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マンションで自由化された安い電気を使える「一括受電」とは?

マンションではもう自由化の恩恵が
電力自由化

2016年の電力小売り全面自由化に先駆けて、いくつかのマンションにおいて「電力アグリゲーター」という業者が「一括受電」という入居者向けの電力の供給を始めています。こうしたサービスを通じて、一部のマンションの入居者はすでに自由化された電気を安く使っているのです。どうしてそんなことが可能なのでしょうか?

今、いくつかのマンションにおいて「電力アグリゲーター」という業者が「一括受電」という仕組みを使って、入居者向けの電力の供給を始めています。こうしたサービスを通じて、一部のマンションの入居者はすでに自由化された電気を安く使っているのです。どうしてそんなことが可能なのでしょうか。

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電力アグリケーターのサービスがマンション電気代節約のカギを握る

電力の自由化が段階的に進むことよって、電力関連ビジネスが増えつつあります。最近目立ってきた電力アグリケーターと呼ばれるビジネスもそのひとつです。

電力アグリゲーターのサービスとは

「アグリケーター」という言葉には、「収穫する人」「集める人」などの意味があります。「電力アグリケーター」というのは、複数の契約者に節電・省エネや安い電力の供給をあっせんし、これによって節約された電気代の一部から手数料を取るサービス業者なのです。
「電力アグリゲーター」のサービスが利用できるマンションでは、この仕組みにより2016年の電力自由化に先んじて、一般家庭よりも安い電力を使うことができるんです。

マンション向けサービスの場合、アグリケーターはまず電力会社から電気をまとめ買いし、マンションの入居者それぞれに売電します。これを「マンション一括受電」と言います。まとめ買いで電力を安く買える上、入居者が節電することで割引になるサービスなどもあり、実質的に入居者の電気代は10~15%程度お安くなる、というわけです。最近のニュースから、その例をみてみましょう。

四国電力が電力供給サービス会社などと提携

四国電力は先ごろ、香川県の情報通信会社や電力供給サービス会社と業務提携したと発表しました。この業務提携は、電力供給サービス会社がいわゆるアグリケーターとなって、四国電力からマンション向けの電力を一括購入し、それを地域のマンションに供給します。また、マンションの電力消費を効率化・最適化するための業務を情報通信会社が行うことになります。電力の一括購入によって入居者の電気代は従来より5%以上お安くなるとされています。

これらのサービスは、ことし春頃にも実施される段取りです。情報通信会社や電力供給サービス会社は、各種のエネルギー管理・サービス業務を担当しますが、今後、節電分の買い取り業務も実施すると見られます。節電した入居者は、電気代をさらに安くすることができるのです。

「ライオンズマンション」は新築マンションで電力まとめ買い

マンション事業を展開する大京(東京都)は、今後分譲する「ライオンズマンション」で、MEMS(マンションエネルギーマネジメントサービス)を導入し、首都圏や関西エリアにおける新築マンションの電力の一括購入を実施することになりました。一括購入の対象は、総戸数50戸以上のマンションで、これらのマンションでは、電力消費の「見える化」はもちろん、その中でも「30分ごとの見える化」や、「デマンドレスポンスの働きかけ」(電力会社との情報のやり取り)など、独自のシステムを採用します。

「デマンドレスポンス」のサービスでは、夏、冬の電力需要のピーク時に、電力会社から入居者に電力消費の抑制を要請します。この際家電のスイッチを切るなどして、消費電力の抑制の要請に応じた入居者には、電気料金を割り引きという形でメリットがあります。アグリケーターとしては、オリックス電力(大京とオリックスが株主)がその役割を担います。大京では、これらのサービスの組み合わせにより、電気代を従来より15%程度お安くできると話しています。

