電力とガスの2つの自由化に直面する東京ガスの戦略

電力自由化

2016年の電力自由化に参入する予定の東京ガス。その動きは、2017年の都市ガス自由化を視野に入れたものなんです。電力だけでなく、ガスの契約も選択肢が広がる時代。東京ガスがどのように競争力を確保しようとしているのか、ご説明します。

2016年春からの電力自由化で、首都圏での電力ビジネスで東京電力に対抗する主役の一つが都市ガス最大手の東京ガスと見られています。
都市ガスも2016年の電力小売りの全面自由化に一年遅れて、2017年をめどに小売りが自由化される方向です。電力、ガス市場の両方が自由化される時代の到来に向けて東京ガスはどんな戦略を立てているのか見てゆきましょう。

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2017年、電力に続き都市ガスの販売も自由化される

都市ガス市場の自由化はこれまで経済産業省のガスシステム改革小委員会が議論してきましたが、1月中旬、家庭向けのガス販売(小売り)を2017年をめどに自由化することなどを盛り込んだ報告書をまとめました。事業者が地域ごとに販売独占している現在の状態を見直し、競争を促すことで、料金上昇の抑制などを含めたサービス向上を図るのが狙いです。

一般家庭でもガスの供給先を自由に選べる時代に

都市ガスの販売も電力と同様に、段階的に自由化が進んできました。電力の小売り自由化と同様に、全面自由化となれば、一般の家庭でも自由に供給先を選べるようになり、例えば東京都内に住んでいる人は、東京ガス以外の会社からガスを購入することができるようになります。

日本全体では自由化の対象となるのは一般家庭と小売り商店などをあわせて約2400万件とされ、市場規模は2.4兆円に上るとみられています。電力自由化の市場規模が7.5兆円ですから、あわせて約10兆円規模の市場です。こうした中、東京電力などの電力会社もガス併売でガス市場へ逆参入を図ろうとしており、電力会社、ガス会社入り乱れた競争が起ころうとしています。

東京ガスの電力・ガス自由化に向けた戦略

東京ガスはいわずとしれた都市ガス業界の雄として、東京や神奈川を中心に都市ガス網を張り巡らせており、供給件数は約1100万件。この顧客基盤をいかしてガス市場を守りつつ、積極的に電力を販売しようとしています。

電力販売に積極的取り組み

東京ガスの戦略は2014年10月に発表した「2015年~2017年の主要施策」に具体的に書かれています。その柱の一つが電力販売の拡大です。
東京ガスはすでに、工場や大規模施設などの大口需要家に向けて、年間約100億kWhの電力供給事業を展開しています。2016年の電力小売り自由化時には、これに加えて家庭用や業務用にも電力を売ることで、2020年には2013年実績の3倍にあたる約300億kWhに拡大することを目指しています。これは首都圏の需要の約1割にあたります。

着実に進める電源の増強

さらに現在、東京ガスが安定的に調達できる電源の規模を、現在の130万kWから2020年に約300万kWへ増やすことも計画しています。
実際に自社運営の発電所として神奈川県内にある扇町パワーステーションの3号機が2015年度中に稼働を開始する予定であるほか、神戸製鋼所が栃木県真岡市に建設中の天然ガス発電所で発電する電力を買い取る契約を2014年9月に締結するなど着実に準備をすすめています。

東京ガスの広瀬道明社長は、年明けの挨拶で、2016年の電力小売り自由化に向けて2015年の下期から具体的な営業を開始することも明らかにしています。

ガスと電気のベストミックスを追求

このように東京ガスは、自社にとって電力事業は今後の収益の大きな柱であると位置づけています。これに関連して東京ガスは、ガスと電気のベストミックスを行ってゆくことを検討しており、住宅関連や建設設備、通信情報などの各業界との連携をはかる方針を打ち出しています。
さらに、住宅向けのエネルギー管理システム(HEMS=ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の提案なども積極的に進め、家のさまざまな家電製品をネットワークでつなぎ、エネルギーの「見える化」を実現したり、省エネを実現したりするシステム構築にも乗り出そうとしています。

電力小売りの自由化ならびに都市ガス小売りの自由化が達成されると、電力会社と都市ガス会社との垣根はもはやなくなり、「エネルギー企業」としての競争が激化することが予想されています。こうした動きに対しては、東京電力がガス併売で対抗しようとしているのは、これまでみてきたとおりです。

まとめ

日本では19世紀後半のガス灯と白熱灯の時代から、電力とガスというのは歴史的に見てもライバル関係がずっと続いてきました。それから約140年の時を経て、電力とガスの自由化という過程を踏むことで、総合エネルギーサービスどうしの競争という新たな時代を迎えています。従来の電気事業とガス事業の枠を超えた大競争時代を前に、2015年は助走のための重要な時期にあたり、様々な動きが産業界全体から出てくると思われます。

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