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発送電分離と電力自由化の関係とは?

発送電分離と電力自由化の関係とは?

電力自由化を語る時に「発送電分離」という言葉がよくセットで出てくることに気づかれている方も多いと思います。
今回は発送電分離という用語の持つ意味について考えてみます。

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発送電分離とは

そもそも、「発送電分離」とはいったいなんでしょうか。そしてなぜ電力の自由化と共に議論されるのでしょうか。

送配電部門を独立させる

発送電分離とは、読んで字のごとく「発電と送電を分離すること」です。発電所で電気を作り、家庭や工場など需要家(利用者)に届けるには、発電設備とともに、送配電のための巨大な設備がともに必要です。いま発電設備と送配電設備はその両方を大手電力会社が所有して、一体的に管理しています。

これを分離するというのは、送電や配電のネットワークを、発電設備から切り離して独立させ、すべての電力事業者が平等に利用できるようにすることです。一連の電力システム改革の最終段階で、こうしたことを実現することが検討されています。

送配電は引き続き規制の下に置かれる

これまで日本の電気事業を巡る政策は、発電部門については、独立系発電事業者(IPP)による電力の卸売り(電力会社に販売)を認めたほか、販売部分では小売りの自由化が進むなどの動きが進んできており、競争的な環境が徐々に形成されてきました。

こうした動きの一方で、送電や配電といった電力の流通に関する部分は自由化されておらず、既存の電力会社の独占が認められているとともに、政府(経済産業省)の規制の下におかれています。

これには理由があります。仮に電力事業者がそれぞれ独自に電線や電柱をあちこち張り巡らせてしまうと大変なことになりますし、送電や配電には莫大な設備投資が必要で、その後の管理にかかるコストなど固定費も大きくなるため、規模の大きい1社がまとめてサービスを提供する方が供給コストも小さくなるからです。
このため電力自由化が進んでも、送電・発電部門は依然、規制のもとに置かれているのです。

中立性を確保するため、発電・小売りとは経営的に分離

このように発電・小売りの電力自由化が進む一方で、規制事業である送電部門については地域電力会社の独占が維持されています。電力会社以外の発電事業者や小売事業者も、既存の送配電ネットワークを使わなければ顧客に電力を供給することができません。このため、ネットワークを持つ電力会社が自分たちの経営に有利になるよう競争相手となる新規参入者に不当な扱いをするのではないかという懸念が生じます。たとえば、送電線の利用を制限したり、利用料金を不当に高く設定したりするようなことです。

そうしたことを防ぐために、送配電部門は、既存の電力会社の一部となることなく、かついかなる新規参入企業にも属さない中立的な立場となる必要があります。このため既存の電力会社から送配電部門を経営的に切り離すのが、「発送電分離」の考え方です。

政府(経済産業省)の方針では、2020年までに法的分離を行うことになっています。

送配電部門の一層の中立化に当たっては、安定供給の要である指令機能の改編が必要であり、そのためのシステム開発に必要なおおまかなルール整備を速やかに行った上で、システム開発や要員の訓練、検証作業など、万全の備えを行うことが欠かせない。
また、労使関係の調整や資産の仕分け作業等の準備を一般電気事業者が行うとともに、国においても税制上の措置を検討することが必要であり、こうした準備には相当の期間がかかることが見通される。これらを勘案すると、現時点では5~7年後(2018 年~2020 年)を目途に法的分離を実施することが想定される

出典:電力システム改革専門委員会報告書 | 経済産業省

戦前の電力業界と発送電分離

じつは、第二次大戦より前の日本では、電気事業は完全な自由市場でした。このころ、全国に繋がる電力ネットワークは作られておらず、最盛期には700を超えるとも言われる中小の電力会社が、契約した家庭に向けて自社の電気だけを流すための電線を引いていました。今で言うと光ファイバーのインターネット回線に近いイメージです。

それぞれの会社の送電網が独立していたこの時期、自宅は停電しても他社と契約している隣は停電しない、あるいは電柱一本あたりの契約者数が揃わないと、そもそもコストが見合わず電線を引いてもらうことができない、といったようなこともあったのです。

