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2016年、日本の電力小売り全面自由化を支える仕組みとは?

2016年、日本の電力小売り全面自由化を支える仕組みとは?

2016年の電力小売りの完全自由化をめぐって予定されている仕組みはどんな内容でしょうか。あらためて細かく見てゆくことにしましょう。

前回、日本の電力自由化のこれまでの経緯と現状について、自由化が段階を追って行われてきたことを確認しました。今回は2016年の電力自由化で予定されている制度改革の詳細について解説します。

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改革が目指す3つの目標

そもそも2016年の電力自由化は、東日本大震災後に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故や、電力の供給不足などをきっかけに、従来の電力を取り巻く仕組みに様々な矛盾や限界が見えてきました。このため電気事業の体制や制度的な枠組みを抜本的に見直すため、2012年2月に政府が「電力システム改革専門委員会」を作り、議論を進めてきたのです。
その議論にもとづいて、2013年4月に「電力システムに関する改革方針」が閣議決定されました。

まずこの改革には3つの目標が設定されています。

安定供給の確保

一つ目は安定供給を確保することです。東日本大震災後に原子力での発電が停止状態となり、日本の発電は火力発電が中心になりました。さらに、風力や太陽光など再生可能エネルギーの重要性も認識されました。しかし、これらは天候や日照時間などに左右される部分も大きく、出力は日々変動します。このため、こうした変動する部分を取り込んでも安定した供給ができる仕組みを実現することや、ある地域でなんらかの理由で供給が不足した時などに、円滑に電力を融通する仕組みも構築することになりました。

電気料金の抑制

二つ目の目標は電気料金の抑制です。火力発電が中心になる中で、燃料費の輸入コストが大きくなり、電気料金は各地で値上げされました。このため発電事業者の競争を促すことや需要の抑制で電気料金を最大限抑制することを目指すことになりました。

自由度の高い電力システム

三つ目の目標は需要側の選択肢や事業者のビジネスチャンスの拡大です。電気を供給する会社や料金メニュー、原子力か、あるいは再生エネルギーか、といった電源の種類について、需要側のニーズにあわせて多くの選択肢で応える制度に変える。同時に、それまで電力事業に取り組んでいなかった企業が新しく参入して、積極的にビジネスを展開できる環境をつくる。こうしたことを実現できる電力システムを作ろうという目標です。

目標達成のための具体的な改革の3本柱

これらの目標を達成するために、政府は具体的な改革の柱を3本建てました。

広域系統運営機関の設立で、全国規模の需給調整を

①一つ目は、広域系統運用の拡大です。電力需要の窮迫や再生可能エネルギーの出力変動に備えるために、「広域的運用推進機関」(広域機関)が設立されることになりました。平常時、緊急時を問わず、これまでの電力会社の供給エリアの概念を超えて、全国規模で電気の需給調整機能を強化し、必要に応じて融通などもできるような仕組みを構築する役割を担います。

電力小売りの全面的な自由化

②家庭部門も含めて、すべての需要家が電力を供給する会社を自由に選ぶことができる小売りの全面自由化を実施します。これが一般に言われている「電力自由化」の部分です。

送配電部門の別会社化

③発電事業者や小売り電力事業者の誰もが公平に送電線網を利用できるよう、電力会社の送配電部門を別会社化します(発送電分離)。

送配電部門の別会社化は、以下のようなイメージで行われます

ただ送配電事業については、公平性の維持のため、引き続き地域独占とし、総括原価方式などの料金規制は残ることになります。

こうした改革が順次、進められる予定になっています。

広域的運用推進機関(広域機関)の業務内容

  1. 供給計画や系統計画をまとめ、周波数変換設備、地域間連携線などのインフラ整備や全国規模での運用
  2. 平常時、各地域の送配電事業者による需給バランスや周波数調整に広域調整を行う
  3. 災害時の需給逼迫時に、追加の発電や電力融通の指示を行う

などの役割を担うことが予定されている。

改革の流れと具体的な時期

具体的な時期としては、まず2015年に①の広域機関を作ります。すでに資源エネルギー庁が2014年8月に設立を認可しており、15年4月に業務開始の予定です。

そして2016年4月から、一般の家庭やコンビニエンスストアなど中小規模の電力の利用者向けに電力以外の会社が電気を自由に売れるようにする②の「小売りの全面自由化」が予定されています。

さらに③の発電と送配電の分離は2018年から2020年にかけて行われる予定になっています。これを見越して東京電力は、他の電力会社に先駆けて2016年4月をメドに、発電、送配電、小売りの各事業会社を先行して別カンパニー化する方針を表明しています。

発送電分離後に送配電事業者が果たす役割

発送電分離後の安定供給のために送配電事業者には以下のような義務づけが検討されている。

  1. 周波数維持(需給バランス維持)
  2. 送配電網の建設保守
  3. 最終保障サービス(需要家がどこからも電力供給を受けられない事態を避けるため、最終的な電力の供給を保障する)
  4. 離島・へき地のユニバーサルサービス(離島などの需要家にも他の地域と同様の料金水準で供給)

まとめ

このように2016年の電力の小売り全面自由化をめぐっては、それが単独で実施されるのではなく、その前後に、様々な制度の変更や環境整備が行われることになっています。こうした一連の流れを組み合わせることで、電力の安定供給を図りつつ、自由化の効果を最大限に高めるよう工夫がされているのです。

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この記事を書いた人

エネチェンジ編集部

エネチェンジ編集部

エネチェンジ内のメディア「でんきと暮らしの知恵袋」の記事を執筆しています。電気・ガスに関する記事のほか、節約術など生活に役立つ情報も配信しています。

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