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環境に優しいはずのメガソーラーが自然破壊、自治体は条例で対抗措置【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

全国で整備が急激に進むメガソーラー建設に、業者と住民間でのトラブルが相次いでいます。そこに見えるのは本来、環境を守るはずのメガソーラーが自然破壊するという皮肉な現実。国内では法整備が追いついておらず、各自治体は対応に苦慮しています。

全国の地方自治体がメガソーラーの整備を規制する条例やガイドラインの制定に動いています。森林の伐採など自然破壊が相次ぎ、住民と事業者のトラブルも後を絶たないからです。しかし、メガソーラー自体を規制する法律がなく、条例やガイドラインがどこまで効果を上げられるかは未知数で、対応に苦慮しているのが実情です。

住民を無視して業者が工事に着手

工事は一時ストップしているものの、メガソーラー計画で業者と住民が対立している赤穂市御崎地区の山林(筆者撮影)
忠臣蔵で知られる兵庫県播磨地方の赤穂市。JR赤穂線の播州赤穂駅から海に向かって約3キロ、御崎地区の小高い山頂は、緑がはぎ取られています。現在は工事がストップしていますが、住民の反対を押し切って業者がメガソーラーの整備工事を進めた跡です。

山から緑がはぎ取られたのは2015年のことです。メガソーラーの建設計画を市が許可した直後、説明会が開かれないまま、工事が始まりました。この地域は都市内の自然を維持保存する風致地区に指定され、一部が山腹崩壊危険地区に当たります。地元の自治会が3,372筆の署名とともに、兵庫県に反対の意向を伝えましたが、工事が強行されました。

業者が地元住民を工事妨害で刑事告発するなど、大きなトラブルにも発展しました。その後、別の業者が事業を引き継ぎ、工事がいったんストップしましたが、現地は大雨が降ると、水路が濁流であふれ、道路がまるで川のようになる場所です。過去にもたびたび、浸水被害や土砂崩れを起こしていることもあり、住民が不安を募らせているのです。

法整備追いつかず、赤穂市は対応に苦慮

本来なら自治体が間に入り、こうしたトラブルを解決すべきですが、国内では法整備が追いついていません。このため、自治体が違法でない工事に対し、なかなか口出しできないのが現状です。

赤穂市は事態が発覚したあと、再生可能エネルギー調和条例を制定しました。自然災害の発生が危惧される場所などを抑制地域に指定し、出力50キロワット以上の太陽光発電などを整備しないよう業者に協力を求める内容です。しかし、法的な強制力はなく、条例制定前に工事に入っている御崎地区は適用されません。

赤穂市都市整備課は「行政としてはスムーズに解決してほしいが、明確な法律違反がなければ、口をはさむことはできない」と対応に苦慮しています。

メガソーラー整備、全国で急加速

出典:経済産業省資料から筆者作成
メガソーラーは出力1メガワット(1,000キロワット)以上の大規模太陽光発電を指します。経済産業省によると、2017年9月末時点で稼働している全国のメガソーラーは、出力2,000キロワット未満が5,411施設、2,000キロワット以上が374施設の合計5,785施設に及びます。

太陽光など再生可能エネルギーで発電した電力は、国の固定価格買取制度により、一定額で一定期間電力会社が買い取ることになっています。太陽光の買取価格は2017年度で1キロワット時当たり21円、買取期間は20年です。

発電施設の年間発電量は東京都で少なめに見て出力1キロワット当たり約1,000キロワット時といわれています。1,000キロワットのメガソーラーなら、100万キロワット時以上の発電が可能になるわけです。

平均的な1,000キロワットのメガソーラー整備には、2億5,000万円程度の費用がかかりますが、年間の売電収入は2,000万円を超します。このため、固定価格買取制度がスタートして以来、全国で整備が急激に進んでいるのです。

霧島市でも業者と住民のトラブル

業者と住民のトラブルが発生しているのは、赤穂市だけでありません。市内に30近い太陽光発電施設が乱立する鹿児島県霧島市もその1つです。霧島市牧園町ではむき出しの山肌に業者がメガソーラーを設置したことにより、住民が土ぼこりに悩まされています。

業者は当初、防風林の整備を計画していましたが、地下に岩盤があり、植樹できないとして防風フェンスを設置しました。しかし、そのフェンスが強風で吹き飛ばされる事態も起きています。

霧島市は2016年、業者に事前協議や地元への配慮を求めるガイドラインを制定しました。しかし、罰則がなく、強制力に欠けるのは赤穂市と同じです。霧島市地域政策課は「自治体の立場では住民とよく話し合うよう求めるしかない」と頭を抱えています。

