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仮想発電所の実証事業が全国で加速、再エネ拡大見据えて非エネルギー企業も参入【エネルギー自由化コラム】

電力自由化ニュース

仮想発電所「VPP(バーチャル・パワー・プラント)」は、家庭用太陽光発電や蓄電池、電気自動車などの小規模電源を集めて一括制御し、発電所のように機能させる技術です。設備投資や燃料コストを抑えるメリットがあり、需給バランスを取るのが難しい再エネの普及を促進してくれる事業として、いまVPPが注目されています。

一般家庭や事業所の蓄電池や電気自動車などを一括制御し、まるで1つの発電所のように機能させる仮想発電所(VPP=バーチャル・パワー・プラント)の取り組みが、国内で加速してきました。再生可能エネルギーのさらなる普及を後押しするだけに、実証事業にはエネルギー企業以外も参加し、次世代への投資に力を入れています。

郡山市では公民館の蓄電池を遠隔制御

福島県郡山市麓山の市中央公民館。建物の屋上に設置された出力52キロワットの太陽光発電と容量55キロワット時の蓄電池が、東北電力の常時監視下に置かれています。災害対応機能を損なうことなく、電力の使用状況に合わせて最適に遠隔制御するためです。

郡山市と東北電力は2月、VPP技術を活用したエネルギーマネジメントの構築に向け、基本協定を締結しました。東北電力は郡山市が設置した太陽光発電と蓄電池を使い、VPPの実証事業を進めているのです。

電力の使用量が減れば、太陽光発電で作った電力を蓄電池に貯め、電力使用量が増えれば、蓄電池内の電力を活用します。電力の需給バランス調整機能としての可能性を探っているわけで、東北電力は実証事業を2021年3月末まで続け、余剰電力の有効活用や蓄電池の長寿命化についても検証する方針です。

東北電力と郡山市のVPP事業(東北電力提供)

東北電力は仙台市や新潟市とも連携

東北電力がVPPの実証事業で地方自治体と連携するのは、郡山市だけでありません。2018年4月に仙台市と基本協定を結んだのを皮切りに、2019年に入って新潟市、宮城県とも連携して実証事業に入っています。東北電力が2018年度から進めているVPP実証プロジェクトの一環です。

新潟市では市内の小中学校5カ所に設置された出力10キロワットの太陽光発電と容量15キロワット時の蓄電池を活用して需給バランス調整機能や蓄電池の長寿命化などを検証しています。宮城県との連携事業では気仙沼市赤岩杉ノ沢の県気仙沼合同庁舎で同様の検証に入りました。

東北電力はVPP実証を進めるため、5月にドイツのVPP大手ネクストクラフトベルケと協定を結びました。ネクストクラフトベルケが持つ設備ごとに発電量の測定や予測ができるシステムなど先進的な技術と知見を活用するのが狙いです。さらに、7月にはデジタルイノベーション推進室を設置するなど社内体制を強化しています。

東北電力は「地域にメリットを生じる取り組みを自治体と連携して進めながら、新しいビジネスモデルを構築したい」と意欲的です。

小規模電源を束ねて1つの発電所のように

VPPは家庭用太陽光発電や蓄電池、電気自動車などの小規模電源をIoT(モノのインターネット)技術で統合制御します。1つひとつの設備が持つ発電量は大きくありませんが、これを集めることで1つの発電所のように機能させるわけです。

一般にアグリゲーターと呼ばれるサービス事業者が電力の消費状況を見ながら各設備を遠隔操作します。電源保有者は需給調整に貢献することで協力金を得られます。

経済産業省はVPPの実用化に向け、2016年度から5年計画で事業の確立を目指しています。全国で進めている実証事業が順調に進めば、2021年度にも需給調整市場を設けたい考えです。VPPの実用化がさまざまなメリットを電力市場にもたらすと考えられているからです。

再エネのさらなる普及を後押し

電力網は需要と供給のバランスが崩れると、電気の周波数が乱れて発電機や工場設備などの故障につながることがあるほか、「ブラックアウト」と呼ばれる全域停電を引き起こす可能性を持ちます。電力会社はこれまで、需要に応じて火力発電所の発電量を調整し、需給バランスを取ってきました。

しかし、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入が相次ぎ、次第に需給バランスを取るのが難しくなっています。九州電力が2018年から再エネの出力制御を実施しているのは、需給バランスを取り、ブラックアウトを防ぐためです。解決策の1つとしてダムを造って揚水発電所を設ける方法も考えられますが、建設には多額の費用と時間がかかります。

VPPは電力が過剰になりそうなら蓄電池に充電し、不足すると判断すれば蓄えた電力を放電します。電力需要のピークを抑制することで需給バランスを取るのに役立つのです。天候の影響を受けやすく、発電量が一定しない弱点を持つ再エネのさらなる普及にも、道を開くことになります。

外国企業も日本市場へ参入の意向

電力会社にとっては発電設備への投資や火力発電所を動かす燃料コストを抑えられるメリットが出てきます。電源を持たない店舗や工場に一斉に節電を実施させ、余剰電力をひねり出す手法も考えられます。

日本政策投資銀行によると、需給バランスを取るために需要家側の電力を制御する「デマンドレスポンス」の市場規模は電力消費量の1%程度にとどまりますが、2040年ごろには消費量の18%前後まで拡大する見込みです。

このため、イタリアのVPP大手エネルグループが4月、駐日イタリア大使館に日本のエネルギー関係者を招き、日本市場への参入を表明するなど、海外企業も積極的な動きを見せています。

東芝ESは横浜市で学校の蓄電池を制御

東芝エネルギーシステムズのVPP事業(東芝エネルギーシステムズ提供)
東芝エネルギーシステムズ(ES)と東京電力エナジーパートナー(EP)は1月から横浜市でVPP事業を始めました。
横浜市のVPP構築事業の一環で、横浜市内11の小学校に設置された容量約15キロワット時の蓄電池を東芝ESが遠隔制御しています。

東芝ESは2016年から2年間、横浜市、東電EPとVPP構築に向けた実証実験を進め、複数の蓄電池を効果的に制御する技術を開発しました。その技術を生かし、需給バランスの調整を進めているのです。

今後はより多種多様な電源の組み合わせに対応できるシステムの開発を進める方針。東芝ESは「スマートで持続可能な社会実現に貢献したい」と力を込めました。

京セラ、ローソンなども次々に参入

このほか、京セラは経産省の実証事業に参加し、関西電力、東電グループなどと連携した実証事業に入ります。京セラが販売する一般家庭向けの蓄電池を遠隔制御して需給バランスを取るための調整力電源を需要家側の電源を束ねて創出、電気事業者に提供します。

電源開発などが出資する鈴与電力は横浜市のVPP構築事業に参画し、横浜市港北区大豆戸町の港北区総合庁舎で蓄電池設置による事業を2020年から始めます。三菱商事などが出資するMCリテールエナジーとローソンは、東電管内のローソン250店舗で空調や照明などを制御して余剰電力をひねり出す実証実験を進めています。

日本国内での再エネ発電量は2018年で発電量全体の17%程度ですが、政府は2030年に22~24%に拡大する目標を打ち出しています。VPPは再エネの拡大を支える次世代の電力事業ですから、エネルギー業界以外も熱い視線を注いでいるのです。

高田泰(政治ジャーナリスト)

高田泰(政治ジャーナリスト)

関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆している。
高田泰(政治ジャーナリスト)
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