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2020年の実施が閣議決定された「発送電分離」とは?

2020年の実施が閣議決定された「発送電分離」とは?

政府はこのほど、大手電力会社が発電部門と送配電部門を切り離す「発送電分離」の時期を2020年とする電気事業法の改正案を閣議決定しました。

政府が進めてきた電力システム改革の総仕上げと位置づけられるものですが、今回はこの意味を考えてみましょう。

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発電と送配電を別々の会社とする、発送電分離とは

以前もエネチェンジで取りあげましたが、「発送電分離」とは、発電と送配電を分離することです。

電気は発電所で作りますが、家庭や工場などの需要家(利用者)に届けるには電気を送るための設備(送配電設備)が必要です。いま大手電力会社はこの両方を所有していますが、発送電分離とは送電のネットワークを発電部門と切り離して独立させ、すべての電力事業者に自由に使わせることです。政府はこの時期を2020年とする方向に決め、関連する法案を国会に提出する方針です。

電力自由化の総仕上げ

発送電分離は電力自由化の「総仕上げ」の意味があります。これまでみてきたように2016年の4月から電力小売りは完全に自由化されます。これにともなって電力事業には既存の大手電力会社に加えて、異業種を含めた多くの企業が新規参入することが見込まれています。

ただ、新たに電気事業に乗り出す会社が自前の電線や電柱をあちこちに張り巡らせたり、新たに送電線を大規模に設置したりすることは物理的に難しいですし、コストの面からも不可能です。このため、新規事業者が、電力大手各社に送電線を借りて電気を仕入れたり、送電したりしなければなりません。その場合、送電線の利用料を不当に高く設定されるなどして新規参入組が不利に扱われると、自由化の意味は失われてしまいます。

このため、送配電部門が既存電力会社の一部になることなく、いかなる新規参入企業にも属さない中立な立場となる必要があります。これが電力会社から送配電部門を経営的に切り離す「発送電分離」の考え方です。
発送電分離で電力会社の形態がどうなるかは、発送電分離と電力自由化の関係とは?で詳しくご説明しています。

焦点だった時期

発送電分離にあたっては、電気の安定供給を確保する仕組みやシステム開発、労使関係の調整や資産の仕分け、税制上の措置などに準備がかかるとして、政府は当初、実施時期については、「2018年から2020年の間を目途」と幅を持たせた考え方をしていました。

それを今回、政府・与党は、準備のために十分な時間をかける必要性を考慮して2020年とすることにしたのです。

2020年は東京オリンピック・パラリンピックが7月に開幕します。安倍首相は昨年、スイスで開かれたダボス会議で「東京でオリンピック選手たちが競い合う頃は、日本の電力市場は発送電を分離し、発電、小売りとも完全に競争的な市場になっている」と宣言しました。この「国際公約」に間に合わせるために、より具体的には2020年の4月に発送電分離を行うとみられています。

電力会社や政府の対応

発送電分離に対する既存の電力会社の反応はどうでしょうか。東京電力とその他の電力との間では温度差もあるようです。

東電の対応

東京電力は発送電分離が実施されることをいち早く想定して、2013年4月からカンパニー制に移行しているほか、電力小売りが完全自由化される2016年4月をめどにホールディング・カンパニー(持ち株会社)制度を導入し、持ち株会社の下に発電事業会社、送配電事業会社、小売り事業会社の3社を置く方針を打ち出しています。

他電力には消極姿勢も

ただ、東電以外の電力会社は発送電分離には消極的です。「原子力発電所の再稼働が進まず、経営が安定していない中で発送電分離を行えば、電力の安定供給に支障が出かねない」というのが理由ですが、経済産業省は電力各社の積極的な取り組みを促しています。

こうした電力会社の慎重姿勢を受けて、電気事業連合会は、

  1. 発送電一貫体制のもとで維持してきた安定供給を損なうことがないよう、分離を補完する仕組みやルール整備を行う
  2. 改革を実効的なものとするには原子力プラントが順次再稼働し、需給状況が安定していることなどが必要
  3. 課題を確認・検証し、問題が生じる場合は実施時期の見直しも含めて柔軟に改革を進める

という3点を求めています。

政府の対応

政府は一定の準備期間が必要であることを考慮して、幅をもたせていた期間のうち、発送電分離の時期をもっとも遅い2020年としたわけですが、電事連が求めている「検証・確認」については行うものの、実施時期の見直しは行わないと見られています。

ガスシステム改革も、上下分離に

電力システム改革と並行して検討されているガスシステム改革について政府・与党は、2017年にガスの小売り自由化を行うとともに、電力の送電線にあたるガス管についても、電力同様に新規参入会社を含めてすべての事業者が公平に使えるように、東京、大阪、東邦の都市ガス大手3社は導管(ガス管)部門を分離して分社化することを義務づける方向です。

まとめ

現在進められている電力とガスの双方のシステム改革は、「電力とガスは将来融合しあって、総合エネルギー企業へと変化してゆく」という政府・与党の考え方に基づいています。このため、双方の改革は同時並行で進められていますが、実施に向けては様々なハードルも予想されます。国民生活に大切な安定供給という部分はしっかりと担保しつつ、中立・公正や効率性を確保するにはどうあるべきか、消費者の視点に立った議論や政策展開が求められています。

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この記事を書いた人

エネチェンジ編集部

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エネチェンジ内のメディア「でんきと暮らしの知恵袋」の記事を執筆しています。電気・ガスに関する記事のほか、節約術など生活に役立つ情報も配信しています。

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