デマンドレスポンスとは?種類やメリットについてわかりやすく解説
この記事の目次
「デマンドレスポンス」は電力の需給バランスを整える手法であり、報酬を受け取れるなどメリットも大きいため、近年日本でも注目を浴びています。
そこで、今回はデマンドレスポンスの意味や仕組み、メリットについて解説していきます。
- 更新日
- 2023年12月1日
デマンドレスポンスとは
デマンドレスポンス(DR)とは電力の需要量を供給量に合わせて需給バランスを確保させる手法のこと。日本語に訳すと「需要応答」となります。
デマンドレスポンスが実施される主な理由は、停電を避けるためです。電気は貯められない性質を持っているため、需要と供給を同時同量に保つ必要があり、バランスが崩れると停電になってしまうから、デマンドレスポンスが実施されるのです。
今までは需要に合わせて電力会社が発電量を調整し、供給を合わせてきました。デマンドレスポンスは逆に、供給量に対して需要を調整させるという考え方です。
日本では東日本大震災の際に多くの発電所が稼働を停止し、電力不足が生じました。震災後、その経験から改めてエネルギー管理の重要性が認識されたことで、デマンドレスポンスも注目を集めはじめました。
また、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが普及したことも、デマンドレスポンスを後押しする一つの理由です。
大規模発電所に頼らずとも各家庭や企業で供給を増やすことができるようになった一方、これらのエネルギーは天候や環境に左右されやすく供給量が安定しません。そのため、供給量に対して需要をどう合わせていくかという考え方がますます重要になってきています。
再生可能エネルギーについて詳しく知りたい方はこちらの記事もお読みください。
再生可能エネルギーとは?
デマンドレスポンスの種類
デマンドレスポンスには「上げDR」「下げDR」と2種類に分けられます。それぞれどのような内容かを解説していきます。
- 上げDR
- 上げDRとは電力の需要量を増やすことを指します。供給量が過剰になった場合、需要を増やすことで効率よく電力を使っていくという考え方です。
ただし、むやみに「電気をたくさん使いましょう」ということではありません。電力の使用量が少ない時間帯に電力を使ってもらい、需要を平均するほか、蓄電池や電気自動車などへ充電するなどして、無駄なく電気を利用できるように需要を増やしていきます。
- 下げDR
- 下げDRとは電力の需要量を減らしていくことを指します。需要量が増え供給が追いつかないと停電してしまうこともあるため、供給側の要請があった時に需要を減らしていきます。
家庭や会社で無理ない範囲で電気の利用を制限して節電することや、蓄電池や自家発電による電力を優先的に利用することで、需要を下げていきます。
デマンドレスポンスの方法
具体的にはどのような方法で、デマンドレスポンスを行うのでしょうか。需要制御の方法は「電気料金型」と「インセンティブ型」に分かれるのでそれぞれ解説していきます。
- 電気料金型デマンドレスポンス
- 需要が多くなる時間帯に合わせて電気料金を高くすることで、需要を抑制していくという方法です。
電力会社などが電気料金を調整することで容易に実施できるのがメリットです。一方で、電気料金を高くしたからといって、必ずしも需要が抑制されるとは限らないため、効果が予測しづらいというデメリットがあります。
- インセンティブ型デマンドレスポンス
- 電力会社から需要を抑制するように呼びかけがあった際に、消費者が節電することで報酬(インセンティブ)を受け取れるという方法です。
達成することで報酬を受け取れるというメリットがわかりやすいため、消費者が実際に節電の行動に移しやすいというメリットがあります。
一方で、インセンティブ型は、キャンペーンやポイント制度など仕組みや制度を整えなければ、一般家庭や企業に適用できないのが難点です。
デマンドレスポンスの導入メリット3点
デマンドレスポンスを実施することは消費者にとってもメリットがあります。
主なメリットは下記の3点です。