現在では電力は生活の必需品となり、どこにあるどの家庭にも平等な条件で届かなければならないという大きな前提(ユニバーサルサービス)があることもまた、このたびの自由化において、送電・配電というインフラを維持管理する役割について、政府(経済産業省)の規制の元で小売り販売とも切り離して運営することを求めている理由である、と言えます。

発送電分離を行う方法

では、実際に発送電をどうやって分離するのでしょうか。

法的分離という方式

すでに発送電分離を実施している諸外国ではいくつかの方法が採用されていますが、日本では現在のところ「法的分離」という考え方が有力になっています。これはフランスなどで採用されている方式ですが、送配電部門を既存の電力会社から切り離し、分社化することで、送配電部門を中立的な立場にするものです。この結果、送配電部門は、発電や小売り部門とは別会社になり、中立性が保たれるというわけです。
ただし、各部門を子会社とする持ち株会社の設立や、送配電部門を発電・小売り部門の子会社にすることなど、資本関係を残すことは認められます。このため、親会社の社員が送配電子会社の職員を兼務することを禁止したり、親会社からの出向・転籍などを制限したりするルール作り=行為規制は必要になります。

発送電分離の4類型

発送電分離には法的分離を含め大きく4類型がある。

  1. 会計分離:送配電部門と他部門に関係する会計を分ける
  2. 法的分離:送配電部門を別会社とする
  3. 機能分離:送配電部門の所有権を電力会社に残し、運用や整備計画を中立機関である独立した系統運用機関が実施する
  4. 所有権分離:送配電部門を完全に別会社とし、資本関係も認めない

日本では2003年の制度改正で「会計分離」が導入され、原則として送配電部門は独立会計(地域電力会社の電力小売部門が、送電コストを送配電部門に対して支払うイメージ)となっている。しかし中立性の不足や、発電者の多様化にあわせてのより一層の中立化が求められ、法的分離が経済産業省の方針となった。

発送電分離のメリットとデメリット

では発送電分離のメリットはどんな点でしょうか。

公平性とビジネスの拡大というメリット

まずメリットは、分離することで、送配電網を所有していない新規参入者であっても公平に送配電網を利用することができ、発電や小売り事業を活性化することができるという点です。また既存の電力会社にとっても、送配電網の維持管理という役割から解放されることと、電力ビジネスが全体として拡大することによる投資が促される期待ができます。

コスト効率の低下というデメリット

ではデメリットについてはどうでしょうか。考えうるのは、分離することで規模の経済のメリットが減じ、コストが上昇する可能性です。これまで発電や小売りと一体的(垂直統合的)にやっていた事業が分離されるとどうしても効率性が低下し、その分様々なコストがかかる可能性があります
また新規参入会社が自然エネルギーを利用して発電するなどの場合、消費地から遠く離れた場所に発電所が建設されることなども考えられ、この場合には新たに送配電設備への投資も必要となり、最終的にコストを押し上げる原因になります。

東京電力の取り組み

東京電力は法的分離による発送電分離が実施されることを想定し、2013年4月からカンパニー制に移行していますが、さらに2016年4月をめどにホールディング・カンパニー(持ち株会社)制を導入し、持ち株会社の下に発電事業会社、送配電事業会社、小売り事業会社の3社を置く制度を導入する方針を打ち出しました。電力会社の中でいち早く発送電分離を見込んだ対応をとっているともいえますが、他の電力会社の中には一部にまだ発送電分離について懐疑的な考えを持つところもあり、そこまで対応しきれていないところもあり、温度差があるといえます。

まとめ

発送電分離は単に発電部門と送電部門を単に分けるだけでなく、自由化される電力市場が十分機能するように制度作りやルール作りを行う必要があります。電力会社の対応一つをとってみても、例えば送配電事業会社と小売り事業者の電話番号を明確に分ける必要があるなど、クリアすべき手続きは膨大にあります。電気の安定供給を維持しつつ、課題のその一つ一つを解決し、真の利用者利便につなげる作業がこれから求められているのです。

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この記事を書いた人

エネチェンジ編集部

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