ガイドライン策定の自治体も続々と

再生可能エネルギーに関心を持つ市民らでつくるNPO法人太陽光発電ネットワークが2017年にまとめた調査報告書では、全国で発生した業者と住民のトラブルや自治体の対応がまとめられています。

地元住民がメガソーラーの反対の声を上げたのは、京都府南山城村、三重県志摩市、栃木県日光市、栃木県鹿沼市、高知県土佐清水市など全国に及びます。これに対し、条例は茨城県古河市、千葉県我孫子市、和歌山県、長野県南木曽町など、ガイドラインや要綱は鹿児島県南九州市、埼玉県羽生市、兵庫県宍粟市、山形県鶴岡市などが制定しました。

急激に進むメガソーラー建設の中、乱開発といえる状況が相次ぎ、住民や自治体が対応に追われています。そこに見えるのは本来、環境を守るはずのメガソーラーが自然破壊するという皮肉な現実です。

最近の主なメガソーラー反対運動

栃木県日光市市民団体が反対署名6,931人分を市議会に提出
三重県志摩市地元住民 漁協が中止を求める要望書
高知県土佐清水市大岐地区の新設計画で住民が市へ指導要望
鹿児島県霧島市17団体と個人が施設建設への不同意書を県に提出
京都府南山城村メガソーラー建設に地元自治会が反対
栃木県鹿沼市市民団体が市へ建設差し止めを求める署名提出
岡山県岡山市市内の山林で浮上した整備計画に住民が反対の声
長野県飯田市風越山での整備計画に住民が中止要望書を市に提出
静岡県伊東市八幡野地区の設置計画に市議会が反対決議
香川県土庄町豊島で地元住民が反対運動
滋賀県高島市メガソーラー建設反対の署名を住民が市に提出
福岡県飯塚市白旗山の計画に対し、住民が反対署名を市に提出

出典:NPO法人太陽光発電所ネットワーク「事業用太陽光発電施設等に対する地方自治体の条例等の制改訂状況の調査報告」

兵庫県は条例で森林保護義務づけ

一定規模以上のメガソーラー整備業者に山林保護を義務づける条例をスタートさせた兵庫県庁(筆者撮影)
こうした中、一歩進んだ条例を制定する自治体も出てきました。兵庫県は2017年に事業用地5,000平方メートル以上の太陽光発電を設置する業者に地域住民への事前説明や事業計画の届け出を義務づける条例を制定しましたが、2018年3月末からこの条例に森林保護規定を追加しました。

50ヘクタール以上のメガソーラーを整備する業者に対し、区域内の60%以上の森林を残すよう求める内容で、国立公園や国定公園、県立自然公園を区域に含む場合は、保全する森林を80%以上にしています。

兵庫県建築指導課は「本来、太陽光発電など再生可能エネルギーは自然と共生するためのもの。住民の不安を解消し、乱開発を防ぐため、森林保全規定を盛り込んだ」と狙いを語りました。

伊東市議会は市長の同意を必要とする条例案可決

静岡県伊東市議会は3月議会で市が作成した条例案の施行期日を1カ月早めて6月1日とする議員提出の修正案を可決しました。設置事業を届け出制とし、市長の同意を必要とするもので、別に規則で定める抑制地区では太陽光パネルの総面積が1万2,000平方メートルを超すケースについて、市長は同意しないとしています。

伊東市議会には設置事業を許可制にし、既存設備も規制するより厳しい内容の市民案も提案されましたが、市の指摘を基に市民案を修正した議員提案の修正案とともに否決されました。伊東市都市計画課は「行政としてできる範囲は市が提出した条例案の内容」と述べています。

このほか、福島県福島市や和歌山県和歌山市は条例やガイドラインで一定規模以上の太陽光パネルを景観法の届け出対象としました。しかし、山梨県富士河口湖町は太陽光発電施設の設置に不同意処分をしたところ、裁判に持ち込まれて甲府地裁で処分取り消しの判決を下されています。

全国に広がる混乱収拾へ国の対応が必要

NPO法人太陽光発電ネットワークの吉田幸二主任研究員は「法令の縛りがなくても業者と住民が共存共栄を目指し、互いに理解し合う努力が必要」と提言していますが、こじれた対立の糸をほぐすのは大変です。

香川県議会は3月、国に対して業者に住民への事前説明を義務づける法整備を求める意見書を可決しました。混乱が全国に広がっている以上、国としても何らかの対応が必要になってきそうな状況です。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
高田泰(政治ジャーナリスト)
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