- 電気代を節約できる
- 太陽光発電など再生可能エネルギーを活用しやすい
- 電気の使い方を見直すことで環境問題に貢献できる
それぞれ、どのようなメリットなのか詳しく見ていきましょう。
電気代を節約できる
インセンティブ型デマンドレスポンスに応じて節電すると、その時の電気使用量が減るため、電気代を節約できます。そのうえ節電が習慣化できれば、電気代を日常的に節約できる効果も期待できるでしょう。
また、デマンドレスポンスの目標を達成することで、ポイント還元や割引などの報酬ももらえます。そのため、家計全体として、節約できた電気代以上の節約効果が期待できます。
太陽光発電など再生可能エネルギーを活用しやすい
近年、自宅や自社設備として太陽光発電や蓄電池を設置することも増えてきました。
しかし、自宅や自社での電気需要量と発電による供給量が必ず一致するわけではないので、太陽光発電などから発生する再生可能エネルギーを効率よく消費できるわけではありません。
デマンドレスポンスでは、蓄電池やエコキュートなど電気機器の自動コントロールシステムなどを活用し、再生可能エネルギーの発電量が多い時間帯に需要を生み出すことで、需給バランスを調整するということもできます。
また、デマンドレスポンスに参加している世帯や企業で、発生した再生可能エネルギーをシェアすることで、電力の需給バランスを調整し、参加した消費者は報酬をもらえるという仕組みも登場しています。
今後、デマンドレスポンスの仕組みや制度がさらに整えば、ますます再生可能エネルギーを効率よく活用できるようになり、環境問題にもより貢献できるようになるでしょう。
電気の使い方を見直すことで環境問題に貢献できる
デマンドレスポンスは需要を供給に合わせていくことで、電力の無駄遣いを減らしていきます。火力発電による供給が減り、再生可能エネルギーによる発電の出力制御が減れば、結果的に環境問題に貢献することに繋がります。
個人で節電しても効果を実感しにくいですが、デマンドレスポンスは参加している家庭・企業全体で需要を抑制していくため、節電が社会に貢献している実感も得られやすいはずです。
デマンドレスポンスの今後の動向
これまでは、火力発電所や原子力発電所など大規模な発電所のみが電源でした。しかし昨今、太陽光発電所や風力発電所などがさまざまな場所に設置され、需要側と供給側の双方向から供給されるようになり、電力会社だけで電力ネットワークをまとめるのが困難になりました。
そこで登場したのが、需要側と供給側の間に入り、調整を行う組織「アグリゲーター」です。
- アグリゲーター
- 一般消費者と企業を束ね、電力会社とつなぐ調整役組織のこと。
一般消費者がデマンドレスポンスに参加するには、事前に電力会社またはアグリゲーター等と契約(ネガワット契約)します。
アグリゲーターは、電力会社から調整依頼があった際に、消費者への通知やネガワット(節電により余った電力)を取りまとめる役割を担います。また、今後はシステムによって、アグリゲーターがエコキュートなどの電気機器をコントロールして節電することもできるようになるかもしれません。
電力会社としては、アグリゲーターにデマンドレスポンスを任せられるため、実施しやすくなりました。消費者としても、簡単に参加できる仕組みが整って、参加のハードルが下がっています。
2022年4月からは特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度が本格的に開始されました。今後はますますデマンドレスポンスが世の中に浸透していくことが予想されます。
出典:電力の需給バランスを調整する司令塔「アグリゲーター」とは?/経済産業省エネルギー庁
デマンドレスポンスでお得に社会貢献
デマンドレスポンスへの参加は報酬が受け取れるなどユーザーメリットもあり、各家庭の使用電力量を見直すきっかけにもなります。
大きな枠組みとしては、無駄な発電を減らすことで地球温暖化などの環境問題に対応していくという意図もあります。お得な報酬を受け取りながら社会貢献につながるので、ぜひデマンドレスポンスの導入を検討してみてください。
この記事を書いた人