パナソニックが大阪・吹田で再エネ100%のスマートタウン、健康増進で吹田市とも連携【エネルギー自由化コラム】

パナソニックが大阪・吹田で再エネ100%のスマートタウン、健康増進で吹田市とも連携【エネルギー自由化コラム】
電力自由化ニュース

パナソニックが大阪府吹田市で、スマートタウンを開発します。高齢者の見守りや防犯システムに先進技術が適用され、街の電力が再エネ100%でまかなわれるなど、健康とエネルギーを重視した街づくりを推進します。スマートタウンの街びらきは2022年春の予定で、吹田市が進めている北大阪健康医療都市構想との相乗効果も期待です。

パナソニックは大阪府吹田市岸部中の工場跡地で多くの次世代技術を取り入れたスマートタウンを開発します。
特に力を入れているのは健康増進と再生可能エネルギーの活用。センサーで情報計測して認知症の早期発見や予防に努め、高解像度カメラで高齢者を見守るほか、消費する電気のすべてを再エネでまかなう街を目指しています。
注目が集まるスマートタウンは2020年春に着工し、2022年春に街開きする予定です。
パナソニックが2022年春の街開きを目指す吹田市岸部中のスマートタウン予定地(筆者撮影)

未来の街づくりを目指して関西の有力企業が相次いで参加

Suita SSTの完成イメージ(パナソニック提供)
このスマートタウンは「Suita SST(サスティナブル・スマートタウン)」と命名されました。
JR東海道本線の岸辺駅北側にあるポンプのコンプレッサー製造工場跡約2.3ヘクタールを開発します。
スマートタウンのテーマは、健康のほか多世代居住、地域共生を掲げています。

参画する事業者はパナソニックのほか、パナソニックホームズ、大阪ガス、関西電力、竹中工務店、阪急オアシス、学研ココファン、綜合警備保障、中銀インテグレーション、積水化学工業、NTT西日本、JR西日本、JR西日本不動産開発、三井住友信託銀行。吹田市も近くで北大阪健康医療都市構想を進めている関係から、先進的な街づくりの助言、協力役として加わります。

パナソニックのスマートタウンとしては、2014年に運営を始めた神奈川県藤沢市、2018年の横浜市港北区に次ぐ3例目で、パナソニックの本社がある関西では初めて。過去2例のスマートタウンは省エネに重点を置いていましたが、今回は健康とエネルギーの両面で取り組みを一段と深化させます。総事業費は公表していません。

高齢者の見守り、防犯に先端技術を採用

建設する住宅の総戸数は365戸。8階建ての高齢者向け分譲マンション126戸、ファミリー向け分譲マンション100戸をはじめ、6階建ての単身者向け共同住宅73戸、サービス付き高齢者住宅66戸を予定しています。ほかに高齢者のグループホームやデイサービスの機能を備えた複合施設、スーパーを核とする商業施設、広さ約1,400平方メートルの公園、学習塾、保育園を整備します。

スマートタウンの中では、防犯カメラやセンサーを活用して転倒している高齢者や不審者を早期発見するのに加え、サービス付き高齢者住宅では、設置したカメラの映像や家電製品のリモコンの操作履歴などから、高齢者の睡眠や活動状況を分析し、認知症の兆しを検知するサービスを提供します。

分譲マンションや高齢者住宅のセキュリティーは顔認証技術を使って確保する計画。さらに、高齢者向けモビリティの活用、多世代交流を促進する空間の設置など多様な取り組みを予定しています。

エリア一括受電と卒FIT電力活用で再エネ100%目指す

エネルギー面では、関西電力の協力を得てエリア一括受電と卒FIT電力の活用、非化石証書がついた電力の調達などにより、街区全体の消費電力を実質的に再エネ100%でまかなう日本初の再エネ100%タウンを目指します。

大阪ガスとの連携では、家庭用燃料電池を使った新たなサービスモデルづくり、街のエネルギーレジリエンス(強靭性)向上に向けたガス活用モデル構築を進めます。

パナソニックは「健康で生き生きとした明日を提供し続けるために、住民1人ひとりに寄り添い、健康や環境面で新たな時代の先駆けになる街にしたい」と意欲を見せています。

吹田市は北大阪健康医療都市構想を推進中

北大阪健康医療都市構想の中核となる吹田市岸部新町の国立循環器病研究センター(筆者撮影)
大阪市の北に隣接する吹田市は、9月末で人口37万3,000人。
日本初の大規模ニュータウンとなる千里ニュータウンや1970年の大阪万博会場、プロサッカーガンバ大阪のホームスタジアムがあり、大阪市のベッドタウンとして発展してきました。

吹田市は岸辺駅前にある旧国鉄吹田操車場跡地約30ヘクタールで北大阪健康医療都市構想(健都)を進めています。医療施設や医療関連企業、研究機関を集約し、健康・医療の街づくりの拠点とするのが狙いです。

2018年にJR西日本の商業施設ビエラ岸辺健都が完成したほか、吹田市中部の片山町から吹田市民病院が移転してきました。2019年7月には吹田市北部の北千里にあった国立循環器病研究センターが中核施設として移転しています。

循環器病センターなど活用し、健康寿命延ばす取り組み

研究機関と企業の誘致を目指す健都イノベーションパークには、医療機器メーカーのニプロが進出を決めたほか、政府機関の地方移転で国立健康・栄養研究所が東京都新宿区から移ってくることになっています。

国立循環器病研究センターに隣接する摂津市千里丘新町には15階建てと20階建ての大規模マンションが建設され、2018年から入居が始まっていますが、入居者は手首に腕時計のような端末を装着しています。端末は睡眠時間や心拍数、歩数を計測し、国立循環器病研究センターに送信します。それを受け、センターの医療従事者が健康指導をしているのです。

入居者は高齢者だけでなく、30~50代の働き盛りの人たちも多く、自立した暮らしができる健康寿命を延ばそうという健都の取り組みが始まっています。

吹田市は両構想の相乗効果に大きな期待

スマートタウンと健都の目的は健康増進という面で一致しています。しかも、両者は歩いて数分の至近距離にあります。このため、吹田市はスマートタウンの参画事業者に名を連ねるとともに、9月にパナソニックと持続可能な街づくりに向けた連携協定を締結しました。

協定は連携を図る項目として

  • 健康・医療の街づくり推進
  • 環境先進都市の推進
  • 街の魅力向上

を掲げました。健都関係者の会議にパナソニック、近く設立されるスマートタウンの協議会に吹田市が参加、スマートタウンで市民が参加できる健康増進の取り組みを実施する方向が打ち出されています。

環境面ではスマートタウンで低炭素化、資源循環、省資源化、ヒートアイランド対策などの取り組みを進め、吹田市とパナソニックで啓蒙活動を推進することにしています。このほか、高齢者向けモビリティなどさまざまな分野の実証実験をスマートタウンで進める方針です。

吹田市北大阪健康医療都市推進室は「スマートタウンの開発は健康・医療の街づくりを進めるに当たり、大きな追い風となる。互いに協力し合うことで相乗効果を生み、構想をさらに大きく花開かせることが可能になるのでないか。吹田市の名前やブランド価値もスマートタウンの開発決定で高まりそうだ」と期待しています。

この記事を書いた人

高田泰

政治ジャーナリスト

高田泰

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。

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