります。契約期間中は価格が固定(燃調などは別)ですので、発電事業者にとっても小売事業者にとっても、先の見通しを立てやすくなるでしょう。
今まで株の売買で生活していた人の収入源に、給料での安定収入も加わったような印象と言えるかもしれません。実現したいことは、しっかりと安定的に経営したい電力会社を支援すること。そのために電力の過不足をお互いの妥協できるポイントでマッチングさせるビジネスをつくることです。
プラットフォーマーの強みで電力業界の発展に貢献
電力トレーディングの「エネチェンジTrade」によって、より長期的に安定した見通しに基づいて電力を売買できるようになるでしょう。
トレーディングというと金融的、投機的な響きがありますので、「電力トレーディング」という説明は誤解を招きそうな気もしています。しかし、決して電力の市場化を進めて利ザヤを抜くために派手に売り買いしたいわけではありません。電力の市場であって、ここは金融の市場とは違うという理解をしています。
2016年の電力自由化によって需要家が電力会社を選ぶ自由はある程度担保されたかもしれませんが、電力事業者側での「自由化」はまだまだこれからです。つまり発電事業者が売り先の小売事業者を効率的に探す、もしくは小売事業者が自分たちにマッチした電源を柔軟に調達できる、といったことが今は限定的で難しい状態です。これでは業界の今後の成長に悪影響が出かねません。
電力トレーディングはまさに今の電力業界にとって必要な仕組みで、中立的プラットフォーマーとしてのENECHANGEの強みを活かせる取り組みだと考えています。
大型発電所との契約の話も 「エネチェンジTrade」の今後の事業展開
電力トレーディング事業の今後の事業展開については、まだ計画段階ではありますが、ある大型発電所と卸仲介の契約をする話が進んでいます。他にも全国に10数カ所くらいは電力を卸してくれそうな事業者、発電所があります。
まず試験期間として、仲介業務によって全国の発電所や小売事業者のニーズを整理します。その後に売り手と買い手の双方との相対取引にまで踏み込む「卸売買」業務へ乗り出す考えです。(千島亨太)
「エネチェンジTrade」へのお問い合わせをお待ちしています
「エネチェンジTrade」はENECHANGEが電力の仲介・卸売売買を手がける電力トレーディングサービスです。
電力の売り手(発電事業者)と買い手(小売事業者)の間を仲介・卸売買という形でつなぐことで、より安定した電力需給を図ります。発電事業者さま、小売事業者さまからのお問い合わせをお待ちしております。
- 本件に関するお問い合わせ先(千島)
- trade@enechange.co.jp
- 03-6774-6607
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