電力自由化は2000年から段階的に始まっている

日本の電力自由化の経緯と現状

電力の自由化は、これまで、電力需要家の規模によって、2000年から段階的に進められてきました。電力の大口需要家である工場、大型スーパー、オフィス、ホテルなどは高圧電力の需要家であり、これらの需要家に対しての電力販売は、すでに自由化されています。
これにより、需要家は電力会社以外の新電力(PPS)と呼ばれる新しい電力事業者からも電力を買うことができるのです。

日本の電力自由化の詳しい経緯は日本の電力自由化、これまでの経緯と現状とは?で説明しています。

マンションの電力需要をまとめることで、すでに自由化され料金の安い高圧電力を購入できる

アグリゲーターが「一括受電」の仕組みでマンションの電気代をお安くできるのは、電力をまとめ買いすることですでに自由化されている「高圧電力」を使えることにミソがあります。

高圧電力とは、契約電力が50kW以上の需要家向けの電力です。一般の家庭やコンビニ、事業所などは、それ以下の低圧需要家です。新聞等で、電力自由化が話題になっているのは、一般家庭などの低圧需要家向け電力であり、こちらのほうは2016年から全面的に自由化される予定です。

マンションの各世帯はもちろん低圧需要家になりますが、アグリゲーターがマンション全体の電力消費をまとめることで、マンションを「ひとつの大きな需要家」ととらえた場合は、高圧需要家の扱いができます。これにより料金規制もなく、地域の電力会社以外から電気を買うこともできます。
一般に高圧電力は、低圧電力より30%程度安く購入できるため、電力アグリケーターとしては、入居者に安く電気を販売しても、差額から手数料を取ることでビジネスとして採算が取れるというわけです。

省エネ・節電を促すアグリケーター

アグリケータービジネスには、「高圧電力」を「一括受電」の枠組で供給する以外にもう一つの側面があります。電力利用者に省エネ・節電を促し、節電されて生じた電力の余裕を、まるで「発電した電気」のように買い取る、という新しいビジネスです。

エネルギー利用を管理するシステム、HEMSの導入

省エネ・節電をするためには、事業所や家庭におけるエネルギー利用の効率化・最適化を進める必要があります。そのために、現在、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)やMEMS(マンションエネルギーマネジメントシステム)と言った形で、家電製品など電気を使う製品すべてをリンクする形でのシステム化が求められています。
それにより、電気の消費量を「見える化」したり、また、誰もいない部屋の照明を自動的に消す、あるいは、エアコンの温度を一定の範囲に抑えるという電力利用の効率化・最適化が可能になります。MEMSによって、電力消費が効率化・最適化されたマンションはスマートマンションと呼ばれています。

消費者にも、電力会社にもメリットがある「節電」のコントロールビジネス

アグリゲーターのビジネスは電力消費の効率化・最適化のサービスを、電力会社やマンション事業者などに代わって行うビジネスです。電力利用者、つまり消費者にとっては、節電した分をアグリケーターが買い取ってくれるので、省エネをすればするほど家計にお得になります。電力会社にとっても、電力需要が平準化されるため、夏のピーク需要に備えた発電設備投資を抑えてコストの低減を図ることができるのです。アグリケータービジネスは、電力会社と利用者の双方にとって“一石二鳥”のビジネスといえます。

まとめ

一般家庭などの電力小売の全面自由化が実施されると、節電・省エネの要請が一段と高まることが予想されます。アグリケータービジネスのチャンスはさらに広がる見通しです。すでに、ベンチャー企業、機器メーカー、商社など、さまざまな業種の企業の参入が相次いでいますが、それらの企業による電力料金引き下げ競争も活発になると見られます。

廣瀬 鉄之介

廣瀬 鉄之介

エネルギー・環境ジャーナリスト
産経新聞社経済記者、編集委員として、経済・産業・エネルギー政策等の記事執筆を担当。退社後、経済産業省所管団体「原子力発電技術機構」及び「社会経済生産性本部」で原子力、その他エネルギー関係の広報、出版物の編集に携わる。原子力発電、電力自由化、再生可能エネルギー等に精通。
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