原発の再稼働で電気代は安くなるか

原発の再稼働で電気代は安くなるか
電力自由化

鹿児島県の川内原発1号機が8月に再稼働され、9月に入り営業運転を始めています。また10月中にも2号機の再稼働が見込まれています。原発の再稼働で電気代は安くなるのでしょうか?また、2016年4月からの電力小売り自由化と原発の関係を考えてみましょう。

鹿児島県の川内原発1号機が8月に再稼働され、9月に入り営業運転を始めています。また10月中にも2号機の再稼働が見込まれています。原発の再稼働で電気代は安くなるのでしょうか?また、2016年4月からの電力小売り自由化と原発の関係を考えてみましょう。

コスト面では有利な原発の電気

川内原発の1号機を再稼働させた九州電力は、9月4日、2015年9月中間連結決算で経常損益が550億円、純損益が450億円の黒字になる見通しを発表しました。中間期の経常利益および純損益の黒字化は10年9月期以来5年ぶりです。火力発電向けの原油価格が下落したことや、川内原発1号機が8月に再稼働したことで、損益が大幅に改善することになりました。それでは、原発の再稼働によって電気代は下がるのでしょうか?

現在の電気料金は、すでに原発再稼働を織り込んでいる

じつは、この再稼働ですぐに電気料金が下がることはありません。
大手電力会社の電気料金は、福島第一原子力発電所事故を起こした東京電力以外は、ある程度の原発稼働を前提にして算出されています。たとえば発電に占める原発比率の高い関西電力は、高浜発電所3、4号機を2015年11月に再稼働することを目標にしています。関西電力は原子力プラントが稼働しないことによるコスト増が14年度は4000億円にのぼったと説明しています。
 同じく発電に占める原発比率の高い九州電力は、15年7月以降、川内・玄海原子力発電所が順次再稼働するものとして料金を設定しています。

原発再稼働を前提とした電気料金を設定している電力会社一覧

電力会社前提としている再稼働の時期参照
北海道電力平成27年11月泊原子力発電所3号機
平成28年1月泊原子力発電所1号機
平成28年3月泊発電所2号機
電気料金の値上げについて|北海道電力(株)
東北電力平成27年7月東通原子力発電所1号機よくあるご質問 - 電気料金の値上げについて(共通) |東北電力
東京電力平成25年度柏崎刈羽原子力発電所1・5・6・7号機
平成26年度柏崎刈羽原子力発電所3・4号機
平成24年の電気料金の値上げ申請における3年間の原価算定期間において
認可料金の概要について|東京電力(株)
中部電力平成28年1月浜岡原子力発電所4号機
平成29年1月浜岡原子力発電所3号機
料金算定の前提となる需給関係資料|中部電力(株)
関西電力平成27年11月高浜発電所3・4号機料金算定の前提となる原子力発電所の再稼働時期について|関西電力(株)
四国電力平成25年7月伊方原子力発電所3号機電気料金値上げ認可の概要について|四国電力(株)
平成25年2月 社長定例記者会見の概要|四国電力(株)
九州電力平成25年7月川内原子力発電所1・2号機
平成25年12月玄海原子力発電所4号機
平成26年1月玄海原子力発電所3号機
原価算定の前提諸元|九州電力(株)

原発は発電コストが安いのは確かです。電力関係者によりますと、1キロワットを発発電するのに、原子力は1円の燃料費コストがかかるのに対して、石油火力が10円程度かかるとされ、電力会社は早期に再稼働したいと希望していますが、原子力規制委員会による審査がなかなか進まないのが実情です。

電力自由化と原発のコストをどう考える

このように原発はコストが安い点に有利さがありますが、2016年4月以降の電力自由化の中で原発の発電コストはどう考えればよいのでしょうか。
大手電力会社の原発再稼働が進み、原発で発電したコストの安い電気が原価を反映した料金で販売されると、原発を持たない新規参入企業(新電力)は料金面で不利になります。原発以外の方式で、比較的コストの高い電気を生産したり、調達したりしないといけないからです。

ここで、仮に原発で発電した電力の卸市場への放出があれば、市場の活性化につながります。
経済産業省は電力自由化の制度設計にあわせて、原発で作った電気の位置づけをどうするかを検討していましたが、2011年の東日本大震災で議論は一時、停滞していました。その後、原発の再稼働にあわせて、原発でつくった電気を電力小売りに新規参入企業も調達できるようにする仕組みが検討されており、大手の電力会社に原発の電気を卸電力取引所に供給するよう義務づけることなどが議論されている模様です。

消費者の嗜好は多種多様

一方、原発で生み出された電力でない電力を求める消費者が、原発と無縁であることをアピールする新規参入企業を支持することも予想され、そうした事業者が一定の層の需要家をつかむ可能性はあります。
ドイツには、原発を使わない電力供給を求める「シェーナウ電力」という市民の手で運営されている電力会社があり、消費者に一定の支持を得ています。一方、同じドイツには「マックスエナジー」という小売り事業者が100%原発で作った電気をフランスから購入し、CO2排出量の少ない電力として販売している例もあるのです。、消費者の関心も幅広くなっています。

この例のように、多様な消費者ニーズを満たす事業者が出てくることも電力自由化の特徴といえ、価格だけが事業者を選ぶ要因でないこともわかります。
日本の電力自由化においても、原発の電気を使いたい、コストを負担しても使いたくない、どちらの考え方にも対応できる多様性の提供が期待されていると考えるべきでしょう。

まとめ

原発再稼働がこれから進んでゆく中で、原発で生み出された電気を自由化の中でどう扱って、位置づけてゆくかが、2016年4月の小売り全面自由化解禁に向けた残された課題の一つといえます。消費者の側も行政や原発を持つ既存の大手電力会社の対応がどうなってゆくのか、注目する必要がありそうです。

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