美容室の開業、法律手続き完全マニュアル
この記事の目次
美容師をしている人なら、いつか自分のサロンを持つのが夢という人も多いはずです。でも、実際に美容室を開業するとなると、やらなければいけないことが山のように出てくるのも事実。一つ一つ、着実に片づけていきましょう。と、いうことで、今回は美容室を開業するときの基本的な流れを、法律の面からまとめてみました。
美容室を開業するときの流れ
全体の流れを把握
実際にやってみないとわからないこともありますが、たいていの場合、次のような流れを踏んで美容室はオープンします。
- リサーチ
- コンセプトの立案
- 事業計画の策定
- 店舗用物件の選定、申し込み
- 資金調達手続き
- 店舗着工
- 従業員採用手続き
- 開業手続き
- オープン前の集客活動
- 店舗オープン
では、詳細をみていきましょう。
リサーチ
まず、出店したい地域を選びます。その上で、お客さんの流れや年齢層、競合店舗の存在など、店のコンセプトを立案するために必要な情報を収集しましょう。
コンセプトの立案
リサーチの結果を踏まえ、コンセプトの立案に入ります。店名、主要ターゲット、提供したいサービス……決めることはたくさんあるはずですが、まずは「自分はどういうお店にしたいのか?」」という気持ちを大事にしましょう。
事業計画の策定
コンセプトは、「どういうお店にしたいのか?」というぼんやりした思いです。実際に形にするには、数値などのテータを用いて、どのレベルで実現することが可能か検証する必要があります。そのために事業計画を策定しなくてはいけません。とはいえ、自分だけでは事業計画の立て方なんてわからない、という人がほとんどでしょう。税理士などの専門家に相談し、無理のない計画を立ててください。
店舗用物件の選定、申し込み
おおよその事業計画が立てられたら、次は店舗として使う物件の選定に入ります。次の4つの段階を踏んでください。
- 商圏分析、エリア選定
- まず、商圏分析を行いましょう。わかりやすく言えば、地域ごとにどんな人が多く住んでいて、どんなサービスへの需要が高いのか分析することです。商圏分析を専門に行う経営コンサルタントもいるので、利用を検討してみてもいいでしょう。商圏分析の結果をもとに、出店エリアの選定に入ります。
- 物件選び
- 出店エリアが決まったら、具体的な物件選びに入りましょう。事業用不動産に強い会社を中心に、いくつか不動産会社をあたってみてもいいかもしれません。希望の条件をちゃんと話し、その中で可能な限りいい物件を探してもらいましょう。
- 現地調査
- 不動産会社での打ち合わせだけでは、物件の状態が実際にはどうなっているかはわかりません。現地調査は欠かさないようにしましょう。具体的には、次のポイントに注意してください。
- 寸法を測る
- 水回り、電気、ガス等の設備に問題がないかチェックする
- 見積り、設計図を作ってもらい、実際に開業可能かどうか精査する
なお、これらの手続きを知識のない人がやるのは困難です。きちんと専門の業者に依頼しましょう。不動産会社でも紹介してくれます。
- 申し込み
- これらのプロセスを経て、問題がないようであれば、実際に物件を申し込みましょう。物件の貸主による審査があるので、注意してください。また、この段階で店舗設計に着手することをオススメします。業者との打ち合わせは時間がかかるからです。
資金調達手続き
店舗の物件選定、設計計画の着手が終われば、ほぼ「どれぐらいお金がかかるのか」が見えてくると思います。そこで、資金調達手続きに入りましょう。税理士等の専門家と契約している場合、どんな書類を、どのタイミングでそろえればいいのか、詳しく教えてくれます。基本的にはそれに従えばいいでしょう。
店舗着工
資金調達が無事に済めば、施工業者に工事代金の支払いを行います。それを受けて、施工業者が着工し、工事が始まります。
従業員採用手続き
工事が進んでいる間に、従業員の採用手続きを始めましょう。自分ひとりでやるわけではない場合、この手続きは非常に重要です。求人サイトに広告を出したり、知人を頼ったりするなどの手段で、納得のいく従業員を集めてください。
開業手続き
店舗、従業員の準備ができたら、開業手続きを始めましょう。つまり、関係省庁への届出です。詳しくは、後述します。
オープン前の集客活動
集客活動はオープン前から始めるべきです。インターネットの美容室紹介サイトに登録したり、タウン誌に広告を出稿したりなど、手間がかかる手法は早めに着手したほうがいいでしょう。また、お金が比較的かからない集客方法として、ブログ、facebookページ、Twitterがあります。インターネットでの集客を見込むなら、アカウントを作成し、コンテンツを充実させるのも一つの手段です。
店舗オープン
さあ、張り切ってお客様をお迎えしましょう!
実際には、このほかにも細かい作業(備品の購入、機材のリース契約等)がありますが、大まかな流れはおわかりいただけたかと思います。
美容室の開業、書類関係はどこに何を提出する?
美容室を開業するには、次のような届出をしなければいけません。ジャンルごとに説明しましょう。
税務関連
次に挙げる書類を関係各所に提出します。なお、開業するときの組織形態が、個人事業主か法人かで少々異なります。
次の書類を提出します。
提出先 | 書類 |
---|---|
税務署 | 開業届出書(注1) |
青色申告承認申請書(注2) | |
給与支払事務所等の開設届出書(注3) | |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特定適用者に係る納期限の特例に関する届出書(注4) | |
棚卸資産の評価方法の届出書 | |
減価償却資産の評価方法の届出書 | |
消費税課税事業者選択届出書 | |
都道府県税事務所(市町村役場) | 開業開始等申告書(注5) |
- 注1:事業を開始した日から1カ月以内に提出。
- 注2:個人事業主の場合、をする場合。事業を開始した日から2カ月以内。
- 注3:従業員を雇う場合。給与支払事務所等を設けた日から1カ月以内。
- 注4:提出した翌月からの適用となるので注意。
- 注5:開業等届出書ともいう。提出については、各都道府県で定める日とする。
次の書類を提出します。
提出先 | 書類 |
---|---|
税務署 | 法人設立届出書(注1) |
青色申告承認申請書(注2) | |
給与支払事務所等の解説届出書(注3) | |
源泉所得税の納付の特例の証人に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書(注4) | |
棚卸資産の評価方法の届出書 | |
減価償却資産の評価方法の届出書 | |
消費税課税事業者選択届出書 | |
都道府県税事務所(市町村役場) | 開業開始等申告書(注5) |
- 注1:設立の日から2カ月以内。定款等の写し、登記簿謄本等一定の書類の添付が必要。
- 注2:青色申告する場合。設立3カ月を経過した日と最初の事業年と終了日のうち、いずれか早い方の前日までに提出。
- 注3:従業員を雇う場合。給与支払事務所等を設けた日から1カ月以内に提出。
- 注4:適用を受けたい月の前月までに提出。つまり翌月から適用。
- 注5:法人設立・設置届出書ともいう。各都道府県において定める日に提出。
労務関連
次に挙げる書類を関係各所に提出します。
提出先 | 書類 |
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年金事務所(雇用保険関連書類) | 新規適用届出 |
被保険者資格取得届 |
|
被保険者移動届 | |
(法人の場合)履歴事項全部証明書又は登記簿謄本 |
|
(個人の場合)事業主の世帯全員の住民票 |
注意点はこちらです。
- 法人事業所は強制加入。
- 個人事業主の場合、従業員5名以上であれば強制加入、5名未満であれば任意加入。
- 可及的速やかに手続きを行うこと。
提出先 | 書類 |
---|---|
労働基準監督署(労働保険関連書類) | 保険関係成立届 |
提出時は以下の点に気をつけましょう。
- 適用事業所に関する規定は雇用保険に同じ。
- 事業開始から10日以内に届出を行う。
- 従業員を10人以上雇用する場合、就業規則届も提出しなければならない。
保健所関連
一般的には、次のフローを経て申請・許可が完了します。
- 事前相談
- 店舗工事着工前までに行う。計画図面を用意し、保健所へ相談する。
- 開設届等の提出
- オープンの10日~1週間前までに行う。次の書類を保健所に提出する。
- 開設届(用紙は保健所にて入手)
- 施設平面図(施設がビルに入居している場合、その階における配置図)
- スタッフ名簿、免許証
- 医師の診断書(結核、皮膚疾患について記載したもので、発行3カ月以内)
- 開設手数料
- 現在事項全部証明書(登記簿謄本)(届出者が法人の場合)
- 外国人登録証明書(外国人が届出をする場合)
- 開設検査(立入調査)
- あらかじめ定められた開設検査の日時に、保健所の職員による立入検査が行われる。事前に提出した書類をもとに、構造(面積、証明等)、消毒設備等について確認検査を行う。
- 確認書の発行
- 開設検査の翌日~営業開始日までに行われる、開設検査に合格した場合、確認書が発行される。連絡を受け次第、受領印を持って確認書を取りに行く。
消防署関連
消防検査も行います。内装・外装工事を行う際、必要となる防災設備について、基準を満たしているかどうかのチェックがなされます。詳しい条件は工事業者、管轄の消防署に確認、相談しましょう。
美容室開業の専門家選びのポイント
特に、美容師として仕事をしてきて、これから自分のサロンを……という人にとっては、税務、法律関連の手続きはハードルが高いもの。思い切って、税理士などの専門家にお任せしましょう。もちろん、知人、もしくは知人の紹介で思い当たる節があるなら、その人に頼むのが一番いいかもしれません。でも、そんな知り合いはいない!という場合、何に気を付けて専門家を選ぶべきか、ポイントをお伝えします。
美容室の経営をわかっている人を選ぶ
専門家によっても、得意とする分野とそうでない分野があります。例えば税理士。中には、「美容室の経営ならお任せください!」というキャッチコピーでマーケティングを行っている人もいます。税理士には税務周りのことだけではなく、経営に関する様々な事項を相談したいもの。その場合、美容室業界のことをわかっている人なら頼りになるかもしれません。何を基準にして選んだらいいかわからない、という人は、こういったことも一つの基準にしてみてはいかがでしょうか。